Vol.02
NEXT HR キーパーソン特別インタビュー
「雇用」の概念がなくなる!?
働き方の変化が企業や人事の在り方を変える(前編)
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介
働き方の変化が企業も変える、人事も変える
寺澤企業は従業員に対して、いかにロイヤリティを持ってもらうか、コミットメントしてもらうかということに普請してきましたが、そうなると企業が働く人に求めるものを変えていかなければなりませんね。
守島おっしゃるとおりですね。これまで日本企業は従業員のロイヤリティやコミットメントを大切にしてきました。しかし、これからはその人の能力や成果が基準に満たないから必要なくなったという訳ではなく、戦略やビジネスの内容が変わったから必要なくなるといったことが起こってきます。そのニーズを考えると、ロイヤリティやコミットメントがマイナスに作用することが起こってきます。これからは瞬間毎に仕事に対するインボルブメントやエンゲージメントを深くして頑張って欲しいという方向に変わってくると思います。そういった企業の動きに対して働く人も人事も変わっていかなければなりません。
寺澤そのような雇用の在り方や働き方の変化に対して、人事部門はどうなっていかなければならないでしょうか?
守島ヒューマン・リソース・マネジメントは、今後こそ重要になってきます。その中でもビジネス成長や活性化に寄与する人材調達機能はとても大切です。ひとつには、今まで商品毎、事業部毎で行ってきましたが、グローバル化によって事業部間を超えた調達が重要となっていくでしょう。多くのグローバル企業で、ローカルでの人材調達をセントラライズしていく傾向が見られ始めています。セントラライズすることはグローバルワイドで企業全体のタレントの能力や感情をリアルタイムで把握し、全体最適していくことです。
例えばX事業部にいるAさんが別の国のY事業部に行ったほうがいい、また5年先にはこういった仕事を経験するといい、といった判断をセントラルで行うといったことが挙げられます。そういう作業にはAIやITの活用が不可欠です。
同時に、現場(ローカル)での人材マネジメントが非常に重要になってきます。どんなにグローバルスケールで人を調達、確保するにしても、基本は現場でのモチベーションや成長などの支援が重要だからです。そのため、人事部門に求められるのは、現場や現場リーダーに対しての人的側面からのサポート提供や感情・モチベーションの支援を行うことです。
つまり、人事部門はグローバル本社と現場、両方に対してアピールして活躍していかなければなりません。しかし、人事部の今はどっちつかずになっています。中央集権的なことをやっているようで実は制度作りに終わっている。また現場とは制度が邪魔になって本当の現場ニーズにあった支援ができないでいる。制度や仕組みが間に入って、現場との距離が生まれているのです。これからは会社全体での人材調達機能と、現場での個別管理支援こそが人事部門の本懐になっていくのだと思います。
学習院大学 経済学部経営学科 教授
守島 基博 氏
86年米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部Assistant Professor。慶應義塾大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授、一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年より現職。厚生労働省労働政策審議会委員などを兼任。著書に『人材マネジメント入門』、『人材の複雑方程式』(共に日本経済新聞出版社)、『人事と法の対話』(有斐閣)などがある。
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