育休中の社会保険料免除制度について知ろう
まずは「社会保険料免除制度」について、いま一度確認してみましょう。当制度を申請することで、本人負担分だけでなく、会社負担分も社会保険料が免除されます。かつ、全額会社負担とされている「子ども・子育て拠出金」も免除されます。旧来は「申し出をした月から免除」となっていたため、申請のタイミングによっては十分な恩恵を受けることができないケースもあり、人事労務担当者泣かせの制度でした。しかし、現在は育児休業を開始した日が属する月から免除となります(ただし休業している間に届出をする必要があり、届出が遅れると追加で「申出書(遅れた経緯の説明)」の提出を求められる場合も)。
2022年10月以降:給与の「育休中の社会保険料免除制度」とは
本記事では、「パパ育休」で実務上、人事労務担当者が注視すべき部分にフォーカスすることとします。端的に、“免除対象となるポイント”は下記の2つです。1点目は、法改正前後を通じて変更がない部分ですが、「末日が育児休業中である場合」です。2点目は、「当月中に14日以上育児休業を取得した場合」です。もちろん、取得する従業員の性別によって制度内容が変わることはありませんが、女性よりも短期間の育休になりがちな男性従業員の場合、特に2点目に注意する必要があります。
男女の育児休業の取得期間の状況
妻の出産を控えた男性従業員から育休に関する相談があり、人事労務担当者が「14日以上育休を取得した場合も社会保険料が免除になる」と説明したとしましょう。男性の場合、自分が出産するわけではないので「産前産後休業」を取得することはできませんが、「出産予定日」から育休を取ることが可能です。
当該従業員がこの説明を聞き、「月末は繁忙期のために育休取得が困難」と考えて、3月1日から3月14日まで育児休業を取得したとします。この場合、問題なく3月分の社会保険料(さらに、会社負担の子ども・子育て拠出金も)が免除の対象となります。会社の規程で「育児休業中は無給」としている場合、当該従業員の育児休業期間中の給与負担がなくなり、併せて社会保険料は全額免除され、さらには給与が上がるにつれ高額化する雇用保険料も低くなりますので、会社としてもメリットがあります。
一方、2月28日から3月15日まで育休を取得したとしましょう。この場合、2月は月末に育休を取得していますので、2月分の社会保険料が免除となります。しかし、3月分は免除になりません。ここで、従業員から「14日以上育休を取得した場合も免除になると説明を受けたが」と聞かれることが予想されます。
制度として、「14日以上育休を取得した場合」の要件が認められるのは、育休取得開始月と終了月が同じ場合でなければならないのです。このケースでは、3月1日から3月15日まで15日間の育休を取得していますが、開始が前月である2月28日となるため、本要件を満たしていないということになります。相談者は2月・3月ともに免除になると理解していたと思われますので、予め「2月だけが免除対象月となること」を伝えておくべき事例です。もちろん会社としても、公的保険料の中で最も高額である社会保険料の1ヵ月分は無視できないでしょう。
2022年10月以降:賞与の「育休中の社会保険料免除制度」とは
先述の内容は「給与」に限った話であり、「賞与」の場合は「1ヵ月超」育休を取得した場合に限って社会保険料が免除されるように改正されました。言葉を選ばずに申し上げると、一般的に給与より高額になることが多い賞与において、これまでは賞与の社会保険料免除が目当てで「月末に1日のみ育休を取る」という法の趣旨と逆行した取得事例も散見されていました。2022年10月以降は、例えば3月に賞与が支払われた企業において「3月1日から3月31日に育休を取得し、3月に賞与の支払いがあった」場合、社会保険料は免除されません。なぜなら育休取得期間が1ヵ月を超えていないからです。一方、「3月1日から4月1日まで育休を取得して、3月に賞与の支払いがあった」場合、社会保険料が免除されます。ポイントとして賞与の社会保険料免除可否を判断する際は、1ヵ月プラス1日以上と押さえておくとよいでしょう。
「育休中の社会保険料免除制度」を正しく理解して従業員をサポートしよう
国民年金であれば「産前産後休業」期間中の免除制度を除き、免除制度を申請することで年金額が一定額減額されてしまいますが、社会保険の場合はそのようなデメリットはありません。そして、健康保険の被保険者証も、免除期間中でも問題なく使えますので、労使ともにデメリットはありません。育休は人生において数少ない貴重な経験です。制度を賢く活用できるよう、人事労務担当者からリードしてみてはいかがでしょうか。- 1