経営×人事×タレントマネジメント

タレントマネジメントに取り組まれている企業を訪問し、その導入事例をシリーズでご紹介するとともに、
タレントマネジメントを切り口として、人事と経営の関係性や今後求められる人事のあり方を考察していきます。

Vol.2 パフォーマンスとコンピテンシーの2軸による新評価制度を導入し、評価を起点に全社員の成長をサポート

楽天株式会社 グローバル人事部 タレントマネジメント課 副課長 山西 久雄氏
聞き手:中央大学 大学院 戦略経営研究科 客員教授 楠田 祐氏

会社の成長とステージの変化が取り組みの背景
タレントマネジメントについては、貴社ではいつごろからどういう定義、位置付けで取り組んでいらっしゃいますか。
本格的に取り組みを始めたのは2012年の秋ごろからです。前提として、当社が成長し、会社としてのステージが徐々に変わりつつある中で、いままでの人事のあり方から変えていかなければいけないという意識がありました。タレントマネジメントには広義のものと、リーダー開発のような狭義のものがあり、両方が我々の課題となっていますが、立ち上げ当初は人事のあり方の見直しに加えてリーダーの育成ということで、とにかく走り出しました。
どういうことが変わってきましたか。
たとえば人員構成です。以前は全社員のうち、本社で新卒採用した社員より、事業ごとに必要な人材をその都度中途採用した社員の方がずっと多かったんですが、2007年ごろから本社で新卒採用を増やし、いまでは全社員の5割近くが新卒採用した社員です。
もうそんなになりましたか。
そういう背景もあって、人材は各事業に結びついているというより、全社の観点で人材育成していこうという方向に変わってきました。グローバルを含めた事業の成長を支える上で、人材は何よりも重要です。継続的な当社の成長を実現させるために、人事として各社員の成長をしっかりサポートしていくことが、我々がタレントマネジメントに取り組む目的です。また、将来の事業を牽引するリーダーを輩出していくことを目指しており、すべての社員がポテンシャルを最大限に発揮できる環境を整えることが、それを達成することにつながると考えていますので、狭義のリーダー開発のためのタレントマネジメントよりも幅広い活動を含んでいます。
パフォーマンスとコンピテンシーの2軸による新評価制度
具体的な取り組み内容を聞かせてください。
まず、人材育成を行う上で一番大切なことは、評価面談を通じて社員が課題を認識し、次の成長課題を上司と話し合い、実現していくことにあると考えています。そこで、個々の社員の状況がどうなっているのかをまとめて見られるものや共通の尺度をつくろうというところから、2012年の秋に本格的に取り組みをスタートしました。具体的には新しい評価制度を導入し、パフォーマンスとプロセスをまとめて評価していたのを、パフォーマンスとコンピテンシーに分けて評価する形に変えました。そして、コンピテンシー評価、パフォーマンス評価の2軸でそれぞれの社員の成長状況を見ていけるようにしました。
貴社のコンピテンシーはどういうものですか。
当社の人材についての考え方は、「ブランドコンセプト」や「成功のコンセプト」などから成る全従業員の行動指針である「楽天主義」がベースになっています。これを各格付に求める期待行動に落とし込んでいるのがコンピテンシーです。また、部署や事業という枠組みを越え、企業として人材を育成していくためには、人材育成に対する理念や言語を共通化していくことが必要になりますが、コンピテンシーはそこを支えるものであると位置付けています。
評価と育成のフレームをどのように運用されているんですか。
まず、評価を行うグループマネージャーにそれぞれの人のいまの状況や強み、弱みといった定性コメントも含めてフォームに記入してもらいます。次に行うのがそれをレビューするミーティングで、タレントレビューと呼んでいます。当初は我々タレントマネジメント課がこのタレントレビューを各事業のすべての部署と行い、すべてのマネージャーから各社員の強みや弱み、それを踏まえた今後の開発計画について、直接、話を聞きました。
相当な時間がかかったんじゃないですか?
初めてですから本社の人事部としてよく状況を把握することと、コンピテンシーが現場にしっかり定着するよう支援することを目的に取り組みましたが、300人ほどのマネージャーと話をしましたので1年かかりましたね。
1年ですか。すごいですね。
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