「福利厚生」「初任給」の説明が少ない大企業

各企業が個別に開催するセミナー・会社説明会の内容を尋ねたところ(複数回答)、大企業と中小企業では「経営方針やビジョン、パーパス」が最多で、それぞれ59%、58%が取り上げています[図表10]。中堅企業でも54%と半数以上が取り上げているものの、「業界・事業の現状」が75%で最も多くなっているほか、「福利厚生」「採用情報の説明(募集要項の関連事項)」(ともに64%)、「社風や社内の雰囲気」(57%)など、「経営方針やビジョン、パーパス」を上回る項目が目立ちます。また、「初任給・給与体系・評価制度」も「経営方針やビジョン、パーパス」と同じ54%となっています。
[図表10]自社セミナー・説明会の内容(複数回答)
大企業では、「経営方針やビジョン、パーパス」に次いで、「入社後のキャリアパス」と「人材育成の体系」(ともに46%)、「人事制度」(44%)が多くなっています。一方、「福利厚生」は31%、「社風や社内の雰囲気」は28%、「初任給・給与体系・評価制度」は23%と、いずれも中堅企業の半分程度の割合にとどまっています。

中小企業は、「福利厚生」(53%)、「社風や社内の雰囲気」「初任給・給与体系・評価制度」(ともに49%)など、おおむね中堅企業と似た傾向を示しています。

最終面接の実施は大企業で“オンライン派”が減少

次に、面接の実施形式について、前年同時期の「2024年&2025年新卒採用動向調査(6月)」(以下、前回調査)との比較で見てみましょう。コロナ禍で大企業を中心に多くの企業が対面形式からオンライン形式へと大きくシフト(一次面接の場合、大企業・中堅企業ではオンライン形式がメイン)しましたが、人材の見極めや入社動機醸成の難しさから、最近では対面形式へ回帰する企業が増えてきています。2025年卒採用ではどうだったのでしょうか。

まず、一次面接の実施形式からです。大企業では、「オンライン形式のみ」が2024年卒の29%から15%へとほぼ半減しました[図表11]。「オンライン形式のみ」と「オンライン形式を主軸に対面形式でも実施」を合わせた“オンライン派”は2024年卒の64%から54%に減少し、「対面形式のみ」と「対面形式を主軸にオンライン形式でも実施」の“対面派”との差は大きく縮まっています(2024年卒:29ポイント、2025年卒:8ポイント)。この調子でいくと、2026年卒採用では“対面派”が“オンライン派”を逆転するかもしれません。中堅企業でも同様の傾向が見られ、“オンライン派”は2024年卒の66%から58%に減少しています。
[図表11]一次面接の実施形式の前年比較
一方、中小企業は異なる動きを見せています。もともと“オンライン派”は2024年卒でも33%と少数派でしたが、2025年卒では46%へと13ポイント増加しました。母集団形成に苦戦する中、一次面接の実施形式では参加ハードルの低いオンライン形式を選択することで、一次面接での離脱を防ごうとした企業が増えたと考えられます。世の中の動きと逆行する興味深い状況となっています。

次に、最終面接の実施形式を見てみましょう。こちらも大企業では“オンライン派”は2024年卒の29%から26%へと減少しています[図表12]。一方の“対面派”は内訳に変化が見られます。「対面形式のみ」は2024年卒の57%から44%に減少する半面、「対面形式を主軸にオンライン形式でも実施」が14%から26%に大きく増加しています。何が何でも全員について対面形式で実施するのではなく、遠方の学生や理系学生(特に辞退率の低い推薦応募学生)など一部については利便性も考慮の上、オンライン形式を併用する企業が増えたものと推測されます。
[図表12]最終面接の実施形式の前年比較
一次面接では大企業とほぼ同様の傾向を示した中堅企業ですが、最終面接については少し様子が異なります。「オンライン形式のみ」が2024年卒の13%から一気に0%となるなど、“オンライン派”は22%から6%へと大きく減少しました。代わりに「対面形式のみ」が2024年卒の49%から70%へと20ポイント以上増加しています。「対面形式を主軸にオンライン形式でも実施」ですら8ポイント減少していますので、完全に「対面形式のみ」に舵(かじ)を切った企業が多いことが分かります。内定後の辞退を抑制するために、最終面接は例外なく「対面形式」にこだわる企業が増えたということでしょう。

中小企業では、2024年卒でも“対面派”が90%と大半を占めており、それは2025年卒でも同様です。ただし、「対面形式のみ」は2024年卒の82%から75%に減少し、その代わりに「対面形式を主軸にオンライン形式でも実施」が増えています。大企業と同様に、「対面形式」を基本としながらもケース・バイ・ケースで対応する企業が増えたと考えられます。

2024年卒採用より好転している内定者充足率

この記事にリアクションをお願いします!