インターンシップの参加者獲得でも苦戦する中小企業

インターンシップについても考察してみましょう。まず、2025年卒採用に向けたインターンシップの実施状況について、全体では「前年は実施していないが、今年は実施した」と「前年同様に実施した」を合計した“実施した”が64%となっています[図表9]。従業員規模別に見ると、大企業ではこの割合が85%達し、「前年は実施したが、今年は実施していない」と回答した企業は皆無でした。中堅企業・中小企業における“実施した”とする割合は、それぞれ68%、49%と大企業を下回り、例年と同じく従業員規模による差が明確に表れています。
[図表9]2025年卒採用に向けたインターンシップの実施状況
「前年は実施していないが、今年は実施した」と「前年は実施したが、今年は実施していない」の割合を比較すると、後者の割合は非常に少なく、実施企業数は年々増加していることが分かります。こうした状況下で、各企業は十分な参加者を集めることができているのでしょうか。前年と比較したインターンシップ参加者数を尋ねたところ、全体では「前年並み」が68%と7割近くを占める一方、「前年より多い(参加者が2倍以上)」が3%、「前年より多い(参加者が2倍未満)」が18%で、合わせて21%の企業は“前年より多い”と回答しています[図表10]。一方、「前年より少ない(参加者が5割以上)」と「前年より少ない(参加者が5割未満)」を合わせた“前年より少ない”は12%で、“前年より多い”が10ポイント近く高くなっています。
[図表10]2025年卒採用に向けたインターンシップ参加者数の前年比較
従業員規模別に見ると、大企業では“前年より多い”が23%であるのに対し、“前年より少ない”はわずか3%で、“前年より多い”が大きく上回っています。中堅企業では“前年より多い”が大企業よりもやや高い25%である一方、“前年より少ない”も17%と高く、その差は大企業ほどではありません。他方、中小企業では“前年より多い”企業も13%ありますが、“前年より少ない”とする割合(17%)がそれを上回っています。つまり、採用活動のファーストステップともいえるインターンシップの参加者集めの段階で、既に従業員規模による明暗が分かれていることが分かります。

復活基調の「大学ルートの活用」

次に、コロナ禍の数年間は一時的に下火となっていましたが、前記[図表7]で見た“重要になると思われる施策”の中で、すべての従業員規模で注目されている「学内企業セミナー」について見ていきましょう。2025年卒採用に向けた学内企業セミナーへの参加大学数について、「減らす」と回答した企業は皆無でした[図表11]。また、「増やす」と回答した割合は、中堅企業で11%、大企業と中小企業ではそれぞれ22%、23%と2割以上に上っています。
[図表11]2025年卒採用に向けた学内企業セミナー参加大学数の前年比較
また、学内企業セミナーに代表される「大学ルートの活用」に関連するもう一つの施策として「理系研究室訪問」の実施状況も確認しましょう。全体では、「前年は実施していないが、今年は実施した(実施する予定)」(6%)と「前年同様に実施した(実施する予定)」(44%)を合わせると、ちょうど半数の企業が“実施した(実施する予定)”と回答しています[図表12]。「前年は実施したが、今年は実施しない」は3%であり、これを「前年は実施していないが、今年は実施した(実施する予定)」(6%)のほうが上回りますので、理系研究室訪問の実施企業は前年よりも増加していることが分かります。
[図表12]2025年卒採用に向けた理系研究室訪問の実施状況
従業員規模別に見ても、すべての規模で「前年は実施していないが、今年は実施した(実施する予定)」が「前年は実施したが、今年は実施しない」を上回り、復活の兆しを見せています。ただし、“実施した(実施する予定)”は大企業で67%に達する一方、中堅企業では51%、中小企業では38%と、従業員規模が小さいほど割合が低下傾向にあります。理系研究室訪問は、一つの大学内で複数の研究室を訪れることが一般的であり、キャリアセンター訪問よりもさらに手間と時間を要する施策です。また、研究室訪問の成果として期待されることは、教授からの推薦や当該研究室の学生からの自由応募ですが、理系採用は文系以上に獲得競争が激しいため、中小企業ではなかなか成果が得られにくいという背景も考えられます。

「2023年9月」にセミナーのピークを迎えた大企業

次に、プレエントリー数の前年比較の結果を見てみましょう。全体では「前年並み」が66%で半数以上を占めます[図表13]。一方、「前年同時期より多い」(8%)は、「前年同時期より少ない」(25%)の約3分の1にとどまります。
[図表13]2025年卒採用のプレエントリー数の前年比較
従業員規模別に見ると、唯一、大企業では「前年同時期より多い」が「前年同時期より少ない」をわずかに上回りますが、その差は3ポイントしかなく、「前年同時期より多い」と回答した割合の13%は中堅企業と同じであり、“前年より多い”とする割合が23%あったインターンシップの参加者数(前期[図表10]参照)とは様相が異なります。中堅企業・中小企業では、「前年同時期より少ない」がいずれも3割以上であり、「前年同時期より多い」を20ポイント以上上回るなど、母集団の形成段階で苦労している様子がうかがえます。インターンシップ参加者を対象とした早期選考を実施している企業の中には、プレエントリーを改めて求めないケースがあることを考慮したとしても、特に中堅企業・中小企業にとっては厳しい状況であると推測されます。

最後に、個別企業セミナー・説明会について、まずは[図表14]で開催時期(複数回答)の従業員規模別の結果を見てみましょう。

大企業では「2023年6月以前」が33%となるなど、早期から開催するところが多く、2023年「9月」には41%と開催のピークを迎えています。就活ルールで会社説明会が解禁となる2024年「3月」は28%にとどまり、同年「2月」の33%を下回るとともに、ピークの2023年「9月」を除く同年「7月」から「2024年1月」までの23~26%とさほど変わらない割合となっています。2024年「4月」以降は2割を下回る見込みです。

中堅企業では、「2023年6月以前」は15%ですが、その後は20%以上が続き、「2024年1月」に33%で3割台、2024年「2月」に43%で4割台となり、ピークの同年「3月」には48%と5割近くに達します。同年「4月」以降は徐々に低下していきますが、同年「7月以降」も20%をキープしています。

一方、中小企業では、2023年内は「10月」に1度だけ13%で1割台となるものの、「2023年6月以前」から2023年「12月」まで1割未満となり、「2024年1月」になってようやく1割台となり、個別企業セミナー・説明会の開催が本格化し始めます。2024年「3月」に34%でピークに達し、同年「4月」も31%と3割台をキープ、同年「5月」以降も2割前後となる見込みです。大企業の会社説明会が落ち着くのを待つかのように、採用活動が本格化する形となっています。中小企業では「セミナー・説明会の開催なし」が30%に達していることも特徴です。
[図表14]2025年卒採用の個別企業セミナー・説明会の開催時期(複数回答、従業員規模別)
次に、個別企業セミナー・説明会の開催形式について見てみましょう。コロナ禍が落ち着くのに合わせて、オンライン形式から対面形式への揺り戻しが起こっているといわれていますが、全体では53%と過半数が「対面形式とオンライン形式の両方を実施」しています。これに「すべてオンライン形式で実施」が26%で続きますが、「すべて対面形式で実施」の22%と大きな差はありません。

続いて従業員規模による違いを見ておきましょう。大企業では、「対面形式とオンライン形式の両方を実施」が73%と圧倒的多数であり、時期や内容により対面形式とオンライン形式を使い分けていることがうかがえます[図表15]。「すべて対面形式で実施」は14%にとどまりますが、一方の「すべてオンライン形式で実施」も同割合となっており、コロナ禍には「すべてオンライン形式で実施」に大きく舵(かじ)を切った大企業の方向転換の傾向が顕著に表れています。
[図表15]2025年卒採用の個別企業セミナー・説明会の開催形式
中堅企業では、「対面形式とオンライン形式の両方を実施」が53%で最多となっています。「すべて対面形式で実施」は12%にとどまる一方、「すべてオンライン形式で実施」が35%と3分の1以上を占め、大企業を上回っています。

中小企業では、「すべて対面形式で実施」が36%で他の規模を大きく上回るとともに、「対面形式とオンライン形式の両方を実施」もこれと同割合となっています。中小企業というと“対面形式”が主流というイメージがありますが、「すべてオンライン形式で実施」も29%と3割近くあります。なお、「対面形式とオンライン形式の両方を実施」について、従業員規模が小さいほど割合が低くなっていますが、これは特に中小企業の場合、セミナー・説明会のプログラム自体を幾つも用意しているわけでなく、一つ・二つ程度のメニューを繰り返し実施しているケースが多いためと推測されます。

次回は、今回の続きと合わせて、就活生を対象に実施した「2025年卒学生の就職活動動向調査」の結果もご紹介します。

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