貴社では、タレントマネジメントについてはどういう位置付けで行っていらっしゃいますか。
将来の会社をリードする人材をいかに探して育てるか、いわゆるハイポテンシャル人材の発掘と育成をグローバルに行うという位置付けです。当社では2014年6月にフランス人のクリストフ・ウェバーが代表取締役社長に就任し、グローバル化が一気に加速しました。世界中から優秀な若手をピックアップし、育てて、将来の社長にする、あるいは、当社ではTET(タケダ・エグゼクティブ・チーム)と呼んでいますが、経営会議のメンバーにするための仕組みをグローバルで整えて実施しています。
将来の幹部候補については完全に国籍が問われないと。そうすると、そこに入っていける日本人社員の育成も課題になりそうですね。
ですから、グローバルのプログラムとして将来の社長とTET候補の育成を行う一方、日本独自のダイバーシティ&インクルージョンのプロジェクトとして、女性活躍推進とともに若手の育成に力を入れています。これまで、どうしても日本人の育成は優秀人材であっても抜擢人事は限定的で海外の人に比べて昇進スピードが遅く、現状のままで競わせても勝負にならないので、海外の人に負けないようなチャンスを与える取り組みを始めています。
ある程度キャリアを積んだ時点で海外の人と比べると、日本人はどのあたりが弱いですか。
専門性が低いですね。日本の企業では新卒で入社するとローテーションでいろいろなことを経験させて、全員をゼネラリストに育てる傾向があるでしょう。すると、35歳ぐらいになって、人事部門でグローバル人材育成のマネージャーポジションが空いているというとき、日本人だと「人材育成の経験はまだ3年です。採用も報酬も経験しましたから」という人が多いわけですが、欧米だと35 歳なら「もう10年以上やっています」というのが当たり前です。
キャリアの積ませ方が違うんですね。
日本式と欧米式では同じ年齢での経験値に差がつきますし、最初にマネージャーポジションに就く年齢も欧米式の方が早いですね。
日本人も若いうちから専門性を高めることを意識してキャリアを積ませないといけないわけですね。
将来の経営幹部候補を発掘、育成するグローバルなプログラムについて教えてください。
クリストフが社長に就任した2014年の9月に、これから会社をこう変えていくというトランスフォーメーションの方向性を明確に打ち出し、各部門がそれに沿って行動計画を立てることになりました。すべてがそこから始まっています。人事部門でも、これまで、5年から10年先にTETのメンバーになる候補人材と、もう少し若手の優秀人材、2つのタレントプールを作り、それぞれに応じたグローバルな育成プログラムを構築、実施してきました。現在は、これらがほぼ仕上がってきた段階です。
候補者はどのように上がってくるんですか。世界中に社員がいらっしゃるでしょう。
現場から上げてもらいますが、上げるにあたっては各職場でタレントレビューを行っています。これも日本で、ということではなく、部門ごとにグローバルに行います。たとえば、ファイナンスならファイナンスのグローバルな組織になっていますから。
もう、組織編成もグローバルなんですか。
ですから、部門ごとにタレントレビューを行って、2つのタレントプールに入る人材を見極めてもらい、次はそれをもとにTETの会議でタレントレビューを行います。この会議では社長が中心になって、タレントプールに入っている人材を見直し、入れ替える、あるいは、そもそもの人材の定義をどうするかといったことなどについても討議しています。
入れ替えはどのように行っていますか。
たとえば、2つあるうち上の層のタレントプールに入っている人たちから選抜して、リーダーシップ研修を受けてもらい、次にタフアサインメント(難しい課題)を与えています。この研修にはTETのメンバーが講師として大勢来ていますから、グループ討議なりケーススタディなりで、この人たちをよく観察して、わかっているんですね。さらに、アサインメントにチャレンジした結果を見極めて、残った人は上に行く、そうでない人は新たな若手に入れ替えるという形です。