「eラーニング」とは
「eラーニング」とは、パソコンやタブレット、スマートフォンなどのデバイスを用いて、インターネットを通じて学ぶ双方向的なオンライン学習を言う。オンラインで講義を受けられるため、一度に多くの社員が参加できる。また、いつでもどこでも学べるので、社員への教育の効率を高められる。●「eラーニングシステム」とは
「eラーニングシステム」とは、インターネット上で「eラーニング」教材を配信するシステムだ。受講者を登録・管理できるだけでなく、それぞれの受講者の学習進捗を把握することが可能なので、学習管理者にとっては有難い仕組みだ。「eラーニング」の歴史
「eラーニング」の歴史は、1950年代にまで遡る。その頃登場した「CAI(Computer Aided Instruction、または、Computer Assisted Instruction)」がルーツとなっている。これは、簡単に言えばコンピュータを利用した学習支援だ。その後、1990年代にパソコンの急激な普及に伴い、CAIは「CBT(Computer Based Training)」、「WBT(Web Based Training)」へと発展する。そして、2000年代を迎え、CBT、WBTからスケールアップした「eラーニング」という言葉が誕生することとなった。「eラーニング」のメリット
ここからは、「eラーニング」のメリットを、学習者(従業員)側と管理者(企業)側の両視点で解説していく。学習者(従業員)側のメリット
まずは、学習者(従業員)側のメリットだ。●自分のペースで学習できる
時間や場所を問わず、自分の都合やペース、達成度合いに応じて、自由に学習を進められるのは大きなメリットだ。中でも最近注目されている、5分から15分といったスキマ時間を有効に活用した「マイクロラーニング」にも活用できる。なので、忙しい人でも学習しやすいと言える。●質のブレがない
集合研修の場合には講師の教え方にばらつきがあったりする。しかし、「eラーニング」による研修であれば、学習者は全員が同じ講師の研修を受講するので、教育の質の違いがない。また、教材などのアップデートも容易なので、常に最新の学習教材を学べる。●復習がしやすい
集合研修は受講し放しになりがちだ。数週間後には、何を学んだのかを忘れてしまう人も珍しくない。その点、「eラーニング」で提供されている講義動画は繰り返して視聴できる。一度復習しただけでは内容を理解できなかったとしても安心だ。知識・スキルをしっかりと定着させていける。●学習時間が把握しやすい
一般的に、「eラーニング」には、学習管理機能が備わっている。なので、学習者自身がどのくらい学習したのかを把握しやすい。本人からすると、「今月は思ったよりも学習していないな」とわかれば、気持ちを入れ直すこともできるはずである。管理者(企業)側のメリット
続いて、管理者(企業)側のメリットを解説する。●集合研修よりも安価
通常の集合研修では、集客力や受講満足度を上げたいと考え、設備が整った会場を借りたり、有名な講師を招待したりすると、それぞれで何十万円と掛かってしまう。一方、「eラーニング」であれば、教材印刷費や会場レンタル料、交通費などのコストが掛からないので格安で実施できる。●スケジュール調整が不要
集合研修を実施するとなると、主催者側は参加者の業務に支障がないかどうかを気遣いながらスケジュールを組まなければいけない。それに対して、「eラーニング」であれば、場所と時間を選ばず学習ができるため、学習者のスケジュール調整をする必要がなくなる。●学習状況が把握しやすい
「eラーニング」サービスは、学習者はもちろん、管理者も学習進捗を管理できる。そのため、学習があまり進んでいない受講生には学習を促すことができる。また、学習者一人ひとりの成績情報や学習履歴を簡単に把握できるので、成績が伸び悩んでいる学習者に手を差し伸べやすい。●学習データを蓄積・分析できる
人的資本開示が求められる時代を迎え、従業員や組織のデータがより重視されてきている。学習データも従業員エンゲージメントや離職率などのデータを掛け合わせられ、社員の成長に向けた新しい知見を得られる可能性もあるかもしれない。「eラーニング」ならば、学習データを手軽に蓄積・分析できる。タレントマネジメントと連携した戦略も策定しやくなるはずだ。「eラーニング」のデメリット
続いて、デメリットも学習者(従業員)側と管理者(企業)側の両視点で解説しておこう。学習者(従業員)側のデメリット
まずは学習者(従業員)側のデメリットからだ。●実践型のスキルには不向き
「eラーニング」は対面での講義ではないだけに、ロールプレイングなどの実践を伴うような内容には不向きであると言える。おそらく、VR以外は実践的なスキルを学ぶことはできないだろう。それだけに少しでも実践的な要素を取り入れたいのであれば、アウトプットの仕方を工夫する必要がある。●直接質問ができない
「eラーニング」の講義は、ライブ配信での講義と収録された動画講義の2パターンに分かれる。前者であれば講義中に疑問点が生じたら、チャットを使って講師に直接質問を投げかけることができる。ただ、実際にはそれほど多くは提供されていない。より主流なのは、後者だが、こちらは講師と直接コミュニケーションを取るのは難しくなってくる。●横のつながりが作りにくい
「eラーニング」は個人で受講・学習することを基本としている。なので、学習者同士の横の繋がりを作るには向いていない。その点を考慮して、研修内容を組み立てる必要がある。例えば、内定者研修や新入社員研修などは関係性づくりも目的の1つに挙げられる。そうした研修の全てを「eラーニング」にしてしまうのではなく、別途懇親会やグループワークなどを取り入れていくようにしたい。管理者(企業)側のデメリット
続いて、管理者(企業)側のデメリットを解説していく。●モチベーション維持が難しい
「eラーニング」は学習者が自分のペースで学習を進めていくのが基本だ。ただ、全員が学習意欲が高いわけでもないだろうし、業務に追われていてスキマ時間を確保するのも難しいなど言う人もいるかもしれない。それだけに、企業側としては学習者がモチベーションを維持できるような工夫を施す必要がある。●教材の作成に手間がかかるケースがある
「eラーニング」は、自社で作成した教材を利用する場合とコンテンツ込みを利用する場合の2パターンがある。前者であれば、自社の現状や課題にフィットした研修内容にすることができる一方で、教材の作成に手間やコストが掛かってしまう。しかも、すべてのコンテンツが一旦作成したら長年使い回せるというわけにはいかない。コンプライアンスやハラスメントなどをテーマとする際には、法改正などを踏まえてアップデートしていく必要がある。●ITリテラシーが求められる
「eラーニング」を受講する際には、パソコンやスマートフォンを活用することになる。今時のZ世代であれば、ITリテラシーが高いので問題なく対応できるかもしれないが、ミドルからシニア世代の中には慣れていないという人もいることだろう。なので、受講してもらうに当たっては、事前にどの程度のITリテラシーが求められるのかを通達し、もし不安を覚える人がいたら、主催者側としてリテラシーを高める取り組みを施すことも重要となる。「eラーニング」導入に必要なもの
「eラーニング」をスタートするにあたっては、事前に用意しなくてはいけないものがある。それらを押さえておこう。●学習管理システム(LMS)
学習管理システムとは、インターネット上で「eラーニング」を配信するためのプラットフォームだ。学習環境を提供すると共に、学習者と教材の登録・管理、受講管理(学習進捗や学習結果)、受講リマインドなどの機能が搭載されている。eラーニングの目的や使い方、対象者は導入先企業や教育機関によって異なっている。そのため、既存のLMSをそのまま使用するのではなく、自社の目的・活用法に合わせてカスタマイズやチューニングを行うと効果を一段と高めることができる。●学習教材
最近は学習教材がかなり多様化している。ドリル型教材やPowerPoint教材、動画教材、演習型教材、LIVE授業などバリエーションはかなり広い。このうち、最もスタンダードなのが動画教材だ。もともとわかり易さや表現力という点で学習効果が高いと言われていたが、近年ブロードバンド化が進み、大容量のコンテンツ配信が可能となったことも大きな要因となっている。●学習支援者(メンター)
「eラーニング」は、学習者の意欲にかなり左右されてしまう。強制力が弱いからだ。そのマイナスを少しでも補おうということで、ニーズが高まっているのが学習支援者だ。支援者の役割は学習者の質問に答えたり、学習全般の悩みを聞きアドバイスを行ったりすること。ともすると孤独感を感じがちな学習者のモチベーションを高く保てるよう支援している。●受講者用端末
受講者用の端末を用意する必要もある。具体的には、パソコン、スマートフォン、タブレットなどだ。学習者が個人の端末を利用するケースもあれば、企業から端末を貸し出しているケースもある。可能であれば、後者を推奨したい。全受講者が同一の手順で操作しながら「eラーニング」が利用できるので、学習の進捗や普及率が高まるからだ。「eラーニング」とその他の教育方法の費用比較
最後に、「eラーニング」とその他の教育方法に関して、費用がどう違うかを比較してみたい。●通信教育、通学型教育との費用比較
「eラーニング」では、通信教育や通学型教育で掛かる入学金・交通費・講師費用・教材費(内容による)などの費用項目が発生しないケースがある。その分、1人あたりのコストが安くなってくる。また、一度に何百人が受講できる契約をすることも可能だ。社員数の多い企業であればあるほど、コストを抑えられる。●集合研修との費用比較
「eラーニング」は、集合研修で掛かる費用項目がないものがある。具体的には、宿泊費・食事費・交通費・研修会場費用・講師謝礼・教材費などだ。その分、自ずとコストが安くなってくる。システム利用料が加算されても、集合研修よりも相当安いのは間違いない。まとめ
学習者にとって、「eラーニング」のデメリットとして実践的なスキル習得には不向きだと書いたが、サービスを提供している各社はその課題解決に向けて積極的に取り組んでいることも添えておきたい。おかげで、以前と比べると実践型の「eラーニング」へと進歩してきている。例えば、宿泊産業やサービス業ならば、現場でスタッフがどんな動き方をしているかを動画で教育していけるようなコンテンツもある。最初から実践型の「eラーニング」は無理、困難と決めつけるのではなく、最新トレンドを十分に収集しながら今はどこまでできるのかを把握する姿勢が必要となる。よくある質問
●Eラーニングと研修の違いは?
eラーニングは受講者が好きな時間に自分のペースで学習できる一方向の学習形式であり、知識のインプットや情報共有に適している。一方でオンライン研修は講師と受講者がミーティングツールを使ってリアルタイムに双方向型での講義やワークショップを行い、コミュニケーションやディスカッションが重要な場面に適している。- 1