ProFuture代表の寺澤です。
HR総研では、今年も就活会議株式会社が運営する就活生向けクチコミサイト「就活会議」と共催で、2025年卒採用を実施した企業の新卒採用担当者と2025年卒の就活生を対象として、これまでの採用活動や就職活動を振り返って、それぞれの目線からの印象深いエピソードをテーマにした「2025年卒 採用川柳・短歌」と「2025年卒 就活川柳・短歌」を6~7月に募集しました。
第161回 【2025年卒 採用川柳・短歌】入選作品を紹介。今年の傾向は「早期化」や「AI」など
2020年の新型コロナウイルス感染拡大で一気に採用活動におけるオンライン化が進みましたが、その利便性は認識されつつも、昨年以降は直接触れ合える対面形式でのイベントや面接が増えてきました。その影響もあり、一昨年までは多かった「オンライン面接」を題材にした作品は大きく減少し、コロナ禍以前からあった「お祈りメール」のほか、「早期化」や「AI」「内定辞退」「売り手市場」などを扱った作品が多く寄せられました。

今回は、その中からユニークな着眼点によるもの、ユーモラスに表現されたものを入選作品として紹介します。ぜひご一読ください。

学生が思う以上に企業は苦戦している

まずは、採用担当者による「2025年卒 採用川柳・短歌」の入選作品を紹介します。【最優秀賞】からです。

ITの 広い世界に 羽ばたきたい 志望動機は 在宅勤務(神奈川県 賽の河原の採用担当さん)


応募者からの「広い世界に羽ばたきたい」という言葉の一方で、「在宅勤務ができること」が志望動機だと言われてしまうと、活動的な飛躍タイプなのか、インドアタイプなのか、どちらなのか判別が難しくなります。

働く場所や時間などの働き方の多様性は十分に理解し、歓迎はしているつもりでも、志望動機として「在宅勤務」というのは果たしてどうなのか。志望動機は「挑戦」や「意欲」であるべきだという前時代的な価値観にとらわれていると自認する作者からは、「在宅勤務」をどうしても消極性の表れだとしか受け取れないもどかしさがうかがえます。新しい働き方を受け入れる柔軟性が求められている昨今の採用市場を反映した、秀逸な作品だと言えるでしょう。

続いて【優秀賞】です。本来は2作品を予定していましたが、甲乙つけ難く、今回は3作品を選出しています。

耳につく 志望動機は みな同じ AI聞いても また同じ(熊本県 ひろしですさん)


「ChatGPT」などの生成AIは、就職活動の場面にも登場してくるようになりました。自ら「ChatGPT」サイトでプロンプト(生成AIに送る指示文や命令のこと)を入力しなくても、希望や経験などの項目について用意された選択肢を指定するだけで志望動機や自己PRを自動生成してくれるサービスも登場しています。その結果、学生が提出するエントリーシートや面接の質疑応答では、AIが作成したと思われる模範回答がずらりと並ぶことになります。

同じような文章をただひたすら読んだり、聞いたりしなくてはならない採用担当者のやるせなさがうかがえます。「志望動機」を模範回答に頼る学生たちを象徴し、個性や真の意欲を見極める難しさをうまく表現した作品です。

まだ採れぬ ハードル下げて また下げて いっそ自身の 転職よぎり(東京都 総務部長さん)


学生の「売り手市場」が続く中で、自社の選考基準に沿う学生の採用に大苦戦し、合格のハードルを徐々に下げ続けるも、一向に芳しい成果が出ない様子が描かれています。挙げ句の果てには、今の会社で採用担当者として苦労を続けるよりは、いっそのこと、自分自身が別の会社に転職してしまったほうが幸せなのではないかとさえ考えてしまう作者の心情を詠んだ一首です。

「売り手市場」下での採用活動の厳しさと、採用担当者の疲弊をリアルに描いており、共感を誘います。選考基準を下げても思うように学生を集め切れない会社の将来性にも展望を見いだせない不安が自分の疲弊をさらに増幅させ、転職したほうが楽になれるかもしれないと思ってしまう姿が切実です。

キャリアプラン 質問しつつ 本当は 自分自身も 悩んでいます(大阪府 ナーポリさん)


最近の面接では、応募学生に希望する職種や部署を聞くだけでなく、入社後のキャリアプランや将来やりたいことなどを問うケースも少なくありません。作者も面接官として学生に同様の質問をしたものの、ふと“自分自身が今聞かれたら何と答えようか”と思った瞬間を描いた作品です。

自分自身の就職活動や、当時の志望動機は結構いい加減なものだったにもかかわらず、学生の志望動機に厳しい面接官は少なくありません。ただし、それは過去の自分を棚上げしているのに対して、今回の作品は過去ではなく、まさに今の自分はどうなのかを自問自答しているところがポイントです。人事としての、あるいは管理職としてのキャリアプランなど、明確なものがない自分が面接官をしていていいのか、葛藤と人間味が感じられる一首と言えます。

こんなところにも大谷さん

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