株式会社学研ホールディングス内のスキルアップ研究所は2025年2月12日、「年代別のキャリアアップにおけるリスキリングの実態とその課題に関する調査」の結果を発表した。この調査は同年1月10日~17日に、20~59歳(20代:21%、30代:37%、40代:26.3%、50代:15.7%)のビジネスパーソンを対象に行われたもので、計300名から回答を集めている。調査結果から、年代ごとのリスキリングへの意識の違いや課題が浮き彫りとなり、企業が取るべき施策への示唆が得られた。

【リスキリング】「学ぶ」を行動に移せているビジネスパーソンは“4割弱”。年代別の意識差でみる学ぶ目的・課題とは

リスキリングの必要性と実態、「学ぶ行動に移せている」のは4割程度

現代は急速な技術革新やグローバル化により、ビジネス環境が激変している。従来のスキルや知識だけでは通用しなくなるなか、ビジネスパーソンには継続的な学習と適応が求められる。そうした状況下で、企業だけでなく働き手個人においても、変化に対応していくためのリスキリングやキャリアアップへの注目度は高まっているだろう。

今回の調査において、まず同研究所は「現在のキャリアに対する意識」について尋ねた。すると、20代では「キャリアアップを目指して積極的に行動している」が36.6%と最多で、2位が「スキル不足を感じており、改善が必要だと考えている」(31.7%)となった。取り組み状況は異なるものの、合計して約7割がリスキリング・キャリアアップの必要性を理解していた。

他方、30代ではトップが「スキル不足を感じており、改善が必要だと考えている」(41.5%)、次いで「キャリアを意識しているが行動には移せていない」(20.7%)となった。40代も30代と同じく上位2項目は「スキル不足を感じており、改善が必要だと考えている」(45.5%)、「キャリアを意識しているが行動には移せていない」(20.2%)となったものの、「キャリアアップを目指して積極的に行動している」は8.9%と1割を下回り、30代よりも低くなっている。

また、50代では「スキル不足を感じており、改善が必要だと考えている」が42.6%と最多で、次いで「特にキャリアを意識していない」が19.1%と、他の年代と比べるとキャリア観が異なることが見て取れた。

同社のまとめによると、全回答者のうち“実際に行動に移せている人”は約4割にとどまったという。また、“リスキリングの必要性を感じている”と答えた人は、程度の差があるにせよ全体の91%だったとのことだ。
キャリア意識(年代別)

「新しい学び」に最も積極的な年代は?

次に同研究所は、「現在、新しいスキルを学んでいるか」と尋ね、年代別に比較している。すると、全年代で最多だったのは「学びたいと思っているが、まだ行動に移していない」で、20代:47.7%、30代:57.7%、40代:65.9%、50代:66%という割合だった。30代以降のすべての年代で6割前後となり、年代を追うごとに高くなっている。

他方、20代は「学んでいる」とした人の割合が他の年代よりも高く、行動に移す意識が顕著であった。先述の結果と併せて考えると、年齢が上がるにつれて“学びへの意欲”が“実際の行動”に結びつきにくくなる傾向があると言える。
新しいスキルの学び状況(年代別)

学ぶ目的は「副業などの収入増加」と「自己成長のため」が拮抗

次に、「新しいスキルを学ぶ目的」について尋ねた全体結果を確認すると、1位は「副業やフリーランスとしての収入増加」(135人)、2位が「自己成長のため」(130人)で、2回答が僅差でならんだ。また、3位には「転職・キャリアチェンジ」(97人)が続いたほか、4位は「現職での昇進・昇給」(81人)となり、現在の組織で実力発揮するために新しいスキルを学んでいるという人は、全回答者(300人)のうち27%にとどまっていた。
新しいスキルを学ぶ目的

20代は半分以上が「昇進・昇給」を視野に入れて学んでいる

続いて、前質問で「新しいスキルを学ぶ目的」について「現職での昇進・昇給」と回答した人について、年代別に比較した。すると、20代の回答が最多の54%で、次いで30代が31%となった。40代の14%、50代の4%を見ても、年齢が高くなるほど顕著に回答割合が低くなっている。
現職での昇進・昇給の回答者(年代別)

40・50代では「自己成長」に目を向けている人が半分以上

また、同質問に対し「自己成長のため」と回答した人に注目すると、40代は50%、50代は51%といずれも過半数に達し、20代・30代とは回答傾向に違いがあることがうかがえた。この結果に対して同研究所は、「40代以降にとって、学ぶことはキャリア形成だけでなく、自身の精神的な満足感にもつながっているのではないか」との見解を示している。
自己成長のための回答者(年代別)

学びのハードルになっているのは「時間」と「お金」

さらに、同研究所が「新しいスキルを学ぶ際の主な障壁」を尋ねたところ、全体結果では「時間の確保が難しい」(191人)が最も多く、300人中の回答割合は63.6%となった。なお、以下は「費用が高い」(133人)、「学ぶモチベーションを保つのが難しい」(111人)と続いた。
新しいスキルを学ぶ際の障壁
前質問で回答数が最多であった「時間の確保が難しい」との項目について、年代別に回答割合を見て行くと、全ての年代で半数以上が回答していた。中でも、30代では72%と最も高くなった。

また、「費用が高い」を選んだ人の割合を年代別に見ると、こちらも30代が51%と最多で、40代が49%で続いた。これらの結果から、特に30代では「費用」と「時間」の両方が大きな障壁となっており、仕事や家庭との両立に苦慮している様子がうかがえる。
「時間の確保が難しい」と回答した人(年代別)
「費用が高い」と回答した人(年代別)
今回の調査結果からは、企業が従業員のリスキリングを支援する上で、年代ごとの特性や課題を考慮することの重要性が垣間見えた。例えば、キャリアアップの優先ポイントについても年代によって異なる傾向が見られ、20代では「昇進・昇給のチャンス」を重視する一方、40代~50代では「ワークライフバランス」を重視する傾向が強い。また30代では「スキルアップや新しい挑戦」を重視する割合が他の年代と比べて高くなっている点も特徴的だった。若年層・中堅層の“新しいスキル獲得”に対する積極性を活かしつつ、中高年層の経験・スキルを組み合わせることで、組織全体の競争力を高められる可能性も見出せそうだ。
この調査結果を参考に、企業の人事部門においては、年代別のニーズに応じた柔軟なリスキリング支援策を検討し、従業員のキャリア発達と組織の成長を同時に実現する施策を展開することが、組織力向上に向けた有効策となるかもしれない。また経営層は、リスキリングを単なる“スキル向上の機会”としてではなく、組織の持続的成長と従業員の自己実現を両立させる戦略的な投資として捉え、積極的に支援できる環境作りに努めたい。

出典:https://reskill.gakken.jp/4700

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