減少の一途、理系の推薦応募

伝統的な理系学生の応募形態として「学校推薦応募」があります。企業が大学ごとに割り当てた推薦枠を上限として、事前に学内で応募学生を調整の上、教授の推薦書とともに応募する形態です。この形態は、企業と大学、または教授との確固たる信頼関係の上に成り立っており、企業は推薦書を重んじ、かつては通常1回の選考会(技術面接)で合否が決定していました。しかも、よほどのことがない限り、推薦応募の段階で合格が約束されていたものです。

ただし、推薦応募で内定を得た学生はその企業への就職が確定したものとして、他の企業への応募は許されないという制約がありました。こうした制約にもかかわらず、理系学生にとっては、文系学生のように就職活動に膨大な時間を費やす必要がなく、学内で推薦さえ得ることができれば実質的な就職活動はほぼ完了し、卒業研究や実験に残りの時間を充てることができたため、実際に学校推薦応募を通じて多くの学生が企業の内定を得ていたわけです。

しかし、この学校推薦制度にも限界が来ているようです。学校推薦で応募した学生が不合格となるケースが増え、逆に推薦応募で内定を取得した学生が内定を辞退する事例も現れています。こうした状況をみると、「推薦」の重みが随分と変わってきているようです。かつてのように、教授と学生が文字通りの“師弟関係”のようになり、“師匠”である教授が紹介してくれる企業にただ従順に応募する――という時代はとうに終わっています。いまの学生はインターネットを通じて自由に企業を調べられるようになり、インターンシップやセミナー、OB/OG懇談会等を通じて企業に触れる機会があります。そのため、多くの企業を比較し、自分の意志で企業を選択することができるようになってきています。同様に企業側も、2022年卒採用から学校推薦制度を廃止したトヨタ自動車をはじめ、学校推薦枠を縮小し、自由応募枠の拡大に舵(かじ)を切る動きが増えています。

それでは、学生たちは「学校推薦応募」をどのように利用しているのでしょうか。理系学生の応募経路を尋ねてみた結果、「推薦応募のみ」はわずか2%であり、「推薦応募と自由応募を併用」が21%となっています[図表12]。いずれの割合も2023年卒よりも2ポイント減少しています。以前は理系学生の特権的応募方法とまでいわれた学校推薦ですが、現在ではこの方法を利用する学生は2割程度にとどまり、最終的に推薦応募で内定した企業に就職する学生は2割をも下回る見込みです。

一方で、「自由応募のみ」とする学生が7割を超え、さらに「推薦応募と自由応募を併用」を含めると9割を超えます。「理系の場合、学生の多くが推薦で就職するため、自由応募で採用市場に参加する学生の割合は少ない」と考えられている採用担当者の方々には、ぜひその認識を見直していただくことが望ましいと思われます。いまや、ほとんどの理系学生が自由応募による就職活動を行い、採用市場に積極的に参加してきています。
図表12 理系の応募経路の2年比較

ChatGPTの利用は、校正・添削が主流

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