「就活時のセクハラ」の現状とは
就活でのハラスメントとして圧倒的に多いとされているのが“セクハラ”です。「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査(厚生労働省)」によれば、「インターンシップ中にセクハラを経験した人」は30.1%、「インターンシップ以外の就職活動中にセクハラを経験した人」は31.9%と、いずれも3割を超えています。セクハラを受けた経験があると回答した人のうち、3割近い人は不眠を発症し、通院や服薬をするまでになった人も2割近くいます。同調査では「誰からセクハラを受けたか」の調査結果も公表されています。就活中にセクハラを受けた相手で1番多いのは「インターンシップを担当した自社従業員(40%)」で、2位以下を大きく引き離して1位です。次いで、「採用面接担当者」、「企業説明会の担当者」、「OB・OG訪問を通じて知り合った従業員」がいずれも20%となっています。
このような状況の中、就活時のハラスメントの対策は、半数近い企業が「何も実施していない」と回答しています。企業規模が大きくなるほど対策している企業は微増してはいますが、対策の有無は企業規模で大きくは異なりません。
就活生は従業員ではありませんが、就活時のセクハラを放置すると、企業はいくつものリスクを抱えることになります。ご存じのとおり、近年ではSNS等で情報が簡単に広まります。就活時にセクハラを受けたと広まれば、企業イメージの低下、求人への応募数の減少にも繋がり、社会的信用を失うリスクが高まることは想像に難くありません。
また、ハラスメントを受けたことへの損害賠償請求のリスクもあります。刑事責任を問われるリスクもあるでしょう。2023年7月からは刑法改正により「不同意性交等罪・不同意わいせつ罪」が新設されたことも、記憶に新しいことと思います。
このように、「相手は就活生だから」、「まだ自社の従業員ではないから」と就活時のハラスメントに何の対策も行わないことは、様々なリスクを孕んでいるのです。
「就活時のセクハラ」を防止するためにできること
では、就活時のセクハラについて、どのような対策ができるでしょうか。ここからはその一例を紹介します。●行動指針の策定・研修の実施
前述の調査結果からもわかる通り、就活時のセクハラは人事部門だけでなく、現場の従業員と接した時に起こりやすいです。そのため、人事部門だけが気を付けていても対策しきれません。社内で行動指針を策定し、就活生と関わる従業員には「就活時に注意すべきこと」などの研修を受けさせる対策が効果的です。例えば、「就活生と関わる際のルール」として以下のようなことを定めている企業があります。
●面談時には事前に人事部へ届け出をし、許可のない面談は禁止
●就活生とのやりとりにLINEやSNSの利用禁止
●OB・OG訪問マッチングアプリの利用は禁止
このようなルールや、注意が必要な言動、企業としての指針をまとめ、社内に周知します。
また、就活生と接する従業員には、就活時のハラスメントについての研修を実施する企業も多いです。研修では、「どういうときにハラスメントが起こりやすいか」や、今回紹介したような統計などもあると、自分事として捉えてもらいやすいです。加えて、不適切な言動の例を挙げると、どのような言動が不適切なのかをイメージしやすくなります。
今回はセクハラを取り上げていますが、パワハラ対策の内容も盛り込むとより良いでしょう。こういった研修を受けていない従業員は就活生と関わらせない、という企業もあるくらいです。
就活生向けの対策としては、相談窓口の案内を行う企業が最も多いです。また、説明会やインターンシップ、面接や面談の前に、自社の就活ハラスメントの指針やルール、対策等を就活生に伝えている企業もあります。事前に伝えておくことで、就活生の安心感にも繋がりますし、万が一ハラスメントを受けたときに相談窓口へ相談してもらいやすくなります。
●個人情報を閲覧できる人を限定する
エントリーシートや履歴書には、住所、メールアドレス、電話番号などを記載する箇所がありますが、これを閲覧できるのを人事部など一部の人のみにしている企業もあります。OB・OG訪問や面接時にはこれらの情報は不要です。個人的な連絡ができないよう、連絡先になり得る情報は人事部以外に公開されない仕組みを作るのも効果的です。いかがでしたか。職場のハラスメント対策は義務化されていますが、就活時のハラスメント対策も進めていきましょう。
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