プロフィール
萩原 佑一 氏
PayPay株式会社
HR本部 HRBP部 部長2009年、大手メーカーに入社。グローバル人事(制度企画・HRBP)、副社長直下組織などで国内外関係会社や事業部の戦略立案・実行に従事。2019年、PayPayに入社。HRとしてコロナ禍における事業と組織のレジリエンスを高める。WFA(Work From Anywhere at Anytime)の制度企画・導入も含めたHRMサイクルの全般や労務・コンプライアンスに携わる。事業戦略に沿った中長期人員計画の立案、データドリブンでの組織コンサルティングによる組織と人のポテンシャル最大化も担う。MBAも取得。
スピーディーなイノベーションを生み出すために、あえてカオスな組織をつくる
――事業変化のスピードが速い中でも成長を続けているPayPayですが、同社ではどのような組織づくりを行っているのでしょうか。PayPayという会社の一番面白いところは、最上段の「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」をあえて策定していないことです。なぜ策定していないのかというと、世の中を変えるべく次々にイノベーションを創出しようとするPayPayは、未完成であり変化の途上にあるからです。また、組織づくりですが、事業よりも先に組織を作り、組織を固定化させると、運用しやすいのかもしれませんが、京都の街の碁盤の目のように、それぞれの組織が自分の領域の仕事しかしない、トップダウン型で役割主義的な組織になってしまいます。そうなると、爆発的なスピードや業界構造を変えるような破壊的イノベーションは生まれません。エンプロイーファーストではなく、ユーザーファーストが大切です。だからこそ、組織づくりにおいても綺麗に整備をするのではなく、ディセントラライズド(分権的)でアジャイルに変化するカオスな状態をつくるようにしています。
――変化を続けるからこそ、あえてカオスな状況をつくっているのですね。
その通りです。既存の仕組みを継続の形で人事施策を走らせることはほぼありません。何をするにも、ゼロイチで行います。PayPayのサービス自体もそうです。まずはβ版で走らせて、施策を利用する従業員の反応や事業効果を見ながら、常に変化させていく。高速でゼロイチし、良い部分と悪い部分どちらの面も因数分解してフィードバックをかける。それが、当社の組織づくりにおける最大の特徴だと考えています。「組織は戦略に従う」のです。戦略が変わればあるべき組織も変えるべきです。
――従業員の反応や効果を見ながらスピード感のある施策を実行されておりますが、どのようにしてリアクションを確認されているのでしょうか。
人事領域は、なんとなくの勘や経験など定性的なものが多いですが、私はこれが大嫌いです。よく人事業界では居酒屋で人事は決まるとか言いますよね。私は、仮説に基づき立証していくことを重視し、テクノロジーを取り入れて極力、定量化するようにしています。例えば、エンプロイージャーニー(入社してから退社するまで)の面談ログにしても、どのようなワードを多く使っているのかなど、ありとあらゆるものをデータ化しています。データ化すると色々なことがわかります。サーベイ結果をみると、このカテゴライズの人はこういうアクションをとるのか、こうするとパフォーマンスを出しやすいのか、この数値とこの数値の相関があるのかといったように。いかに、従属変数を増やすかです。これを高速でフィードバックすることでアップデートをかけていっています。
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