「幅広い年齢層」「保有スキルのばらつきが大きい」チームは多様性が高い傾向
グローバル化や女性の社会進出、ミレニアル世代などの影響を背景とし、日本企業においては、国籍、性別、年齢などの表面的な多様性のみならず、価値観や志向、スキルや経験といった面で多様なメンバーと共同で業務にあたる機会が増加している。本調査では、チームにおける多様性経験の実態から、多様性のあるチームが成果を上げ、創造性を高めるために必要なことを分析・考察した。まず、回答者が考える「最も多様性が高いチーム」の状態について調査した。「現在所属している多様性が高いチーム」が多様性の種類としてあげた10項目に、どの程度あてはまるかを聞くと、「年齢層の幅が広い」でその回答割合が最も多く、「あてはまる」が33.3%、「ややあてはまる」が47.3%となった。次いで、「保有知識やスキルのレベルにバラつきが大きい」が「あてはまる」21.9%、「ややあてはまる」が50.7%という結果となった。
多様性が高いチームの約半数が「業務・人間関係、共に良好」
次に、多様性が高いチームの業務推進状況とチーム内の人間関係について調査した。それぞれ「良好」または「問題がある」という、4つの選択肢からあてはまるものを選んでもらうと、「業務・人間関係、共に良好」が最も多く、全体で45%だった。次いで、「業務問題・人間関係良好」が21.7%、「業務良好・人間関係問題」が19.9%、「業務・人間関係、共に問題」が13.4%という結果に。「共に良好」の回答理由には、立場の違いに関係なく意見が言えるといった心理的安全性やサポートをし合える職場といった意見が散見された。また、「共に良好」「共に問題」という双方の回答理由からは、人間関係の良否が業務に影響している様子がうかがえる。
多様性の種類によって異なるチームの成果
上記の設問に対する「共に良好」「共に問題」という回答を、所属しているチームの多様性別に比較すると、「共に良好」は「性別」「専門性」が多様なチームで割合が高い。一方で、「共に問題」は「勤務地」「知識・スキルレベル」が多様なチームで多くの回答が得られ、有意な差が明らかになった。多様性が高いチームの8割以上は「助け合いながら業務にあたる」
次に、「現在所属している多様性が高いチーム」のチームプロセスの状況を調査するため、チームの特徴について尋ねた。「とてもあてはまる」~「ややあてはまる」という回答の合計が8割以上にのぼったのは、「助け合いながら仕事をしている」、「メンバーがチームで成果を上げることに貢献しようとしている」の2項目だった。一方で、「お互いの成長やバックグラウンド・価値観について知っている」、「期待を伝え合っている」は6割ほどという結果だ。経験や価値観の多様さがある中でも、互いに理解を深めようとする状況ばかりではないようだ。チームプロセス状況との相関。チームの多様性によって差も
これまでのチームの特徴と10種類の多様性との相関性を分析した結果、多様性の種類によって、チームの特徴のどの部分に関係するかが異なることがわかった。「勤務形態」、「価値観」が多様なチームは、「協働」、「共創」、「改善」とプラスの関係にある一方、「疲弊」ともプラスの相関があることから、ポジティブ・ネガティブの両側面に影響をもたらすことが伺える。また、「専門性」が多様なチームは、「協働」、「共創」、「改善」、「心理的安全性」に対してプラスの相関があるのに対して、「疲弊」との関係はなく、ポジティブな影響がある多様さを持つと考えられる。チームで成果を上げるのに障害となる多様性は「知識・スキルレベル」が最多
次に、これまでのチーム経験にもとづいた回答を調査した。「チームを上手く進めるうえで障害となる多様性の特徴」について尋ねたところ、「知識・スキルレベル」が33%と最多だった。次いで、「価値観」が28.2%、「年齢層」が21.7%となった。職務系統別に見ると、技術職では「知識・スキルレベル」と「勤務地」、また、営業職では「年齢層」「価値観」の多様性を障害と感じる傾向にあることが見えてくる。また、メンバーが多様であることで困った経験や不安についての自由回答からは、合意形成や意思疎通に関する回答が最も多かった。チームワークの側面であるサポートや協働に関する記述も多数あり、サポートし合う気持ちや立場が異なる相手への配慮不足、多様であるがためのサポート要請の難しさなどが挙げられた。