令和6年4月に障害者雇用促進法改正による施行があります。令和4年にも法律が改正され、令和5年から順次施行がはじまっていますが、さらに令和6年度からは、障害者法定雇用率が2.5%に引き上げられるとともに、週所定労働時間10時間以上20時間未満の算定特例が適用されたり、納付金助成金が新設・拡充されたりします。これらの変更点について解説していきます。
【令和6年度 障がい者雇用の改正まとめ】法定雇用率引き上げ、新設・拡充する助成金などを解説

障害者雇用率が2.5%に引き上げ

障害者雇用促進法が令和4年度に改正され、昨年度から順次施行されています。これに伴い令和6年4月から障害者法定雇用率が現在の2.3%から2.5%に引き上げられます。また対象事業主の範囲が従業員43.5人以上から40人以上の企業に広がります。

障がい者を雇用しなければならない対象事業主は、毎年6月1日時点での障害者雇用状況のハローワークへの報告することが義務づけられています。また、障がい者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」の選任が努力義務とされています。

20時間未満の短時間雇用がカウントできる

これまでは障がい者を雇用していても、週所定労働時間が20時間以上でないと障害者雇用率としてカウントすることができませんでした。しかし、令和6年4月からは、障がい特性により長時間の勤務が困難な障がい者の雇用機会を拡大するために、特に短い時間(週所定労働時間が10時間以上20時間未満)で働く重度身体障がい者、重度知的障がい者、精神障がい者の方の雇用は、1人の雇用につき0.5人と算定できるようになります。
障害者雇用率の算定

障害者雇用率の算定(図:筆者作成)

なお令和5年度まで、10時間以上20時間未満で働く障がい者を雇用する事業主に対しては、障がい者雇用のカウントができなかったために特例給付金が支給されていましたが、障害者雇用率としてカウントできるようになった令和6年4月からは廃止となります。

障害者雇用調整金・報奨金の支給方法の見直し

障害者雇用納付金制度は、障がい者を雇用する上で、事業主の経済的負担を調整し、全体の雇用水準を引き上げることを目的とした制度です。法定雇用率の達成や一定数以上の障がい者雇用を行った企業とそうでない企業との間に生じる経済的負担の差を調整するため、障害者雇用調整金や報奨金などが設けられています。

この雇用率達成企業に支給される障害者雇用調整金・報奨金が令和6年4月以降、超過人数分の支給額について引き下げられます。障害者雇用調整金及び報奨金について、事業主が一定数を超えて障がい者を雇用する場合、その超過人数分の支給額の調整が以下のように行われます。

・障害者雇用調整金の支給調整
支給対象人数が10人を超える場合には、超過人数分の支給額を23,000円とする。

・報奨金の支給調整
支給対象人数が35人を超える場合には、超過人数分の支給額を16,000円とする。


支給額の調整については、令和6年度の実績に基づいて、令和7年度の調整金や報奨金の支払いから適用されます。

障害者納付金助成金の新設・拡充等

障害者雇用納付金制度で徴収された納付金は、障害者雇用の助成金として企業に還元されています。令和6年度からは、新たに以下の助成金が新設されることになりました。

【中高年齢等障がい者(35歳以上)の雇用継続を図る措置の助成金】

加齢による変化と障がいに起因する就労困難性の増加が認められ、継続雇用のために業務遂行上の課題を克服する必要な支援措置と認められる場合に支給される助成金です。

対象障がい者:35歳以上で雇用後6か月以上の障がい者
支給限度額、支給期間等:障害者作業施設設置等助成金・障害者介助等助成金の一部・職場適応援助者助成金で、加齢による変化に対応したものとなり、支給額、期間等は各助成金により異なります。

【障害者雇用相談援助助成金】

認定事業者と労働局等による雇用指導が一体となり、障がい者の雇入れや雇用管理に関する相談援助事業(障害者雇用相談援助事業)を利用した事業主に支給される助成金です。(※助成金は認定事業者に支給)

対象障がい者:身体障がい、知的障がい、精神障がい
支給限度額:
・利用事業主に対して障害者雇用相談援助事業を行った場合60万円(中小企業または除外率設定業種事業主は80万円)
・上記の相談援助事業後、利用事業主が対象障がい者等を雇い入れ、かつ、6か月以上の雇用継続を行った場合。対象障がい者1人につき7万5千円(中小企業または除外率設定業種事業主は10万円)4人までが上限
支給回数:利用事業主1社につき1回

【障害者職場実習等支援事業】

職場実習の実習生を受け入れた場合に支払われる助成金です。

対象障がい者:身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がい、高次脳機能障がい、難病等
支給限度額
・職場実習または職場見学等を行った日数に日額5千円を乗じて得た額
※同一年度内の支払い上限額はそれぞれ50万円まで (もにす認定事業主はそれぞれ100万円まで)
・ 実習指導員謝金 1日の支援時間に2千円を乗じて得た額
・ 保険料 実費

【健康相談医の委嘱助成金】

障がい者の雇用管理のために必要な専門職(医師)の配置 または委嘱する場合に支払われる助成金です。
対象障がい者:身体障がい、知的障がい、精神障がい(対象障がい者が5人以上必要)
助成率:対象費用の4分の3
支給限度額:委嘱1人1回につき2万5千円まで、年30万円まで
支給期間:10年間

【職業生活相談支援専門員の配置又は委嘱助成金】

障がい者の雇用管理のために必要な専門職(職業生活相談支援専門員)の配置 または委嘱する場合に支払われる助成金です。
対象障がい者:身体障がい、知的障がい、精神障がい(対象障がい者が5人以上必要)
助成率:対象費用の4分の3
支給限度額 :
配置の場合、1人につき月15万円まで。
委嘱の場合、1人1回につき1万円まで、年150万円まで
支給期間:10年間

【職業能力開発向上支援専門員の配置又は委嘱助成金】

障がい者の職業能力の開発および向上のために必要な業務の担当者(職業能力開発向上支
援専門員)の配置または委嘱する場合に支払われる助成金です。
対象障がい者:身体障がい、知的障がい、精神障がい(対象障がい者が5人以上必要)
助成率:対象費用の4分の3
支給限度額 :
配置の場合、1人につき月15万円まで。
委嘱の場合、1人1回につき1万円まで、年150万円まで
支給期間:10年間

【介助者等資質向上措置に係る助成金】

障がい者の介助の業務を行うスタッフの資質の向上のために支払われる助成金です。
対象介助者等:職場介助者、手話通訳・要約筆記等担当者、職場支援員、職業生活相談支援専門員、職業能力開発向上支援専門員
助成率:対象費用の4分の3
支給限度額:1事業主あたり年100万円まで

【中途障害者等技能習得支援助成金】

中途障がい者等の職場復帰後の職務転換後の業務に必要な知識・技能を習得させるための
研修の実施に関する助成金です。
対象障がい者:身体障がい者、精神障がい者(発達障がいのみは対象外)、高次脳機能障がい、難病等
助成率:対象費用の4分の3
支給限度額:対象障がい者1人につき年20万円まで (中小企業事業主は30万円まで)
支給期間:1年間


※助成金を支給するためには定められた要件を満たす必要があります。詳細については、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページで確認してください。

来年度以降の障がい者雇用関連の施策予定

・令和7年度 障害者除外率の引き下げ
除外率制度は、ノーマライゼーションの観点から、2002(平成14)年法改正により2004(平成16)年4月に廃止が決定しました。現在は経過措置として、当分の間、除外率設定業種ごとに除外率を設定するとともに、段階的に除外率を引き下げています。令和7年度には、この除外率が除外率設定業種で10ポイント引き下げられます。除外率が10%以下の業種は、令和7年度4月以降、除外率制度の対象外となります。

・令和8年度 障害者雇用率2.7%に引き上げ
障害者雇用率が2.7%に引き上げられます。これにより従業員37.5人以上の企業が対象となります。
障がい者雇用は、毎年障がい者雇用数、雇用率ともに上昇しています。障害者法定雇用率を算出する計算式では、常用労働者数と失業者、障がい者の常用労働者数と失業者によって決まり、雇用率は5年ごとに見直しが行われています。この傾向から見ると、障害者雇用率の引き上げは今後も続いていくことが予想されます。

障害者雇用率を達成するための障がい者雇用を行なっていると、持続的に障がい者雇用を行なっていくことが難しくなります。障がい者も人的資本の一部として捉え、組織に必要とされる人材として採用、育成していくことが、今後ますます求められています。


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