設置が求められている「相談窓口」とは
以下、企業に対応を求められる「相談窓口」の種類と内容をご紹介します。1)ハラスメント相談窓口
「パワハラ防止法」とも言われている「労働施策総合推進法」により、全企業に設置が義務化されているのが「ハラスメント相談窓口」です。中小企業でも2022年4月から義務化されたため、記憶に新しいと思います。パワーハラスメント(パワハラ)に限らず、セクシャルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)をはじめとする様々なハラスメントを相談できる体制にすることが望ましいと定められています。2)雇用管理の改善に関する事項に係る相談窓口
「パートタイム・有期雇用労働法」により、「短時間労働者」あるいは「有期雇用労働者」を雇用している場合に設置が義務付けられているのが、「雇用管理の改善に関する事項に係る相談窓口」です。ここでの「短時間労働者」、「有期雇用労働者」とは、雇用形態の名称によらず、以下のいずれかに該当する方を指しています。●有期雇用で働く労働者
3)障害者の雇用の均等機会確保等に係る相談窓口
「障害者雇用促進法」では、募集採用や入社後の待遇について、自社で雇用する障害者からの相談に対応できる体制の整備が義務付けられています。4)育児休業に関する相談窓口
2022年の「改正育児介護休業法」施行により、「育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の措置」が義務化され、4つの措置のうち1つ以上を選択し対応することが求められています。4つの措置のうちの1つが相談窓口の設置です。いずれかを選択すればよいため、必ずしも相談窓口の設置が必要というわけではありませんが、相談窓口の設置を選択する企業も少なくありません。●育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
●育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
●自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
●自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
5)心とからだの健康問題についての相談窓口
特別条項つきの36協定届を届け出る場合、「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」について、選択記入する必要があります。このとき選択できるものの1つが、「心とからだの健康問題についての相談窓口」の設置です。育児休業の相談窓口と同様に、いずれかの措置を選択すればよいため、必ずしも設置が義務付けられているわけではありません。「相談窓口」設置のポイント
●相談窓口担当者は可能であれば複数名で
相談窓口を設置する場合、まず考えるのは「誰を担当者にするか」です。前提として、複数の相談窓口を設置する場合、すべての相談窓口を1人が担当しても問題ありません。しかし、1人だけで担当していると「相談窓口担当者からハラスメントを受けているので相談できない」、「セクハラの相談を異性にはしたくない」というように、相談しにくいケースを生み出してしまいます。そのため、可能であれば、男女1名ずつ以上あるいは人事部などの部門全体で相談窓口を担当することを推奨します。相談窓口を複数名で担当する場合、相談窓口の責任者は定めておきましょう。
●全従業員に周知する
相談窓口は、設置、つまり相談窓口担当者を決めるだけでは不十分です。従業員が相談できるよう、担当者や連絡先を公開して周知する必要があります。法律上書面での明示が求められているものもありますので、社内窓口の一覧などをまとめて公開するなどの対応をすると良いでしょう。●相談があったときのルールを定着させる
相談があったときに適切に対応できなければ、相談窓口設置の意味がありません。窓口担当者には、対応方法の研修などを定期的に実施しましょう。相談しやすい雰囲気づくりに関するものから、相談内容に関する法律や制度に関することまで、相談窓口担当者が知っておくべき事項はたくさんあります。また、相談があった時の社内手続き(調査方法、記録方法など)も定めておきましょう。その他、「相談した人に対して不利益となる取り扱いをしない」旨を明文化することも重要です。
「相談窓口」を社内に設置するか、社外に置くか
弁護士や社労士、相談窓口サービスを提供している企業など、外部に相談窓口を委託することも選択肢の1つです。外部に委託するメリットは、相談窓口担当者の負荷やそのための教育の負荷の削減、第三者にだからこそ相談しやすいケースの増加、専門家にお願いできる安心感などが考えられます。一方で、コストがかかることはデメリットと捉えられるかもしれません。内部窓口も外部窓口も一長一短がありますので、どちらが向いているか、メリットとデメリットのバランスなどを検討することを推奨します。- 1