「アクティブラーニング」とは?
「アクティブラーニング」とは、受講者自らが能動的に取り組む学習方法を指す。従来の教育や研修では、壇上にいる講師がテキストを片手に、板書をしながらテキストの内容を受講者に解説するという形式がほとんど。受講者は講師の発言を聞きながら、重要だと思ったところをノートに書き留めるという形だ。分からないところを講義終了後に講師に聞きに行くということはあるが、講義中の情報は講師から受講者の1方向に流れる。そして、講師が教える内容は事前に決まっている。中学校や高校、大学の講義を思い出す人もいるだろう。教室で全員が同じ、決まり切ったことを教わり、自宅で復習して、中間テストや期末テストで良い点を取る。このような学生が典型的な「良い子」であり、学校教育は同じような良い子を大量に育成する場であった。
企業も、上司の言うことをよく聞き、逆らわない「良い子」を喜んで採用した。その結果、企業には同じような「良い子」ばかりが集まり、何かの間違いで入ってきた「変わっているけど、飛び抜けた才能を持つ子」は孤立してしまう。
企業も、そのような「変わった子」をどう扱ったらよいか分からず、才能を発揮できる場を与えることもできない。結局その「変わっているけど、飛び抜けた才能を持つ子」は企業に居場所を見付けられず、退職してしまう。日本の高度成長期は、上司の命令に忠実で、均質な人材を揃え、みんなで同じようなことを一生懸命やることで日本の各企業は大きく成長していった。
「アクティブラーニング」が注目されるようになった背景とは?
日本におけるアクティブラーニングは、大学教育改革に向けて、文部科学省が打ち出したものだ。文部科学省が2012年8月に開催した中央教育審議会第82回総会では、大学の学士課程の教育を「教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブラーニング)への転換が要」としている。具体的には、「個々の学生の認知的、倫理的、社会的能力を引き出し、それを鍛えるディスカッションやディベートといった双方向の講義、演習、実験、実習や実技等を中心とした授業への転換」に取り組む必要があると訴えている。簡単に言うと、講義だけでなく、少人数でのディスカッションやディベート、グループで課題に取り組むグループワークなどを取り入れて、学生がほかの学生と、ときには意見を戦わせながら、ときには協力して作業することが必要だということだ。とはいえ、ただ共同作業をすれば良いというものでもない。共同作業で、「何が問題か」を発見し、「どうすれば解決できるか」を探求し、答えを見つけ出すことが大切なのだ。従来の学校教育では、問題は講師が出してくれるものだったが、アクティブラーニングでは「何が問題か」を発見する過程も重要だということだ。
そして、グループで取り組むことによって、自分の言いたいことを適切な形で伝えるコミュニケーション能力や、論理的に考えて相手の意見に反論するディベート能力が身に付くことも期待できる。
「アクティブラーニング」のメリットとは?
企業は教育や研修に「アクティブラーニング」を導入することで、どのようなメリットが得られるのだろうか。大きく分けて7つ紹介したい。【1】問題解決力が向上する
課題の答えを自分たちで考え、自分たちだけで導き出さなければならない。その過程で経験する、「論理的な仮説立て」、「検証」によって問題解決力を磨くことができる。
【2】主体性が向上する
講師はあくまで黒子のため、受講者は主体性を持って研修に取り組む必要がある。受講者同士で協力しながら課題の答え出す状況下は、主体性を向上させる訓練になる。
【3】発想力や創造力が向上する
正解のない課題が多いアクティブラーニング。受講者同士で議論する際に、自分が持っていない価値観や考え方に触れることができる。発想力や創造力を磨けるインプットになるだろう。
【4】コミュニケーション能力が向上する
例えば、グループワークの際、相手の話をよく聞き、意見を明確に伝え、意見をまとめるなど、受講者は様々なコミュニケーションを取らなければならない。また、正解のない答えを導き出すうえでは、受講者同士の意思疎通が重要となるため、その過程でコミュニケーション能力を鍛えられる。
【5】人材の早期戦力化につながる
例えば新卒・中途問わず新入社員向けにアクティブラーニングを導入することにより、一般的な座学の研修を導入するよりも学習の効果を高めることができる。業務を早く覚えることにつながり、人材の早期戦力化を実現できる。
【6】知識の定着率が向上する
他の受講者と議論したり、自分の考えを述べたりなど、能動的なアクションは理解が深まりやすいとされる。アクティブラーニングはエピソードとして記憶に残りやすく、座学よりも知識の定着を実現できる。
【7】リーダーシップの養成につながる
講師はあくまでサポート役のため、受講者が主体となって研修を進めていく。各自はグループワークの課題解決に向けて、「自分は何をするべきか」、「どのような責任を果たすべきか」などを考え、行動に移さなければなりません。研修を成功させるには、周囲を巻き込むことが前提となるため、自ずと一人ひとりがリーダーシップを発揮する。
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