Vol.02
NEXT HR キーパーソン特別インタビュー
「雇用」の概念がなくなる!?
働き方の変化が企業や人事の在り方を変える(前編)
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介
雇用の流動性・多様性が加速している。副業やパラレルキャリアといった言葉がクローズアップされ、一つの企業に勤め、キャリアを積んでいくこれまでの「日本の働き方」が大きな転換期を迎えつつある。ビジネス環境もまた、めまぐるしく変化し、人材を確保し、生産性を維持・向上させていくことが喫緊の経営課題となっている企業も少なくない。こうした変革期において、求められる人事部門の役割・価値とは何なのか。
今回は学習院大学 経済学部 守島基博教授をお招きし、未来における雇用の在り方、人事部門の重要性とその担うべき役割についてその見解を伺った。
雇用という概念がなくなる?ではどう働けばいいのか
寺澤「雇用の未来」はどう変わっていくのでしょうか?働く人が留意する点についてお聞かせください
守島そもそも雇用というのは、所属企業に自分の時間を売って、指示された仕事を行うことでリターンとしてお金をもらうことです。しかし、これからはそういう「雇用」という概念自体が長期的にはなくなってくるのではないかと思っています。
これからは様々な職務の各部分を切り出してコンパートメント化し、最適な人に業務委託するという労働の需要と供給とのマッチングが一般的になってくると思います。
実際グローバルに見ても大きく変わってきています。ひとつの企業にすべての労働時間を売って給与をもらう働き方ではなく、「自分はこれができます」という専門性を持ち、「こういう仕事をやります」と引き受け、「成果」に基づいてお金をもらっていくという、いわゆる業務委託的な働き方をしている人がどんどん増えてきています。いわば、自分で自分を雇う(セルフエンプロイメント)という職人のような働き方が場所や時間を超えて実現していくのではないかと思います。
寺澤従来の雇用の在り方が壊れていき、組織がシームレスになっていく中で、いかに企業が目的を達成するためにリソースマネジメントしていくかが重要になっていくのですね
守島そうですね。極端にいえば、あるプロジェクトに企業家と労務提供者が契約を結んで仕事を行い、アウトプットし、その関係が終わっていく、そのようなことが集積体として事業や企業が成立していくのだろうと思います。そうしたヒューマン・リソース・マネジメントになるでしょう。
学習院大学 経済学部経営学科 教授
守島 基博 氏
86年米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部Assistant Professor。慶應義塾大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授、一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年より現職。厚生労働省労働政策審議会委員などを兼任。著書に『人材マネジメント入門』、『人材の複雑方程式』(共に日本経済新聞出版社)、『人事と法の対話』(有斐閣)などがある。
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