日本では男女差問題は大幅に改善した反面、管理職の多様性が課題
日本でもD&Iについての理解は広まってきており、職場での男女差の問題については大幅な進展が見られているが、本調査の結果「直属の上司が女性」と答えた回答者の割合は33%と低い値を示している。この割合は、2017年の21%、2018年の28%からは着実に上昇しているものの、女性管理職の割合は依然として低い。また、「リーダーシップにおける多様性は実現されていない」と回答した人は53%と、約半数に上ることも分かった。一方で、「差別(年齢や民族など)により、プロジェクトへの参画を疎外された、意見を聞いてもらえなかった、尊重されなかった、と感じたことはない」と回答した人は35%にとどまっており、アジア全体の中では中国(32%)に次いで、2番目に低い結果となった。しかし、「常に疎外されている」という回答も17%で、2割近くの人が職場において何らかの差別を実感しており、他の国と地域に比べると大幅に高い結果となった。誰もが平等に働く組織を実現するためには、日本企業が早急に対応策を考えることが必要と言えるだろう。
アジア全体で多様化が進む一方、国によって差が出る結果に
一方、アジア全体で見るとどうだろうか。昨年の調査で「直属の上司が女性」と回答した人の割合は39%だったが、今年は40%と、わずかながら上昇した。また、全回答者のうち57%が、「自分の働く組織の管理職やチームリーダーたちの人材構成に多様性がある」と感じており、多様化が進んでいることが分かる。中でも中国は70%が「管理職の人材が多様性に富んでいる」と回答しているが、これに対し日本の同回答の割合は27%と低い値となった。リーダーシップの多様性という点で、日本はアジアの中でも遅れを取っていることが明らかになった。
リーダーシップにおける「無意識の偏見」や「不当な優遇」は依然として高い
アジア各国でリーダーシップチームの多様化が高くなってきている一方で、D&Iにおけるリーダーの役割については明確に認識されていないようだ。回答者の60%が「リーダーが、外見や自らと見解や行動を同じくする人を不当に優遇している」と感じており、「採用の過程でも同様の不平等を感じている」と回答した人の割合は59%にのぼった。これは、管理職やリーダーをはじめ、面接官などの採用に関わる人たちを対象とした、無意識の偏見に対するトレーニングが不十分であることが一因と考えられる。実際、こうした研修をリーダーに向けて実施している組織は49%に留まっており、企業内でのリーダーの役割を定め、認識を揃える働き掛けが求められていることが窺える。
近年、グローバル化や顧客ニーズの多様化といった市場変化に対応するため、ダイバーシティ経営に取り組む企業も増加傾向にある。これからの企業の成長や躍進には、D&Iの実現がビジネスに及ぼすメリットを十分に認識し、具体的な対策や取り組みを推進していくことが重要であると考えられる。