働くシニアの実態とは
大和証券グループの株式会社大和ネクスト銀行は、2017年9月25日~27日の3日間、働くシニア1,000名を対象としたインターネットリサーチを実施し、その就業実態を調査した(「働くシニアの仕事と生活に関する実態調査2017」)。まず、働くシニアの労働時間について調査したところ、平均労働時間が1日6.3時間で、最多回答は8時間(33.8%)であった。会社員・公務員(正社員・正職員)・契約社員・派遣社員・非常勤職員では労働時間が長くなり、自営業・フリーランス・パート・アルバイトでは労働時間が短くなるという特徴も見られた。
次に、平均的な1週間の勤務日数を調査したところ、平均日数は4.3日で、最多回答が5日(49.5%)であった。会社員・公務員(正社員・正職員)・契約社員・派遣社員・非常勤職員では5日勤務という回答が多かったものの、自営業・フリーランスでは1日が9.4%、5日が24.5%、6日が20.8%とワークスタイルにばらつきが見られた。
さらに、現在の平均的な1ヶ月の個人収入と、目標にしている個人収入(どちらも勤労収入、手取り額)を調査したところ、現収入の平均金額は22.1万円なのに対し目標は28.4万円。実際の収入は目標収入より6万円ほど下回っていることがわかった。
就業実態として浮かび上がってくるのは、労働時間や日数について、若手・中堅労働者とあまり差がないシニア労働者も多いという現状だ。
さらに、この調査では、働く理由についても尋ねており、最多回答から順に「日々の生活費のため(56.4%)」、「社会や人との接点のため(45.6%)」、「健康維持のため(44.1%)」、「今後の生活費のため(43.8%)」、「生活にハリがほしいため(35.0%)」と、収入面以外に働く意義を見出すシニアも多く見られた。
特に、70代男性では最多回答が「健康維持のため(64.1%)」、70代女性では「生活にハリがほしいため(51.9%)」、「仕事が好きなため(46.2%)」、「自分を成長させるため(21.7%)」となっており、働くことに生きがいを見出し自己肯定感の強いシニアの姿を垣間見ることができる。
また、現在の仕事を選ぶ際に、どのような職場・仕事で働きたいと思っていたかを調査したところ、最多回答から順に「希望する勤務時間で働ける(43.0%)」、「勤務先が自宅から近い(42.1%)」、「自分のスキル・経験が活かせる(42.0%)」と、ほぼ同率であった。一方で「賃金が高い」は17.0%(9位)で、高賃金を期待して働くシニアは少ないことが分かる。とは言え、もちろん賃金の高さを求めている人がいないわけではなく、理想(働きたいと思っていた職場・仕事)と現実(現在の職場・仕事)の合致状況を見ると、「賃金が高い」は27.6%で、理想と現実のギャップがある。反対に合致率が高くなった項目は「勤務先が自宅から近い(70.3%)」と「自分のスキル・経験が活かせる(69.8%)」で約7割が理想通りと考えているようだ。
シニアの3人に2人が現在の仕事に「満足(65.6%)」と答え、現在の仕事を肯定的に捉えるシニアが多いことがわかる。また、41.3%のシニアが新しい業務知識を積極的に学びたいと考え、48.4%がもっと自分の経験・スキルを活かしたいと考えているなど、成長意欲の高いシニアが多いことが分かった。
働くシニアの活躍の場は広がっている
労働力不足を背景に、こうしたシニアの高いモチベーションやスキルに期待し、働きたいシニアを積極的に受け入れようとする企業や団体は少なくない。人手不足が顕著な外食・小売業界もその一つだ。コンビニ大手である株式会社ローソンでは、起業意欲の高いシニア層に期待を寄せ、2017年2月に加盟店オーナーの契約年齢上限を撤廃した。今までは加盟店オーナーとして契約できる年齢を「20歳以上65歳まで」としていたが、「20歳以上」のみの条件として上限をなくした形だ。
加盟店オーナーとして安心してスタートできるよう、店舗オープン前研修などのサポート体制をとっているという。
また、同じくコンビニ大手の株式会社セブン-イレブン・ジャパンでは、シニア層の店員が増え続ける中、従業員が働きやすい環境づくりに力を入れている。2017年12月に公開された最新技術を導入した次世代型店舗では、スライド式の陳列棚の導入や立ったままでも取り出せる位置にレジ袋を設置することで、1日あたりの作業時間を5.5時間ほど削減できるという。働きやすい環境をつくることで人手不足を解消しようという試みだ。
民間企業だけでなく、官公庁もシニア層活躍を推進している。
埼玉県では、「シニア活躍推進宣言」として、シニア活躍の機運を高めようと県内企業に働きかけ、シニアの活躍の場を増やそうと力を入れているという。また、シニアの雇用に積極的な企業を「シニア活躍宣言企業」に認定する等、シニアが就労や地域活動において活躍できる社会を構築するムーブメントを広げていきたいとしている。
ちなみに、下記の7つの取組項目うち、3つ項目を満たした企業は「シニア活躍宣言企業」として認定される。
1. シニアの定年や継続雇用の制度を見直す
2. シニアの雇用、働く場所・機会を増やす
3. シニアが安心して働ける環境を整える
4. シニアの技術・経験を生かす
5. シニアの能力を伸ばす
6. 福利厚生を充実する
7. シニアの活躍推進の取組を情報発信する
また、こうした流れを受けて、ミドルシニアに特化した求人・転職支援サービスにも注目が集まっている。
マイナビグループの株式会社マイナビミドルシニアは、40~60代の採用に特化した求人サービス「マイナビミドルシニア」を2017年10月にオープンした。「求人広告と人材紹介の2つのサービスで、求職者はもちろんのこと、潜在層へのアプローチも行い、企業へは中高年労働力の採用方法および活用方法を提案し、ミドルシニア層採用市場の活性化を目指したい」としている。
50歳以上に特化した転職支援サイトを運営している株式会社MS-Japanも、シニアの知見や経験を活かせる仕事を紹介しており、特に、会計・法律事務所やコンサルティングファームなどで活躍してきたシニアに活躍の場を提供している。
こうした働くシニアを積極的に活用しようとする社会の動きは、ますます広がるだろう。日本の労働力不足問題解決の切り札となるべく、シニア世代への社会的要請は強くなっていると言える。一方で制度や仕組み、環境整備はまだまだ追いついていない部分も多い。「働きたい」と意欲的なシニアが、働きがいがあると感じられる職場づくり、社会づくりが求められている。