「プレゼンテーション」とは、企画や意見を効果的に説明し聞き手の理解を得やすくするためのコミュニケーション・テクニックだ。営業やマーケティング、開発、管理など社内のどの部署であっても不可欠なビジネスの基本スキルと言って良い。ただ実際には、通り一遍の内容を落とし込んだリ、資料に書かれたテキストを読み込んだりしているだけのケースも見かける。単に伝えるだけでは意味がない。相手から共感や納得を引き出し、アクションへと導いていかなければ、ビジネスにはつながらないからだ。人事担当者に、いかに優秀なプレゼンターを育成するかが問われているのはそのためだ。本稿では、その第一歩としてプレゼンテーションの意味や目的、コツなどを解説していく。
「プレゼンテーション」の意味や目的とは? 構成の作り方や話し方のコツも解説

「プレゼンテーション」とは?

「プレゼンテーション」とは、多くの人に向けて伝えたい、あるいは売り込みたいテーマや企画、商材の魅力を効果的・効率的に説明するための技術・技法である。具体的には、聞き手の立場に立って要望やニーズを認識した上で、求めている情報を伝達し、何らかの行動を促すことを意味する。英語では「presentation」と表記し、「提示、表現、紹介」などと訳される。一般的には、ディスプレイやプロジェクターを用いて説明することが多いが、参加者が少ない場合にはノートパソコン上で行うこともありえる。

●「プレゼンテーション」の語源

「プレゼンテーション」は、贈り物を意味するプレゼント(present)という言葉に由来する。それも、一方的に渡して終わりではない。相手の満足や共感を引き出す工夫が求められる。

●「プレゼンテーション」の目的

プレゼンテーションの目的は、自分の意見や考えを伝えるだけではない。聞き手に行動を促す、聞き手の行動を変容させることである。例えば、自社の商品を購入してもらう、サービスを利用してもらうなど、行動につなげることに意味がある。そのためにも、一方的に話して終わりであってはいけない。聞き手の表情や反応を読み取り琴線に触れるよう話を進めていく必要がある。

●「発表」との違いについて

「プレゼンテーション」と発表は、似ていると勘違いされがちだ。だが、実際には異なる意味を持っている。「プレゼンテーション」は聞き手に情報を届ける、理解してもらうだけに留まらない。聞き手が何を欲しているのか、何をしたいのかを考えた上で意図する内容を伝え、最終的に行動に結びつけてもらわないといけない。これに対し、発表は聞き手に行動を求めない。理解してもらうことがゴールとなってくる。話し手の一方的な情報発信となっても何も問題はない。

効果的な「プレゼンテーション」のコツ

次に、「プレゼンテーション」を効果的に行うためのコツを紹介していく。

●聞き手の課題や要望を把握する

まずは、聞き手を知ることが重要だ。「どんな課題や要望を持っているのか」、「何に悩んでいるのか」を事前に把握するようにしたい。それがわかれば、相手の行動を引き出しやすくなる。

●状況を正しく分析する

次は、聞き手の情報をもとに今聞き手がどんな状況にあるのか、どのような問題に直面しているのかを分析する必要がある。それを踏まえて、聞き手の課題を解決へと導く手段が何かを考えてみよう。

●解決策を明確に提案する

「こうすれば、その問題を解消できる」という提案を明確に示すことが、聞き手の気を引くために重要だ。「コスト」と「スケジュール」をワンセットにして考え、できるだけ具体的に提示したい。ここが曖昧だと、聞き手は行動を起こしにくい。

●雰囲気づくりに気を配る

良い解決策が見つかったとしても、それを単純に伝えるだけでは相手の納得を得ることができない。ましてや、行動を起こしてもらえることもないだろう。やはり、「プレゼンテーション」の内容が聞き手にしっかりと受け入れてもらえていないといけない。そのためにも、その場の雰囲気づくりが重要になってくる。例えば、最初に切り出す際のネタや話すスピード感にも気を配るようにしたい。

●行動することによるベネフィットを提示する

聞き手を行動に導くには、「プレゼンテーション」を通じてベネフィットを具体的に提示しなければいけない。自分にとってどのようなメリットがあるかがわからないと、その情報はスルーされてしまうからだ。できれば、「プレゼンテーション」の冒頭で聞き手に伝えるようにしたい。そこで興味を持ってもらえれば、グングン入り込んできてもらえるはずである。

●ストーリーテリングを活用する

マーケティング手法のひとつにストーリーテリングというものがある。自らの主張に体験談やエピソードをまじえてストーリー化することで、説得力やメッセージ性を持たせるという手法だ。これをプレゼンテーションの際にも活用し、聞き手の感情に訴えかけることで強い印象を与えることができる。

●資料はシンプルで分かりやすく

ともすると、資料に膨大な量の情報を織り込んでいるケースを見かける。文字や装飾が多すぎると、聞き手の視線が彷徨ってしまい逆効果となる。あくまで必要最小限が原則。重要な項目に限定したい。最も伝えたいことは何かを常に頭に置いて、わかりやすさを重視した資料作りを進めるようにしたい。

●質疑応答の時間を設ける

「プレゼンテーション」の最後に、質疑応答の時間を設けることも重要だ。「プレゼンテーション」の内容に疑問を残したままでは、聞き手の理解度が下がってしまうからだ。できれば、想定問答集を事前に用意しておきたい。回答がスムーズにいくはずである。想定した通りの質問が来たら、関係者にオーソライズした信頼性の高い回答ができるのは言うまでもない。

「プレゼンテーション」の構成の作り方

続いて、「プレゼンテーション」の構成の作り方について解説したい。5つのフレームワークを紹介しよう。

●基本形(序論・本論・結論)

まず、最初は序論・本論・結論という、オーソドックスなフレームワークである。最初に序論として、プレゼンテーションの内容を簡単に抑えておく。次が本論だ。ここでは、データなどを駆使してプレゼンターの意図を裏付ける内容を伝える。そして、最後が結論だ。「プレゼンテーション」で最もアピールしたいポイントをコンパクトに説明する。このパターンは、聞き手にとっても馴染みがあるので安心感が得られやすいのがメリットだ。
基本形(序論・本論・結論)の図

●PREP法

文章の構成を考える上で基本となるフレームワークとしては、PREP法がある。これは、「Point→Reason→Example→Point」という4つのフローで進んでいく。最初に、「プレゼンテーション」の結論(Point)を伝える。次に、その結論を導く理由(Reason)を述べる。三番目に、その理由の根拠となる具体例(Example)を指し示す。そして、最後にプレゼンテーションで伝えたい結論(Point)を再度述べて総括するという流れだ。PREP法のメリットは、話しの流れがスムーズに行くことである。最初に伝えたいことを明確にすることで、理由や根拠を説明しやすくなるかだ。自ずと、聞き手の納得感を高められる。
PREP法の図

●DESC法

DESC法とは、問題解決型の「プレゼンテーション」に役立つフレームワークである。こちらは、「Describe(描写)→Express(説明)→Suggest(提案)→Consequence(結論)」という4つのフローに分かれている。最初に、客観的な事実や状況を述べる。次に、客観的な事実や状況に対するプレゼンターの主観的な意見を語る。続いて、解決に向けた施策や対処法を提示する。最後が、それらによってどのような成果を得られるかを説明する流れになっている。
DESC法の図

●SDS法

SDS法とは、「Summary→Details→Summary」の順番で考えるフレームワークだ。まず要点(Summary)を述べる、次に詳細(Details)を話す。そして、最後に要点(Summary)を伝えて全体をまとめる。フローが少ない分、「プレゼンテーション」の時間が短い場合に向いている。
SDS法の図

●QC法

QC法とは、問題解決に向けた手法の一つだ。流れとしては以下のようになる。

▼テーマを決める
▼テーマについて、想定される問題をリストアップする
▼どの程度改善させるか、目標を決める
▼問題の原因を特定する
▼それぞれの改善案を立案する
▼効果見込を検証する
▼改善施策を周知し、実行する

説得力を高める話し方のポイント

最後に、「プレゼンテーション」において説得力のアップにつながる話し方を4点ほど取り上げる。

●適切な声の大きさ、速さ、トーンで話す

聞き手は、「プレゼンテーション」の内容と同じくらいプレゼンターの声の大きさや速さ、トーンを気にしている。当然ながら、声は大きく、落ち着きがあって、ゆったり目に話した方が良い。なぜなら、聞き手に負担が掛からないからだ。聞くという行為は、相手に負担を強いることを忘れてはいけない。

●適度な間を設ける

聞き手にとって辛いのは、プレゼンターが一方的に話し続けることである。それでは、聞き手は緊張感、集中力が維持できない。その時点で話を聞くことをシャットアウトすることもあるかもしれない。その点、優れたプレゼンターは聞き手と目線で会話をしながら、適度に間を入れている。聞き手もリラックスできるので、話しに入っていきやすくなるからだ。

●身振り手振りを交える

「プレゼンテーション」の場では、身振り手振りを交えたパフォーマンスもお勧めしたい。ジェスチャーを交える、アイコンタクトをするのでも良い。体を動かすことで、相手が感じる印象度が大きく変わってくる。

●気持ちを込める

「プレゼンテーション」の場では、どれだけ本気で伝えたいと思っているのかというプレゼンターの本気度が問われる。それがあればあるほど聞き手は感情を動かされる。気持ちを込めて話す。シンプルに聞こえるかもしれないが鉄則だ。原稿を棒読みするようでは、期待する成果は得られないと言って良いだろう。

まとめ

本記事を通じて、「プレゼンテーション」の目的が聞き手に共感をもたらし、行動変容に結びつけることだと理解していただけたであろう。人事としても、プレゼンテーションの穂来の目的についてさまざまな機会を活用して社員に啓蒙を図っていただきたい。実際に、「プレゼンテーション」の研修を実施するとなると、主要な対象者としてまず思い浮かべるのは、「プレゼンの経験が少ない」、「プレゼンに苦手意識がある」といった社員になるであろう。だが、実は「プレゼンテーション」慣れしている社員も学ぶべき点が多い。なぜなら、ある程度の成功体験を積み重ねると自分のスタイルや進め方に満足してしまうからである。これでは、それ以上の進歩は期待できない。なので、「プレゼンテーション」研修を行う際には、受講者を幾つかのパターンに分けてみるのも良いアイデアと言えるだろう。

よくある質問

●プレゼンで大事なことは何?

「プレゼンテーション」を効果的に行うためには、以下のポイントに気を付けたい。

・聞き手の課題や要望を把握する
・状況を正しく分析する
・解決策を明確に提案する
・雰囲気づくりに気を配る
・行動することによるベネフィットを提示する
・ストーリーテリングを活用する
・資料はシンプルで分かりやすく
・質疑応答の時間を設ける

●プレゼンの話し方のコツは?

「プレゼンテーション」において説得力を上げるためには、以下の4点に気を付けると良い。

・適切な声の大きさ、速さ、トーンで話す
・適度な間を設ける
・身振り手振りを交える
・気持ちを込める
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