株式会社トランスコスモス・デジタル・テクノロジーは2024年2月7日、生成AI(ChatGPT)を利用した「採用業務に関する実証実験のレポート」を発表した。これは、AIに置き換えることが難しいとされていた採用業務に関して、AI活用の可能性を探るために行った実証実験の概要と結果を示したものである。
【AI活用事例】生成AI(ChatGPT)を利用した“業務効率化”の実証実験。AI活用が難しいとされる「採用領域」において効果を確認

採用業務におけるAI活用の可能性を探るための実証実験を実施

トランスコスモス・デジタル・テクノロジーは以前より、生成AIの活用に関してさまざまな可能性を探し、日々研究・開発を行っている。その一環として同社は、ヒトに代わって作業するのが難しいと考えられている採用業務の領域において、AI活用の可能性を探るための実証実験を行った。

同社の採用業務は現在、事業拡大に伴い中途採用において多くの応募が集まっている。しかし、募集職種が多岐に渡るためスキルの確認ポイントがさまざまあり、書類の記載形式も応募者により異なるため、書類選考に多くの時間を割いているという。そこで同社は、「書類選考の一部にAIが活用できるのか」、「採用業務の負担が軽減されるのか」について検証を行った。調査の概要は以下の通り。

【調査概要】
実証実験では、生成AIによって事前に応募内容の要約や確認ポイントの洗い出しが必要であり、プロンプトの工夫が重要な要素となった。多様な応募職種があるため、共通部分と職種やポジションごとに異なる条件との組み合わせを何パータンも検証し精度をあげた。
また、生成AIによる要約内容を採用管理システムに反映する作業についてはRPAを活用することで、採用管理の一連の業務プロセスをシームレスに行い業務効率化を図った。

開発期間  :2023年9月1日~11月3日
実証実験期間:2023年11月6日~12月20日
対象件数  :101件




<プロンプトの精度>
●資格、スキル、経験年数など定量的なものについては、人とAIの判断は一致する傾向
●定性的な内容については、一致率が下がる傾向
●応募してきたものと異なるポジションでの選考はできない(複数ポジションの選考ができない)
ポジションごとの一致率
<システム構成>
企業利用に向けセキュリティ対策・管理に信頼のある「Azure OpenAI Service」を利用。他の構成は全てMicrosoft Azureのマネージドサービスを活用することで、急な業務増加に対応できる環境を確保しつつセキュリティを担保し、安定運用とコストの削減につなげた。また、「Microsoft Power Automate」上でRPAを実施することで、Azureとシームレスな連携が可能となった。
システム構成/アウトプットのイメージ

書類選考において年間約400時間工数削減の試算も、長文などは評価しにくいという課題あり

本実験による効果と課題は以下の通り。

<効果>
実証実験では、書類選考における下記の作業時間削減について確認できたという。

●フォーマットが異なる職務経歴書を担当者が読み込む時間
●RPAを活用することで、採用管理システムに反映する作業時間

これにより、年間で約400時間の工数削減ができる試算となった。
採用フローの変更点とAI活用によるメリット
<課題>
繰り返し実証実験を行うことで、以下について主に改良が必要であることも明確になった。

●長文や不揃いのものは評価しにくい
●複数のポジションマッチングができない

同社は今後、人事担当者へのヒアリングやプロンプトの見直し、AI活用範囲を拡大して要約部分をクリアにするなど、実証実験を重ねて精度をあげていく予定だ。

本実証実験では、中途採用の書類選考においてAIを活用することで、人事部門の業務効率化につながることが確認できたという。同社は今後、人事部門だけではなく企業運営において必要な他の業務についても生成AIの可能性を広げていきたい意向だ。さらに、DXパートナーとして、今まではテクノロジーの利用が難しいと言われていた分野にも進出できるよう研究・開発を行い、ソリューションを提供していきたいとのことだ。
労働者不足が深刻化する時代において、採用領域を含んだ業務効率化はどの企業においても重要な課題であると言えるだろう。こうした他社の事例を参考に、自社でも生成AIの活用について検討してみてはいかがだろうか。

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