話を聞かないアルバイト……実は店長が原因!?
加藤 時折、店長職の方から「最近のアルバイトは話を聞かない」という嘆きの声を聞きます。でも、よく話を聞いてみると、店長のほうがスタッフと話すことに苦手意識を持っていて、「わかるように話せていない」「聞きたくなるように話せていない」ことがほとんどなのです。つまり、店長のコミュニケーションの取り方に問題があるんですね。例えば、「わかるように話せていない」ケースとは、力量「1」のスタッフに対して、店長が「3」まで対応できると勘違いして話しているような時。当然、「1」の力量しかないスタッフは、店長の話を理解できません。
また、「聞きたくなるように話せていない」ケースは、自分が店長であることを考慮せずに話しているような時です。店長の発言には役職のパワーが働くため、普通に言ったことも命令のように聞こえかねません。このパワーをきちんと考えて発言しないと、スタッフが素直に指示を受け入れられないです。
武笠 ほかにも、「スタッフが楽しそうに働いてくれない」、「言い訳が多い」、「叱ったらふてくされる」といった悩みも、解決のカギとなるのはコミュニケーションをきちんと取れているか否かです。「コミュニケーション」というと大げさですが、もっと気軽な声掛けや伝え方の工夫一つで、状況はガラリと好転するのです。
加藤 今回は、現場で起こりがちなシチュエーションを例に、“言葉”で解決していく方法をご紹介しましょう! 実践していただければ、きっと職場の人間関係や現場のムードが見違えるように変わるはず。さっそく1つ目のシチュエーションから順に見ていきましょう。
●お悩み1 スタッフが楽しそうに働いてくれない
スタッフ 「いらっしゃいませー」(仏頂面)店長 「ちょっと何、その顔。もっと笑顔で働こうよ?」
スタッフ 「だって、オーダーがこんなに来て……とにかく、すごく忙しいんです!」
店長 「た、確かに忙しいけどさぁ……」
<解決法> みんなのテンションを上げる一言をマスターせよ!
加藤 いきなり楽しく働こうと諭しても、スタッフの心には響きません。こんな時は、まず「お客さんを喜ばせよう!」「ミスをなくそう!」などのゴールを設定しましょう。
そして、ゴールに近づくごとに、店長自身が目いっぱい喜ぶこと。注文が山ほど来た時に、店長が「たくさんオーダーが来たね、最高!」と言えると、働く人の気持ちや場の雰囲気はガラッと変わります。
店長自らが楽しいムードの発信源になり、スタッフたちを巻き込んでいきましょう。
●お悩み2 スタッフの褒めどころが見つからない
スタッフ 「おはようございます。本日のメニュー、黒板に書いておきました!」店長「おお、ありがと……」(うわっ汚い字!!)
スタッフ 「? 間違ってます?」
店長「い、いや、アリガトウ……」
<解決法> 「褒める」のではなく「認める」こと!
武笠 スタッフとのコミュニケーションで「褒める」ことは必須ですが、店長にとっては“できて当然”のことが多いため、スタッフを褒めるポイントが見つからないと感じる方も多いようです。そこで、自分を基準にして“褒める”のではなく、相手を基準にして“認める”方式に切り替えましょう。
もしも、以前より上達したことや自発的に動けるようになったことがあれば、完璧でなくても「成長したね」と“認める”ことが大切です。
●お悩み3 叱ったらスタッフがふてくされてしまう
店長「またビールこぼしたの!? 気をつけてって前も言ったよね!?」スタッフ 「すみません」
店長「なんで直せないの!?」
スタッフ 「チッ……サーセン!!」
店長(逆ギレ!?)
<解決法> 叱る時は感情スイッチをOFFにせよ!
加藤 スタッフのミスに腹が立っても、感情をぶつけてしまうのは絶対にいけません。冷静に、間違った行為や行動に対して叱ること。感情のスイッチを「喜ぶ時はON」、「叱る時はOFF」と、しっかりと切り替えましょう。
武笠 また、叱るだけでなく、「なぜそうなったか」を聞くことも大切です。このシチュエーションは実際にあったケースですが、「なぜ何度もこぼしちゃうんだろう?」と一緒に考えてみたら、彼がお盆の持ち方を教わっていなかったことがわかりました。
●お悩み4 スタッフが思った通りに動いてくれない
店長「A卓のお客様、今月よく来てくださるよね。何かサービスしておいて」スタッフ「はい!」
店長「お疲れ! A卓様、どうだった?」
スタッフ「はい! いつもよりスマイルを多めにサービスしておきました!」
店長「そ、そういうことじゃないんだよー!」
<解決法> 思い通りに動けるほうが奇跡! 具体的な指示を出そう
加藤 スタッフが自分の思い通りに動いてくれたら……とは、店長なら誰しも夢見ることですが、現実にはめったにありません。
しかし、一つひとつ「具体的な指示」を出すことで、こちらのイメージ通りに動いてもらえる可能性を高めることができます。例えば「それ、タオルで拭いてもらえる?」というところを「それ、キッチンにある食器用の布巾で拭いてもらえる?」という具合です。
●お悩み5 スタッフが後ろ向き
店長「もっとドリンクのサーブ早くならない? ちょっと遅いと思うんだ」スタッフ 「無理ですよ。これでも精一杯なんです」
店長「せめてビールだけでも……」
スタッフ 「いやー、無理だと思いますけど」
店長「試しもせずに、すぐ無理無理って!」
<解決法> スタッフの「できない」は改善のチャンス!
武笠 スタッフの「できない」には確かにムッとしますが、「お悩み3」の叱られてふてくされるケースと同様、感情を露わにするのは禁物。スタッフが無理だと言う理由を考えると、これまで見えなかった問題点に気づきます。
店長の「してほしい」という要望に対して「できない」と返ってきた時は、お店をもっと働きやすい空間にするチャンスなのです。
コミュニケーションの苦手意識を克服するために、毎日行うべき3つの習慣
加藤 以上、5つのお悩みと解消法をご紹介しましたが、最初からすべてを実践するのは難しいかもしれません。そこで、まずは店長ご自身のコミュニケーションの苦手意識を克服するために、次の3つのことから始めてみませんか?
武笠 また、冒頭でも述べたように、店長の言葉は役職という大きなパワーが働いた状態でスタッフに伝わります。だからこそ、謙虚な姿勢を意識して相手に歩み寄り、なんでも話せる関係を築くことがとても大切です。その最初の一歩となるのが、上に挙げた3つの習慣です。ぜひ実践してみてくださいね!
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