ファイザーさんはグローバルな先進企業として知られていますが、日本法人でも、タレントマネジメントについてはかなり以前から取り組まれているのですか。
国内で初めてグローバルの方式に沿って全マネジメントが集まり、タレントプランニングを行うようになってから、もう10年以上になります。今ではシニアマネジャーのポジションに限らず、より対象を広げてタレントプランニングを実施する部署が多くなりました。ファイザーではパフォーマンスと、ラーニングアジリティも含めたポテンシャルを軸として、それぞれのタレントに関するディスカッションを行いますが、最近、変わってきたこととして、本人の意向という要素がかなり大きくなっています。
パフォーマンス、ポテンシャルだけでなく、本人の意向も重視すると。
本人がその仕事をやりたいのか、チャレンジしたいのかということですね。ハイレベルなポジションのサクセッションプランの話をするときも、本人はやる気があるのかということが問われて、「推されたらやるけれど、自発的に手を挙げるような感じではない」というような人は候補から外される流れになっています。
推されたらやる、というタイプの方は日本人には多いでしょう。意識改革が必要になりますね。
ちょうど今、ファイザーでは、何事にも自分が自主性を持って取り組むという「OWNIT! Culture」の醸成をグローバルで推進しているところです。キャリア形成についても、本人のやる気、本人がどういう仕事やキャリアを望んでいるのかを大切に考え、オープンに機会を提供しましょうということで、2013年からグローバルの全ポジションで社内公募を実施しています。日本法人では、今、社員数が5,000名弱ですが、2015年度は500 件ほどの公募件数に対して、応募件数は延べ1,400名近くに上りました。営業職(MR)の定期異動など例外もありますが、基本的にはすべてのポジションが対象です。
応募はかなり多いですね。制度が変わる前は人材登用をどのように決めていたのですか。
社内公募制度(1992年導入)もありましたが一部の実施だけであり、主にタレントプランニングを参考にしながら上司が決めていました。人事もかなりサポートしていましたね。
それが今は変わったわけですね。
前提として、上司が部下としっかりコミュニケーションをとって、一人ひとりの育成プランを毎年作るということを以前から行っています。そのミーティングの中で「あなたはどういったキャリアをめざすの? どこが強みで、伸ばすべきポイントはどこどこでしょう。そこを伸ばすために、こんなことをやっていきましょう」といったことを話していますので、ちょうどマッチした公募があれば上司が勧めたり、本人が応募したいと上司に申し出たりして応募する形です。
そうすると、マネジャーが部下の考えていることをきちんと聞き出し、フィードバックして育てていくといったところが非常に重要になってきますね。
おっしゃる通りです。ファイザーでは、以前からマネジャーの役割が会社にとって大事であるということをグローバルで強く打ち出しています。マネジャーの役割とは、結果を出すこと、将来を確かなものにすること、人材を活用し育成すること、この3つであって、人事が人事権を握ってすべてオペレーションするのではなく、マネジャーがやるのですということを私たちも繰り返し言ってきています。
なるほど。制度も、人事のあり方も、いろいろ変わってきていると。
2015年度からは、今のところ管理職だけですが、評価制度もノーレーティングの仕組みに変えました。
ノーレーティングは、日本ではまだ導入する企業が少ないですね。
今では評点は付けません。評価とは、年1回、評点を付けるためのイベントではなく、1年間、継続的なコミュニケーションの中でコーチングして、フィードバックして、成長してもらい、成果を上げていく、そのプロセスなのだという考え方です。
実際に導入されてみて、いかがですか。
うまくいっていると思います。導入にあたっては、多面的なフィードバックの新しいシステムを取り入れました。事前に、本人が、同僚や部下や仕事関係の人など、この人たちからフィードバックをもらってほしいというリストを上司に出すのです。上司は本人からの希望をベースにフィードバック提供者を決めて、複数の人からフィードバックをもらい、それをマネジャーの観点も入れてフィードバックする。ですから本人の納得感が高くなります。評価のフィードバックに関してアンケートを取ると、マネジャーとのやりとりに関する満足度が髙いですね。