新卒採用も「マスから個」の時代へ
近年、人事業界でよく耳にするのが「マスから個へ」という考え方です。例えば、人材育成においては、従来は一律の研修が多く実施されていましたが、本人の持つスキル、経験、知識、さらには今後の目指すべき方向性に応じて、一人ひとり異なるメニューを設定する動きが広がりつつあります。新卒採用においても、この動きは始まっています。就職ナビや合同企業説明会などのように、ターゲットを絞り込まず広く広報活動を展開することで、できるだけ大きな採用母集団を形成し、そこから優秀な人材を選別していくというのが従来からの考え方でした。最終的な採用計画数を起点に、これまでの内定辞退率や選考辞退率の傾向値を参考に、内定者数、最終面接者数、二次面接者数、一次面接者数、エントリーシート提出者数、会社説明会参加者数、プレエントリー者数(採用母集団)等を逆算ではじき出していくものです。そのため、プレエントリー者数の対前年比での増減で、多くの採用担当者が一喜一憂したものです。これらの数字が、採用活動における「KPI(key performance indicator/主要業績評価指標)」になっていた企業も少なくないでしょう。
ただ、最近では徐々にこの考え方は変わりつつあります。玉石混交の母集団を形成しようとするから、採用計画数に対して10倍から100倍もの母集団を追いかける必要があるわけですが、優秀で、かつ自社の風土・文化にマッチする学生だけを引き寄せることができるのであれば、採用計画数に対して母集団の人数は1倍で十分ということになります。単純に数の多さを追うのではなく、どれだけ無駄のない母集団を形成するかということが大切になってきます。そうなるともはや「母集団」という言葉すら使わなくてよいかもしれません。
半数の企業が「個別」採用を導入済み
各社からの回答に散見された「ダイレクトリクルーティング(ダイレクトソーシング)」は、エントリーシートデータベースを検索・閲覧し、気になる登録者にオファーメールを送ることができる「逆求人型サイト」の利用を指すことが多いです。これはまさに「個別」採用であり、「マスから個へ」の代表的な施策といえます。これ以外にも、社員や内定者による紹介制度「リファラル採用」も「個別」採用の一つですし、インターンシップで見つけた気になる学生へのアプローチも、「個別」採用です。今回、就職ナビや合同企業セミナーのような「マス」による母集団形成施策だけでなく、「個別」採用活動をしたかを聞いてみたところ、全体では「『マス』採用のみ」と回答した企業が44%で最も多く、次いで「『マス』採用と『個別』採用の両方を活用」が32%、「『個別』採用のみ」が16%で続きました[図表2]。