こんなところにも大谷さん
ここからは、【佳作】の中から6作品を抜粋して紹介します。【優秀賞】を受賞した作者が別の作品で【佳作】にも入選しました。
就活ルール上での面接選考解禁である6月を迎え、これまで面接選考を控えていた一部の大手企業も面接選考を開始し、一気に内定者(重複内定者)が増えていきます。一足早く面接選考を行い、内定出しも実施していた企業からすると、大手企業で内定をもらった学生たちからの内定辞退が急に増え始める時期でもあります。それを「急上昇」で表現するとともに、内定辞退率の具体的な数字を出すことなく、「大谷の打率」とすることで「3割強」であることを読者にスムーズにイメージさせています。
内定辞退率の上昇という、採用担当者にとっては困惑と焦りが入り混じったテーマであるにもかかわらず、スポーツを交えた表現が新鮮で、現実の厳しさを和らげていると言えます。ロサンゼルス・ドジャース移籍1年目から、右ひじ手術のリハビリ期間中とは思えない大谷翔平選手の活躍が連日のように報道され、バッターとしての成績が共通言語となっているところもまたすごいことだと思います。
こちらも大谷選手を引き合いに出してユーモラスに表現した作品となっています。
近年は、学生が自ら企業探しやエントリー、説明会申し込みなどの就職活動をするのではなく、社会人の転職と同様に応募や面接日程調整を新卒紹介エージェントに任せるケースが増えています。エージェントを使う風潮に対し、大谷選手の通訳騒動を引き合いに疑問を投げ掛けた一首です。就職の重要な場面でのエージェント任せに対する不安をユーモラスに表現しています。
就職活動でエージェントを活用した学生は、就職した会社でいざ退職するとなったら、今度は今年春に話題となった“退職エージェント”(退職代行サービス)を活用するんだろうな……と思わずにはいられません。会社(人事担当者)と個人(学生・社員)が紡ぎ出す信頼関係の重要性を改めて考えさせられる作品です。
「オオタニさ~ん」は、大谷選手が昨年まで所属していたロサンゼルス・エンゼルス時代に、アメリカのFOXスポーツ・ウエストのエンゼルス担当実況者であったビクター・ロハス氏が、大谷選手がホームランを打った際のおなじみのフレーズをもじったものと思われます。