「タイムマネジメント」の意味と目的
まずは、「タイムマネジメント」の意義と目的から紐解いていこう。「タイムマネジメント(Time Management)」とは、「時間の管理」を意味する。ただ、厳密に言えば単に時間を管理して終わりではない。ビジネスにおいては、時間をより有効に活用することで、自分自身の仕事の進め方を効率化したり、時間あたりの生産性を向上させたりしていく取り組み、あるいはスキルを指す。自分が何をすべきかを事前に把握し、それぞれに設けた期限内に遂行できるよう計画を立て、実行することと言い換えることもできる。例えば、目の前にあるタスクを順番通りに取り掛かることに価値があるだろうか。時間は限られている。その中で最大限のパフォーマンスを生み出すためには、工夫が求められる。そうしたアクションが、「タイムマネジメント」となってくる。
ちなみに、「タイムマネジメント」と混同しやすい用語にスケジュール管理がある。実は、この二つは同じ意味ではない。スケジュール管理は、予定をこなせるよう時間配分を考えたり、準備したりすることをいう。ただし、これだけでは生産性を向上させることはできない。一方、「タイムマネジメント」は予定通りに行動するだけではなく、優先順位を付けたり、目標設定をしたり、振り返りを常に行ったりなど、質の高い時間活用を実現していくことである。それによって、はじめて生産性を向上させることができる。
●「タイムマネジメント」の目的
では、「タイムマネジメント」の目的はどこにあるのか。それは、仕事に専念できるようにすることだ。成果を導くには、自分自身の仕事をコントロールしていかなければならない。そのためにもタイムマネジメント能力が求められるわけである。もし、その能力が著しく低かったりすると、段取りが組めなかったリ、仕事に振り回されてばかりの状態に陥ったりしてしまうことであろう。一方、タイムマネジメント能力が高ければ、自分はいつ何をすれば良いかをコントロールできるので、業務を効率良く進められる。ゴールに近づきやすい分、常に余裕を持って仕事にあたれると言うわけだ。こうした理由に加えて、近年は「働き方改革」も追い風となり、「タイムマネジメント」はますます注目を集めている。
「タイムマネジメント」のメリット
次は、「タイムマネジメント」のメリットについて説明する。従業員と企業に分けてメリットを整理してみたい。●従業員のメリット
・業務効率化につながる「タイムマネジメント」では、どのようなタスクがあるかを可視化し、それぞれに関する優先順位を決めることになる。自ずと優先度の高い業務に比重が置かれるので、一つひとつの業務が効率化されやすい。その結果として、仕事のパフォーマンスも高まると言える。
・重要度の高い業務を着実にこなせる
「タイムマネジメント」では、業務に優先順位を付けることになる。その結果として、どれが重要であるか、どれが重要でないかを把握することができる。やみくもに目の前の業務から取り組むのではなく、目標達成につながりやすい重要度の高い業務から確実にこなしていけるようになる。
・ワークライフバランスがとりやすくなる
仕事のパフォーマンスがアップすると、業務に要する時間を削減できる。言い換えれば、時間にゆとりが生まれると言うことだ。その時間をどう使うか。キャリアアップやスキルアップ、リスキリングに充てることもでき、プライベートを楽しんでも良いだろう。新たな時間が得られることで、ワークライフバランスが確保されやすくなると言える。
●企業のメリット
・生産性の向上「タイムマネジメント」は、従業員一人ひとりのパフォーマンスアップをもたらしてくれる。結果的に、企業全体の生産性が向上されるという流れになる。ここで大切なのは、対象社員や対象部署を限定しないことだ。新入社員からベテランまで、そして製造部門だけでなく営業部門やバックオフィス部門も含めてすべての社員に「タイムマネジメント」を意識付けることが重要となってくる。特に、新入社員は業務経験が少ないだけに目先に捉われがちなので注意したい。
・残業にかかるコスト削減
「タイムマネジメント」を行うことで業務が効率化すれば、より少ない労働時間で成果を得られるようになる。当然ながら、残業時間も減るので人件費や水道光熱費などのコストの削減にもつながる。さらには、残業時間が少なくなれば従業員の満足度が自ずと上がるので、離職率の低下につながる可能性も大きい。
「タイムマネジメント能力」を高める方法
ここでは、「タイムマネジメント能力」を高める方法を紹介しよう。●仕事を洗い出してタスクを可視化する
まずは、自分自身が行っている、あるいは必要と考えられる仕事内容を洗い出してみる。これを行うことで、どのような仕事があり、それぞれにどれだけの時間を割いているのか、または割けば良いのかを把握できる。忙しくなればなるほど、仕事に追われているイメージが強くなり、仕事を終わらせることばかりに目が行きがちだ。場合によっては、今やるべき仕事ではないのに時間を割いてしまうこともあり得る。当然ながら、これでは仕事を効率的に進めているとは言えない。だからこそ、まずは仕事の洗い出し、すなわち見える化を行う必要がある。
では、実際どのように仕事を洗い出していけば良いか。まずは、1週間程度の仕事内容とフローを書き出し、一覧表を作り上げてみよう。次に、それぞれの仕事に費やしている時間を想定してみる。同様に、月次での仕事についても記入していこう。1ヵ月分の自分の仕事を見える化することができれば、心に余裕が持てるはずだ。
●想定時間と実作業時間を比較する
自分が想定している時間と実際に要した時間を比較することも重要だ。言うなれば、その二つの時間にどれだけのズレがあるのかを見える化することである。結果として、自分自身が本来成果を導くべきであった仕事にどれだけ時間を割けているか、今後優先していくべき業務は何かが明確になる。●重要度の優先順位をつける
重要度の優先順位付けも大切になる。重要度を測る基準は、「やり切った時に成果に直結する仕事であるか」だ。その尺度に基づいて優先順位を付けていく。慣れないうちは、優先順位をどう付けたら良いのか悩むことがあるかもしれない。その場合は、シンプルに重要度が「高い」「中ぐらい」「低い」と3段階に振り分けるだけでも良いだろう。優先順位を付けることを習慣化させることから始めていきたい。●業務の目標設定を行う
業務の優先順位を決めたら、次はそれぞれの業務をいつまでにどのぐらいのレベルで完了させるかといった目標設定を行わなければいけない。その上で業務に取り組む必要がある。●優先順位の低い仕事を整理する
重要度の優先順位付けを行うと、自ずと重要度が高くない仕事が浮き彫りになってくる。それらは思い切ってやらない、捨ててしまうことも可能であるし、人に任せるのも一案だ。また、他の人の仕事として移管したり、システム化したりしてしまうことも考えられる。ただ、その際には仕事の移管が周囲から仕事の丸投げ、押しつけに見られないように注意する必要がある。さらには、フローが似ている他の仕事と一緒に処理する、コアタイムではなく隙間時間に片付けてしまうというアイデアもある。●振り返りを行う
「タイムマネジメント」に則り、仕事に取り組んだら、定期的に振り返りを行うようにしたい。その都度、改善すべきことや軌道修正することがないかを確認してみよう。具体的には、計画通りに進んでいるか、目標がぶれていないか、時間配分は変更しなくても良いかなどをチェックしてみてはいかがだろうか。これを繰り返すことで、「タイムマネジメント」のゴールである期限内での「成果の向上」に近づいていくことができる。「タイムマネジメント」のコツ
「タイムマネジメント」の方法を理解したところで、実践に活かせるコツを習得していこう。●「QCDRS」を意識して取り組む
まずは、業務に取り掛かる際には「QCDRS」を意識して取り組むことが重要となる。「QCDRS」とは以下の5つを指す。Quality(品質):品質はどのくらいのレベルを目指すのか
Cost(コスト):時間をどのくらい掛けるか
Delivery(納期・締切):いつまでに仕上げなければいけないか
Risk(リスク):想定されるリスクは何か
Service(サービス・配慮):どこまで気を配るか
これは、上司から指示された業務でも変わらない。QCDRSが不明確なまま指示を受け取ってしまうと、無駄な作業となる可能性があり得る。そのような場合は、上司に確認を仰ぐようにしたい。
●ツールを使用する
カレンダー、ToDoリストなどのツールを使用することもぜひお勧めしたい。例えば、カレンダー上で1週間を30もの枠に区切り、それぞれの枠でどのような仕事をするかを決めていく。すべての枠を埋めきる必要はない。むしろ、1日に1枠を予備枠として残しておき、突然の依頼にも柔軟に対応できるようにしよう。また、予定を見える化するには、ToDoリストが便利だ。自分が今日1日でしなくてはいけないことを、漏れなく書き出してみることである。やるべきことが把握できることによって、明確な意図のもとで行動できるようになる。
●フレームワークに沿って考えを図に書き出す
何をすべきかをスピーディに決めていくにあたっては、ロジックツリーやアイゼンハワーマトリクスなどのフレームワークも有効だ。まず、ロジックツリーとは、問題の要因を分解してツリー状に整理することで、原因の分析と解決策の実行をスムーズにさせるものだ。また、アイゼンハワーマトリクスとは米国第34代大統領のアイゼンハワーが時間管理に用いていたフレームワークである。緊急度と重要度の高低に基づくマトリクスを作り、業務が4つの象限のどこに位置するかを整理し、優先度の高いものから取り組んでいくという考え方だ。ちなみに、最も優先度が高い領域は、緊急度・重要度ともに高い業務となる。
●PCスキルを向上させる
もう1点、見逃してはいけないのがPCスキルの向上だ。今ではどの業務もPCなしには進まない。それだけに、ショートカットキーや各種アプリケーションの使いこなし度合い、タイピングの速さなどによって、仕事のスピードが大きく変わってきてしまう。少しでもレベルを高めることで、業務を大きく効率化できる。- 1