米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」について、今回はQ11を見てみよう。
Q11 どこまで進歩したか見せる
米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」について、今回はQ11を見てみよう。

Q11 この6ヵ月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた。
In the last 6 months, someone at work has talked to me about my progress. (Help me review my contributions)


進歩、そして貢献度を部下がわかるように伝えているか、ということである。部下本人よりも、上司が部下の進歩を把握するにはどうしたらよいのか、具体的に見てみよう。

面談計画と過去の成果についてのフィードバック

部下を観察すること、フィードバックすることの重要性は、これまでも何度か出てきた。欠点ではなく、強みに着目することも必要だ。今回はさらに進歩し、強みの確認だけでなく、将来を見据えた個人の発展についてフィードバックしてほしい。

1年に一度、その期の達成度を確認し、評価のための面談をする会社は多い。だが、それだけでは、Q11が求める管理職の姿としては不足だ。

「6ヵ月のうちに」ということなので、四半期ごとに、定期的に1対1の面談を行おう。「6ヵ月なら半期ではないのか」と思うかもしれないが、下記のフィードバック項目を見てもらえれば、半期では振り返る期間が長すぎることがわかるだろう。3ヵ月に一度程度が適当だ。

部下の成功したプレーについては必ず記録しておき、その場で認めるだけでなく、面談の際にもう一度認めよう。そのためには、ふだんから「好プレー」用の記録が必要になってくる。とにかく、わずかでも進歩の跡が感じられれば、必ずそれに食いついて記録し、フィードバックするのが、上司の重要な仕事だ。

面談を実のあるものにするには、部下の側にも準備が必要だ。具体的には、次の項目について書き出しておくよう指示する。

A:どんな行動を取ったか
過去の四半期における、パフォーマンスの細かな内容。その行動について、点数・順位・段階評価など、定量的に評価できるとなおよい。

B:どんなことを発見したか
研修や自分で行った社内プレゼンテーション、または、同僚の仕事ぶりの観察から気づいたこと。読んだ本から触発された考えでもよい。学習の効果がわかるように記述する。

C:どんな協力関係を築いたか
部下自身が築いた周囲との協力関係。新たな人間関係を作ったということもあれば、これまでの人間関係をいっそう深めたということでもよい。

上司は面談の冒頭でこれら3つの質問をし、10分程度「過去のパフォーマンス」を確認するとよい。

将来に向けた話題と、キャリアについての質問

そして、次に「将来に向けた質問」に移ろう。これについても、上司はあらかじめ準備を指示しておく。

D:今、一番力を入れていることは何か
または、次の四半期の一番の目標は何か。

E:どんな新しい発見をしようとしているか
次の3ヵ月に、具体的にはどのような発見をしたいと考えているか。

F:どんな協力関係を新たに築きたいと考えているか
次の3ヵ月、自分の支持者をどのように育てようと計画しているのか。

3つの項目を、過去と未来の両面から見るというわけだ。四半期ごとにこの質問と、以前の答や話し合いを記録したものを参照すれば、部下の進歩ぶりが如実にわかるだろう。

さらに、「自分のキャリア」についての次の質問をすることにより、さらに部下自身の考えを深めることができる。

(1)今の職務での自分の功績をどのように説明するか。自分で功績に点数をつけられるか。
(2)現在の仕事ぶりの良い点は、何が理由なのか。技能・知識・才能から考える。
(3)現在の職務で、どの部分を最も楽しいと感じているか。
(4)現在の職務では、どの部分に最も苦労しているか。
(5)自分にとっての理想的な職務は何か。


(1)~(5)の質問それぞれに、部下の答えと上司のコメントを記録し、次の面談で参照する。これも、部下が自分の成長を感じる助けになるだろう。

さて、四半期ごとの面談で、部下にこれらの質問に対して答えさせるには、材料が必要だ。上司が部下の「好プレー」を記録しているように、部下自身も、自分の業績・学習について記録しておく必要がある。そうすることで、ぼんやりと過去3ヵ月を振り返るだけではなく、積み重ねが生まれる。

もちろん、仕事以外に記録をする手間がかかることなので、抵抗を示す部下もいるだろう。だが、この記録をもとにした振返りについて、上司のフィードバックが適切であれば、部下もその効用に気づくはずだ。それまでは、上司の強いリーダーシップが必要となる。
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