ビジネスでは、日々の報告・連絡、現状把握や将来の予測など、さまざまな場面で「各種の情報を正確かつ過不足なく整理し、書類としてまとめ、相手に伝える」ことが求められる。その際に意識すべき要素が「5W1H」だ。本稿では情報の整理・伝達に役立つフレームワークとしての「5W1H」について、その内容や活用方法を解説する。
「5W1H」とは? 意味やビジネスでの使い方、例文を簡単に解説

情報伝達に不可欠なフレームワーク「5W1H」とは?

「5W1H」とは、情報や物事を整理・伝達する際に考慮すべき、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」という6つの要素を指す。

〇When ……いつ
〇Where……どこで
〇Who……誰が
〇What……何を
〇Why……なぜ
〇How……どのように

この「5W1H」を意識しながら伝えるべき内容を整理し、文章や話を組み立てることで、正確な情報伝達や円滑なコミュニケーションが可能になるとされている。学生時代に国語(文章の作成術)や英語の授業で習ったという人も多いのではないだろうか。

必要な情報を正しく相手に伝えることができないと、認識のズレが生まれ、トラブルを呼ぶ。仕事の現状や将来的な目標などを「5W1H」に基づいて整理し報告することは、何より重要だと考えるべきなのである。

ビジネスで「5W1H」を活用する目的とメリット

「5W1H」は、正確な情報伝達以外にも多くのメリットをもたらしてくれる。

●問題の原因発見と解決策・改善策の立案

トラブル、失敗、業務が円滑に進まないなど、各種のネガティブな問題と対峙する際にも「5W1H」は有効となる。その事態・状況が「いつ」、「どこで」、「誰のもとで」、「なぜ」、「どのように」発生した(している)のかを整理することで、原因や課題が浮かび上がってくることも多い。原因・課題が特定できれば、その対策も打ちやすくなるだろう。

●ビジネス戦略の立案と軌道修正

ある商品を販売する際、「いつ……販売時期・期間」、「どこで……地域や販売チャンネル」、「誰に……ターゲット層」、「どのように……販促施策の方法」など、「5W1H」を意識してマーケティング戦略を立案することが重要だ。もし売れ行きが芳しくない商品があれば、これも「5W1H」の活用によって「そもそもターゲット層が明確ではなかった」などと原因が明らかとなり、論理的に軌道修正を実施できるようになるだろう。

●新規事業や施策の創出

商品の売れ行きが好調でも、あるいは事業・業務が円滑に進んでいたとしても、現状を「5W1H」で整理してみたい。商品の特性、売れる時期、顧客の動向、従業員の行動特性などが可視化されるはずだ。それをもとに、より強化すべきポイント、他の商品やビジネスへの応用など、新しいアイデアが生まれることもある。

「5W1H」のそれぞれの意味

5つの「W」と1つの「H」とは。改めて「5W1H」が指し示す6つの要素について、その意味を整理してみよう。

●When…いつ(時間、時期、期間)

「When」は時間を意味する要素であり、単に日時だけでなく、季節、特定のイベントの開催時期、タイミング、「いつからいつまで」という期間・日程、「いつまでに」という期限、「何年後」といった時間経過なども含まれる。

会議・待ち合わせなどにおいては、時刻や「何時から何時」といった「When」を相手に伝えることが必須となる。また時間・時期を明示することで、その間に、あるいはそれまでにやらなければならない仕事も明確になる。イベントや特定業務がおこなわれる季節がわかれば、その季節特有の問題に対する準備も怠りなく進めておけるだろう。

●Where…どこで(場所、空間、範囲)

「Where」は場所を意味する要素であり、特定の部屋・施設・地域・地方のほか、「どこからどこまで」といった範囲や環境(暑いところ、子どもが多い施設など)も含む。物理的に存在する場所だけでなく「web上」や「フランチャイズを通じた販売チャンネル」など、仮想・概念的な空間も該当する。

会議・待ち合わせに際しては場所の明示は必須である。また「Where」を明確にしておくことで、現在地からそこまでの距離、移動方法、所要時間、規模感、環境、空間のイメージなどを共有することが可能となる。

●Who…誰が(人物、組織、担当者、対象者)

「Who」は人物を意味する要素であるが、特定の個人だけでなく、企業・組織・チーム、役割、担当者、関係性など、ヒトに関するものを幅広く含んでいる。

取り引きの相手先企業や担当者、商品やサービスの対象となる顧客(ターゲット層)、事業の推進役、会議に出席する人の範囲など、「Who」を明確にしておくことは重要な手順だ。「Who」が明示されることで、配慮すべき事柄、連絡すべき相手、責任の所在なども明確となるのである。

●What…何を(対象物、商品、サービス、行動)

「What」はモノ(対象物、製品、商品)を意味する要素だが、物理的に存在するモノだけでなく、コト(サービス、業務)や議題、コンセプトといった概念も含まれることになる。

「What」に関する情報を整理・伝達する場合には、相手との認識のズレを防ぐため、製品名や製品番号、サービス名、業務内容、会議の議題などを、極力具体的かつ正確・詳細に明示しておくことが重要といえる。

●Why…なぜ(理由・原因・背景)

「Why」は、ある状況や結果へと至った原因・背景、ある行動を取る(取らなければならない)理由を意味する要素である。

とりわけトラブルやアクシデントが発生した際には「なぜ」そうなったのか、理由・原因・背景を明確にすることで問題が浮かび上がり、対策や再発防止策を考えるのに役立つはずだ。また業務やプロジェクトについて「何のために」それをする必要があるのか、理由・目的を明確にし、携わる人たちが意識や行動規範を共有することで、円滑な進行が実現するだろう。

●How…どのように(方法・手段・状態)

「How」はある行動・施策を進める際の方法・手段のほか、特定の状況・状態を意味する要素である。「どのような」販売方法で売り上げを伸ばすか、「どのような」問題解決策を整備するのか、「どのような」状態の組織を作り上げたいのか、なるべく具体的に明示することによって、そのための準備や取り組み、行動指針も明らかとなる。

「5W1H」フレームワークの基本的な使い方

では「5W1H」フレームワークを用いて情報をどう整理し、どう伝えるか。その基本的な作法について見ていこう。

(1)「5W1H」に基づいた情報の書き出し

まずは伝達・報告すべき事項を「When」~「How」の6要素に分けて書き出すことが作業の第一歩となる。

【事例1:会議への招集】
〇When(いつ)…………明日の午前10時~正午まで
〇Where(どこで)………第1会議室にて
〇Who(誰が)…………ABC開発プロジェクトに携わる社員13名が集まり
〇What(何を)…………先週末時点での進捗状況と現時点での課題について
〇Why(なぜ)…………関係者全員で共有するために
〇How(どのように)…報告したうえで今後の目標を設定する


【事例2:納品遅れの報告】
〇When(いつ)…………本日午前11時
〇Where(どこで)………サプライ関連の定例ミーティングにおける報告で
〇Who(誰が)…………中国担当の鈴木氏・佐藤氏より
〇What(何を)…………電源関連の部品A001~A003が
〇Why(なぜ)…………現地悪天候のため出荷不可となり
〇How(どのように)…日本への到着が3日遅れる


こうして「5W1H」フレームワークに則って整理することで、状況が明確となり、情報の洩れや伝達ミスを防止できる。伝えられた側には、いつまでに何を用意しなければならないか、どんな対策を打つべきか、誰に連絡・確認しなければならないかが明確となり、その後の業務も円滑に進むだろう。

(2)「5W1H」のアレンジ・順序の変更

「When」~「How」はあくまでも基本的な順序であり、伝達すべき事柄の意味合いや重要性によっては「5W1H」の順序を変更することも考えられる。

たとえば、あるトラブルの発生場所が重要であれば「Where」から、問題の内容・大きさ・影響を重視するなら「What」からなど、より確実・印象的に伝えたい要素を最初に伝えるという工夫も、ひとつの方法論といえる。

いずれにせよ肝心なのは、正確かつ過不足なく情報を伝達することである。まずは6要素を書き出したうえで、重要性に配慮しながら話す内容・順序や報告書の書き方をアレンジするのかベターだろう。

ビジネスシーンの「5W1H」活用例と注意点

ビジネスの現場では、常に「5W1H」を意識して言動を整理することが重要となる。ここでは、さまざまなシーンにおける「5W1H」の活用例と注意点について考えてみよう。

●部署内でのコミュニケーション

部下・後輩・同僚に対し、仕事に関する指示や依頼を伝える際には、何よりも「5W1H」の活用に気をつけるべきだ。いつまでに、何を、どうして欲しいのかなど、必要事項を漏らさず伝えることがトラブルを防ぎ業務円滑化を実現させることになる。

逆に「5W1H」フレームワークを無視した不十分な伝達は、トラブルが発生する可能性を高めてしまう。「When=いつまでに」が欠けた指示では期限までに作業が完了しないこともありうる。「Why=何のために」が伝わらないと、目的達成には不要な作業が進められてしまう恐れがある。そうしたトラブルを防止するためにも「5W1H」を活用したコミュニケーションを心がけるべきなのである。

●各種書類(報告書・企画書・提案書・稟議書など)の作成

報告書などには、なるべく具体的に伝達事項を記載しなければならない。企画書・提案書・稟議書では、プロジェクトの実施や出費がどうしても必要であることを上長に納得してもらわなければならない。そうした“伝えるべきことがちゃんと伝わる”文書を作成する際の指針となるのが「5W1H」フレームワークだ。

たとえば新製品の企画・開発を進めたい場合、「What=どんな特徴の製品」が、「Who=どのような人たち」に、「Why=どんな理由」で求められているのか、「When=いつまで」に市場へと投入すべきかなどがしっかりと整理されていないと、相手の納得感は得られず、ゴーサインを出すための判断材料としても不十分なものとなる。

また十分な具体性を維持し、伝達事項に漏れのない報告書であれば、改めて不明点を問い合わせる、その問い合わせに答える、といった手間もかからずに済み、業務の流れが阻害されることは少なくなるはずだ。

●事業戦略の立案

マーケティングやサービス展開などの戦略立案においても「5W1H」を活用すべきである。その際には「5W1H」のアレンジ・順序の変更を考慮しなければならないこともある。

たとえば自身が担当する「What=商品・サービス」があり、「When=販売時期」が固定されていて、そのうえで販促イベントを開催したい場合には「Where=場所」や「Who=ターゲット」、「How=イベントの具体的な内容」に工夫を盛り込み、説得力に富むプランニングを提案しなければならない。

旅行商品/パッケージツアーで「Where=地域・都市」が固定されているケースでは、「When=時期(夏なのか冬なのか、祭などのイベント開催時期なのか)」、「Who=ターゲット(年配の夫婦か若い女性の一人旅か)」、「How=旅行の具体的な内容」、「Why=旅の目的」などにこだわった企画が求められる。

商品の特性や事業の目的・ターゲットが異なれば、おのずと「How」は変化するし、伝達・説明すべき情報の順序や重みづけも変わると考えるべきである。

●思考・行動の整理

「5W1H」フレームワークは、事業やプロジェクト、組織、自分自身の現状を客観的に整理することにも役立つ。「5W1H」に基づいて現状を整理することで、これまで気づかなかった問題点やセールスポイントが可視化され、業務改善、戦略の見直し、新たなアイデアの創出などにつなげることも可能となるだろう。

「5W1H」の発展形…「5W2H」、「5W3H」、「7W2H」、「7W3H」

「5W1H」をさらに発展させて、下記のような7~9要素で情報や物事を整理する方法論もある。

●「5W2H」

「5W1H」に「How Much(いくら)」を追加したものが「5W2H」だ。

日常業務や事業・プロジェクトでは、予算・費用、売り上げ、利益など、金額に関する数値を明確化しておかなければならないケースも多い。その際には「5W2H」を活用することになる。これにより、一定の売り上げ・利益を実現するための戦略、商品の価格設定、商談、値下げ交渉などが円滑に進む可能性が高まるはずだ。

●「5W3H」

「5W1H」に、上記「How Much(いくら)」と、さらに「How Many(どれくらい)」を加えた考え方が「5W3H」である。

ビジネスでは、生産量・出荷量、仕入れ量、在庫、商品のラインナップ数、人数など、分量や規模が重要となる場面も多い。その際には「How Many(どれくらいの量)」も含めて情報を整理することになる。

●「7W2H」/「7W3H」

「Who」には、「誰が」という行動の主体だけでなく、「to Whom(誰に)」という行動の対象者、あるいは「with Whom(誰と)」という共同作業者が含まれる。また数ある選択肢の中から「Which(どれ、どちら)」が重要になるシーンも考えられる。これらを明確に分けて考えるとすれば「7W2H」や「7W3H」といったフレームワークも可能となるわけだ。

まとめ

さまざまな情報を報告・伝達するためには、まずは情報を過不足なく整理する必要がある。頭の中で考えているだけでは上手く整理できないことも多いため、ぜひとも意識し活用したいのが「5W1H」である。さまざまな情報を「5W1H」に基づいて整理・構成することで、伝達ミス・伝達漏れ、相手との認識のズレ、混乱、不明点の問い合わせ・回答による時間のロスなどを防止できる。

ただし、状況によって伝えなければならない要素、伝えるべき項目の数、優先度は異なり、伝える情報が多すぎると報告や会話が冗長・散漫になる恐れもある。シチュエーションに応じて情報を省略したり、逆に追加したりといった工夫も必要だ。

いずれにせよベースとなるのは「5W1H」であるため、まずは基本となる「When」~「How」の6要素を整理したうえで、必要に応じて要素を省略・追加していくのがいいだろう。全員が「5W1H」を意識した報告・伝達・思考を心がけるようになれば、円滑なコミュニケーションが実現し、同じ目標・価値観・目的意識を共有することもできる。新たなビジネスへの可能性も広がるため、ぜひとも身につけたいフレームワークである。

よくある質問

●5つのWと1つのHとは?

情報や物事を整理・伝達する際に考慮すべき「5W1H」の要素。「When(いつ)」、「Where(どこで)」、「Who(誰が)」、「What(何を)」、「Why(なぜ)」、「How(どのように)」という、5つの「W」と1つの「H」で構成されている。

●「5W1H」の欠点・デメリットは?

「5W1H」は、6つの要素を活用して情報を詳細に伝えることができる一方で、その分、情報量が多くなる。コミュニケーションの際には、説明に時間がかかったり、冗長になったりする欠点・デメリットもある。

●「5W1H」はなぜ重要?

「5W1H」を意識して文章や話を組み立てることで、正確な情報伝達や円滑なコミュニケーションが可能になるとされている。情報の整理や伝達の際に必要な情報を正しく相手に伝えることができないと、認識のズレが生まれ、トラブルを呼んでしまう恐れがあるため、重要だと考えるべきである。
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