日頃のマネジメントに現れる7つの「アンコンシャス・バイアス」
入社試験の成績を見ると、「上位は女性が多い」というのはよく耳にする話だ。入社時点で高い能力を持っている女性が、なぜ職場ではその実力を発揮できないのか。次にあげる7つの点を考えることが、ヒントになるだろう。(1)重要な仕事をまかせるメンバーが男性に偏っていないか
どの職場にも、「これができるようになって一人前」と思われている、基幹的な業務がある。そのような業務をだれに任せるかを考えるとき、また、実力のある若手を集めてプロジェクトチームを作ろうというとき、人選が男性に偏っていないだろうか。
このような管理職に登用する手前の人選は、部下育成の大きなチャンスである。この時点で、入社時の男女比よりも女性が明らかに少ない場合は、無意識に男性を候補として選んでいないか、考える必要がある。
(2)雑務をまかせるメンバーが女性に偏っていないか
(1)とは反対に、コピー取りや資料の整理など、どうしても必要な仕事であるが、その仕事を繰り返していてもとくに実力には結びつかない単純作業がある。多くはキャリアの浅い部下にまかせるべき仕事だが、キャリアよりも女性であることを理由に、雑務を指示していないだろうか。
女性社員が、雑務に時間を取られたり、しょっちゅう本来の仕事を中断されたりして、落ち着いて業務に集中できないという状態では、雑務をやらなくてよい男性社員に対して不利な状況だ。
(3)評価の対象になっていない隠れた貢献はないか
クレーム処理といった、ある程度実力がないとできないような仕事でも、うまくこなしている人が、よい評価の対象になっていないということはないだろうか。「とくに目立った活躍がない」と思われていた社員が実は縁の下の力持ちで、辞めてしまったら職場が混乱した、ということにならないよう、現実の業務にみあった評価軸を考えよう。
(4)会議の時間設定は全員が参加できる設定になっているか
「働き方改革」が提唱されるようになってから、「夕方6時から会議」というような極端な時間設定は減っているだろう。しかし、育児のため時短勤務中だったり、介護といった理由で決まった曜日に早退したりする社員がいるのに、それらの人に配慮のない時間設定になっていないだろうか。
「意思決定の場に参加できない」というのは、「あなたは職場メンバーとして二軍だ」と言われているのにも等しく、業務への差し支えだけでなく、モチベーションを大きく削いでしまう。
(5)女性の発言をさえぎっていないか
会議のときや、もっとインフォーマルな場での会話でも、男性は女性の発言をさえぎることが多い。男性はほとんど感じていないだろうが、多くの女性は実感していることだろう。そのような実感を裏付ける学術研究もある。
「発言をさえぎる」だけでなく、「話が長く、結果的に相手の発言を抑制する」、「相手の発話に対して反応を示さない、反応が遅い」などの行為は、女性が男性に対して示すことはあまりないが、逆の例は枚挙に暇がない。「自分の発言は軽んじられている」、「なにを言っても、まともに受け取ってもらえない」と部下が感じていたら、モチベーションはあがるだろうか。
(6)発言が少ない人の意見を促しているか
能力のある女性でも、「たくさんしゃべるとでしゃばりだと思われる」ことを無意識に恐れ、男女が同席する場では、男性に発言権を譲ってしまうことが多い。上司としては、「積極性がない」と切り捨てるのではなく、そのような性差があることを頭に入れておくべきだ。
(7)全員に均等に時間をとっているか
「ちょっといいですか」と、自分の相談で上司に時間をとらせることについても、気軽に声をかけられる人と、声をかけづらいと感じる人がいる。これも、「いつも自分の都合をおしつけてくる図々しい女」というステレオタイプを恐れる女性が、後者になりがちだ。
上司は、部下と接する時間をふりかえってみて、特定の人に偏っていたり、ほとんど話していない部下がいたりするのであれば、相手から声をかけられるのを待つのではなく、上司の側から声をかけるべきだろう。
以上、7つの問いに「Yes」と答えられるようであれば、女性社員への処遇だけでなく、職場全体の風通しがよくなっていくはずだ。