Vol.04

「NEXT HR」調査レポート・コラム

「人事不要論」は本当か?次世代型人事の在り方とは?〜人事アンケート調査結果から読み解く〜

ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

AIに取って代わられる、未来の人事業務

人事のあり方を根本から変えようとしている要因が、もうひとつある。AI(人工知能)である。進化したAIが人事業務を代替する流れは、猛烈な勢いで加速している。

特に今年、2017年はソフトバンクが新卒採用にAIを導入すると発表し、大きな注目を集めた。同社では膨大なエントリーシートの審査を行うAIを開発し、採用担当者が行っていた業務を大幅に削減したという。しかし、AIはエントリーシートの審査のみならず、採用プロセス全体を自動化することさえ可能にしつつあるのが現実だ。

NECが開発している機械学習による人材マッチングシステムは、過去の履歴書データと採用試験の合否判定結果の情報をもとに、自社に適した人材を高精度で抽出できるという。AIが面接官に代わって一次面接を行うわけである。また、米国のAI企業ミャー・システムズが開発中の人材採用向けクラウド型AIチャットボット「Mya」は、採用プロセスを最大75%自動化可能だとされており、現在はβ版を運用している段階だが、すでに多くの企業が導入している。

採用のほかにも、最近のクラウド人材管理システムは、さまざまな人事データを統合化し、一元管理してAIが処理することによって、労務管理、勤怠管理、教育、配置、評価、報酬などに関するさまざまな人事業務を自動化し、「人に代わってできること」を増やしつつある状況だ。

このようなAIの進化は、人事部門のオペレーション業務を削減するのみならず、今後、人事部門の縮小につながる可能性があると見る向きもある。これまで、日本企業の人事は、人に関する情報を囲い込み、自分たちの培った経験や勘に頼って人材管理を行ってきた傾向が強いといわれる。しかし、人事情報がデータベースに統合化され、その情報を使ってAIが最適な判断を行うようになれば、その場面での人事の優位性は大きく下がる可能性が高い。

そうした状況の中で、「いまのままの人事部はいらない」といった人事部不要論も浮上してきた。時代が変化する中、人事が「現場を知らない」、「経営と乖離している」、「グローバル化に対応できていない」といった批判にさらされる企業も増えている。実際に、採用業務を現場に移管し、縮小させた人事機能をCSR 部に移管するなど、「人事部門の見直し」の動きは大手企業の間でも出てきている。

いま、人事に突きつけられているのは、まさに、時代の変化に対応してどのように変われるか、どのような新しい価値を生み出していけるかという命題である。