日本のシニア世代、働く意識は強い
全国の60歳以上を対象に内閣府が行った調査によると、「いつまでも働きたい」「70歳以上まで働きたい」と答えた人が合わせて65.9%。先進国の中でも高い水準で、日本のシニア層は70歳をこえても働きたいと意欲をもっている人が多いと言える。そんな日本のシニア層に対し、今回の調査では「アルバイトに関心をもった理由」について質問。50代では収入目的が圧倒的に多いのに対し、年金受給が始まる60代になると、社会との接点を求める傾向が強くなるという結果が出た。これは、男女共通して見られる傾向である。
シニアが好むアルバイト、避けるアルバイト
社会との接点をもっていたいと労働意欲を見せるシニア層だが、職場選びについては、体力面や職場環境に対する適応面での不安からか、好む職種と避ける職種に分かれる。また、男女では傾向に差があるようだ。男女ともに避けられる職種は、美的感覚が問われそうな「理容・美容」や「アパレル」、立ち仕事が多そうな「飲食」や「アミューズメント」である。これらの仕事は若者相手で、一緒に働くスタッフの年齢層も低そうなイメージがあることも、好まれない要因のひとつであろう。
好む職種については、男性では答えが二極化している。「軽作業」「事務」など精神的負担の少なそうな単純作業系か、「営業職」など長年働いてきた経験を活かせる専門業種系かだ。一方女性は好む職種がかなり限定的で、避ける職種が圧倒的に多くなっている。労働目的が「お金」ではなくなると、「辛いことを我慢してまでは働きたくない」という心理が読み取れる。
そんな中、男女共通して好む職種の上位に入っているのが「インストラクターや講師(塾講師・家庭教師など)」である。
人に何かを教える職種を目指す人が多いのは全年代において言えることだが、人気ぶりはシニア層でも例外ではないようだ。
求められる、シニアならではの講師像
アルバイトに意欲的なシニア層の多くが興味を示す「講師・インストラクター業」には、一定の需要が存在している。個別指導学習塾大手の明光義塾が積極的にアピールしているのを筆頭に、塾講師はシニア層のニーズが高い。シニア講師は若手講師に比べ、生徒たちと世代差はあるものの、経験値は圧倒的に上だ。生徒たちの親世代より人生経験が豊富なので、保護者にとっても心強い。自分自身が受験経験者であるだけでなく、親として子どもの受験を経験した体験談が語れるのは大きな強みである。
塾講師として歓迎されているのは、大学で教職過程を取得するなど教育に対して一定の知識や経験を持っているシニア層だけではない。世界を飛び回っていた商社マンや、ひとつのことを極限まで追求した技術者などは、豊富な社会経験を語ることができ、勉強以外の大事なことも子どもたちに伝えてくれるといった点が、親たちの支持を得ているのだ。
塾講師の他には、パソコンのインストラクターにもシニア層が多く起用されている。パソコン教室に通うのは主に中高年層であり、若いインストラクターに教えてもらうよりも、同世代か年上の人から教えてもらうことを望む人が多いことが理由であろう。