プロフィール
島田 雄左 氏
株式会社スタイル・エッジ
代表取締役1988年、福岡県生まれ。24歳で司法書士として独立開業。現在は株式会社スタイル・エッジの代表取締役として士業・医業等のプロフェッショナルに向けた総合支援を行う。趣味は不動産投資と格闘技。YouTubeやTwitter(@shimadayusuke66)で法律、仕事、マネーリテラシーなどさまざまな情報を配信中。著書に『家族信託の教科書』(税務経理協会)、『人生で損しないお金の授業』(同)。
士業・医業のプロフェッショナルを「システム」「集客」「HR」の面から支える
――まずは、貴社の事業概要について教えてください。当社は2008年、弁護士や司法書士といった士業向けのWebマーケティング会社としてスタートしました。その後、クライアントの事業課題をもとにHR、システムとサービス領域を拡大し、また士業だけではなく医師などの医業の方々にもサービス提供の輪を広げました。16期目を迎える今では、士業・医業等のプロフェッショナルに向けた総合支援事業を展開しています。具体的には、システムの開発・提供、集客や営業支援などを担い、プロフェッショナルの方々が本業に集中するためのお手伝いをしています。
――島田代表は、2020年に取締役、2021年に代表に就任されています。なぜ、貴社にジョインすることになったのでしょうか?
実は私自身、もともと当社の顧客でした。以前、司法書士として事務所を構えていた際に、まさに現在当社で手がけているような集客や体制構築、人の管理といった、お客様への対応以外の業務課題に直面したのです。その時に、顧客としてスタイル・エッジの創業者と話をする中で、創業の背景や理念に感銘を受けました。その後、経営に参画しないかと声が掛かり、私自身が司法書士として実感したことを事業に還元できるのではないかと思い、チャレンジすることを決めたのです。
――貴社の事業の特徴や強みについてお聞かせください。
1点目は、クライアントの事業課題の一部分に対してではなく、総合的にご支援ができることです。大きく分けて「システム」、「マーケティング」、「HR」の3本柱でサービスを展開しています。士業・医業の方が開業される際、はじめにぶつかる課題が集客です。顧客がいなければ事業は成立しませんが、そのノウハウを持つ方は多くありません。当社の創業時の事業がWebマーケティングであるのは、そうした背景があります。
では、順調に集客ができるようになれば、それで十分なのでしょうか。実は、その先にも壁が立ちはだかります。顧客が増えると、人手が足りなくなるのです。そこで私たちはHR領域のサービスも立ち上げ、クライアントの事業拡大を支えてきました。
事務所やクリニックが順調に成長して規模が拡大していくと、次に問題となるのが案件や顧客情報の管理といった業務の効率化です。少ない人数であればExcelでの属人的な管理で手が回るのですが、人材が増えるとそうもいかなくなります。そこで、システム開発チームを新設し、さらに安定した経営に向けたご支援を行うようになりました。このように当社はクライアントの成長と共に歩み、サービス領域を広げてきたのです。
マーケティング、HR、システム、一つひとつの領域でサービスを提供している事業者は存在しますが、スタイル・エッジのように総合的に士業・医業をご支援する会社はほとんどなく、それが私たちの独自性となっています。
また、2点目として「オンラインとオフラインの融合」という点も、私たちの強みです。Webマーケティングやシステム開発の領域は、オンラインの事業です。しかし、士業・医業の世界は人と人とが対面で相談・診察することで成り立っています。デジタルの強みを発揮してクライアントの事業発展に貢献することはもちろん、人と人との接点も大切にしてサービスを提供することに重きを置いています。
知識格差をなくし、人々が平等な機会を持つ社会をつくる
――続いて、貴社のミッション・ビジョンについてご説明をお願いします。士業・医業といった専門家を訪れる一般消費者の方々は、法律に関わる問題、心身の健康の問題など、様々な悩みを抱えていらっしゃいます。中には、ご自身の力だけでは解決できない深刻な問題もたくさんあります。それが、専門家に相談して知識やアドバイスを得ることにより、救われるのです。プロの知識やサポートがあることで人生が大きく変わる事例を、私自身も司法書士として活動する中で多く見てきました。
だからこそ、士業・医業の方々には、1人でも多くの一般消費者を助けていただきたいというのが、私たちの願いです。当社が業務を支援して、クライアントが本業に集中できる環境を整えることで、その先の一般消費者の方々にも寄与したい――そうした想いを込めて、「悩む人の明日をひらく。」というミッションを掲げています。
もっとわかりやすくお話しすると、昔は借金問題で苦しむ人が今よりもたくさんいました。誰に相談すればいいのか、どうすれば解決できるのか、「知識」がなかったからです。知らない人は苦しみ、知っている人は救われる、そうした「知識格差」がありました。しかし今は、TVCMやWebマーケティングの普及により、「困ったら弁護士に相談すればいい」という認知が広まりました。私たちが広告やインフラのお手伝いをすることで、知識格差を少しでもなくしていきたいのです。
また、こうした知識や情報の格差は、日本だけではなく世界の様々なところに存在すると感じています。ビジョンとして掲げる「80億の人生に彩りを。」は、そうした格差をなくし、人々が平等な機会を持つ社会をつくりたいといった考えに基づいています。
――ミッション・ビジョンの実現のために、どのようなことに取り組んでいますか。
社員がチャレンジしやすい環境づくりに取り組んでいます。私が当社に参画して一番衝撃的だったのが、「何も指示されない」ことでした。自分の役割や貢献の仕方について、人から命じられるのではなく、自分で考えて決めていくことが求められるのです。最初は戸惑いましたが、自由で伸び伸びと働けるこの環境を、今後も大切にしていきたいです。
また、会社の規模が大きくなると、ナレッジが暗黙知のままでは、隅々までいきわたらなくなります。そこで、私が経営に参画する前のことではありますが、ミッション・ビジョンと共に、クレドも制定しました。私たちが大切にする8つのスタイルとして「主体性」、「意志」、「責任」、「誠実」、「チームワーク」、「思いやり」、「思考」、「向上心」を明文化したことにより、規模が拡大する中でもスタイル・エッジの一員として意識を強く持ちながら前進できると考えています。
――今後の事業の展望についてお聞かせください。
現在は士業・医業を対象にサービスを提供していますが、他にも同じような悩みを抱えている専門職の方々はたくさんいらっしゃいます。そこで、今後はよりサービスを提供する範囲を広げていけたらと考えています。また、海外展開も視野に入れています。士業はその業務の性質上、国内での展開が主となりますが、クリニックなど医業は海外進出もあり得るでしょう。事業領域を広げることにより、さらにミッション・ビジョンの実現に近づくことができると考えています。
ミッション・ビジョンの実現のためにも、従業員のパフォーマンスに寄与する「健康経営」は不可欠
――貴社は、創業間もないころから従業員の働きやすい環境づくりに力を入れていると伺いました。まずは、「健康経営」についての考えをお聞かせください。従業員の健康は、重要な経営課題のひとつです。そして私たちが掲げる「悩む人の明日をひらく。」というミッションを実現するには、従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが不可欠です。少しでも健康を意識しながら日々生活をすることが個々のパフォーマンスに影響しますし、事業の成長をもたらします。それがクライアント、そしてその先の一般消費者の方々への貢献につながるはずです。そこでスタイル・エッジでは、全従業員がイキイキと働ける企業を目指して、2018年6月より「健康経営宣言」を制定しました。2019年から5年連続で経済産業省より「健康経営優良法人」の認定を取得しています。
――さまざまな施策があると思いますが、特に従業員の方々から好評な取り組みを教えてください。
コンディション調査の実施、感染症対策、メンタルヘルス対策など、従業員の健康のために多くの取り組みを進めています。その中で最も好評なのは、無料マッサージですね。デスクワークが続くと、どうしても身体が凝り固まってしまうので、週に1回、国家資格を持つマッサージ師や鍼灸師にオフィスに来ていただき、希望者が施術を受けられるようにしています。また、不足しがちな野菜をランチ時に摂ることができるよう、健康的な食事をオフィスに届けてもらう「OFFICE DE YASAI」というサービスを導入しています。
他には、健康に関するコラムなどの情報発信も好評です。例えば、「デスクワークで感じる目の疲れや腰痛をどう癒すか」、「食生活ではどのようなところに気を付ければいいのか」、「花粉症に効果的な対策とは」など、内容によっては産業医の先生に監修いただきながら社内に情報発信しています。気軽に取り入れやすい内容のため、多くの従業員が読んでいるようです。
100名規模の頃から社内託児所を設置するなど、安心して働き続けられる環境を整備
――男女ともに働きやすい環境づくりも、貴社の大きな特徴です。こちらを積極的に進める背景についてもお話しいただけますか?スタイル・エッジの従業員の平均年齢は30.9歳であり、ライフステージに変化が出始める時期に重なります。そして男女比率は約4:6と、女性が少し多いです。彼ら、彼女らがライフステージの変化を経ても、長く働ける環境づくりが必要だと考えています。
ベンチャー企業はともすると、働き方が画一的になりがちだと感じます。しかし、1人として同じ従業員は存在しませんし、それぞれキャリア観もライフステージの変化も異なります。「この会社でずっと働けるのかな」と不安を感じながら働くのは、健全ではありません。一人ひとりが豊かに、そして長く働くには、働き方の選択肢を増やしていくことが必要です。
――代表的な取り組みについて教えてください。
2014 年、まだ100名規模の頃から社内託児所を設置しています。「なぜその規模で?」と驚かれるのですが、きっかけは1人の女性従業員でした。彼女は育児休暇からの復帰を望んでいたのですが、なかなか保育園が見つからず復帰の見通しが立たなかったのです。
活躍している従業員が復帰してくれることは、会社にとってももちろんプラスになります。何より、「復帰してまた働きたい」と思ってくれる従業員の気持ちには、なんとしても応えたいものです。それならば、社内でそういう環境をつくれば解決するだろうと、当時の代表が設置を決めました。その規模での託児所設置は、コストだけ考えると負担が大きいように見えるかもしれません。しかし、中長期的にみれば必ずプラスになるはずです。
――社内託児所を設置したことで、どのような成果がありましたか?
ひとつは、安心して産休・育休に入れることです。「復帰したければいつでもできる」という意識は、従業員の心理的負担の軽減につながっています。そして、従業員同士でお子さんの成長を見守ることができますし、社内行事に参加したい時は社内託児所を利用して、終業後に一緒に参加することもできます。
また、これは想定していなかったのですが、社内託児所に預けることで、認可保育園入園のための点数が上がるケースがあったのです。そうすることで、地元の保育園に比較的早期に入れたという従業員がいます。また、こうした環境整備を進めることにより、次世代認定マーク「くるみん」や、女性活躍推進法認定マーク「えるぼし」を厚生労働大臣よりいただくことができました。
――働きやすい環境づくりについても、今後の展望をお聞かせください。
従業員が働きやすい環境づくりは、経営層の責任だと考えています。人と人とのつながりを大切にしている会社だからこそ、スタッフには良い環境で働いて欲しいですし、「この会社で働いてよかった」と思って欲しい――それが、経営層としての願いです。これから会社の規模が大きくなる中で、必要な施策も変わってくるはずなので、ブラッシュアップを続けていきたいですね。
※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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