分割取得で柔軟な対応が可能な「産後パパ育休」制度
2022年7月に厚生労働省が発表した「令和3年度(2021年度)雇用均等基本調査」では、2019年10月1日から2020年9月30日までに配偶者が出産した男性における、2021年10月1日までの育児休業取得率は、過去最高の13.97%となりました。一方で、2020年5月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」では、2025年における男性の育児休業取得率の政府目標は「30%」となっています。これらのことから、現状の数値は「過去最高」になりつつも、政府の目標値にはいまだ達していないことが把握出来ます。2022年10月からの「改正育児・介護休業法」は、男性が育児に参加しやすい体制づくりを視野に入れた内容となっており、新たに「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設されました。男性の育児休業取得ニーズが高いとされる「子の出生直後の時期」に、産後の女性のサポートを重視し、男女が一緒に育児を行える様に“これまでの育児休業よりも柔軟で休業を取得しやすい枠組み”として設けられたのが、「産後パパ育休制度」です。
「産後パパ育休」は、従来の育休とは別の制度です。対象期間は「子の出生後8週間以内」で、取得可能日数は「4週間(28日)まで」となっています。申出期限は、原則「休業の2週間前まで」です。また、分割して2回の取得が可能ですが、はじめにまとめて企業側に申し出ることが必要です。なお、休業中の就業に関しては「労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能」とされています。
皆さんの会社で、男性従業員が「産後パパ育休」の取得を希望する際に、社内の人手不足が予見される場合には、「分割して2回の取得が可能であること」、「休業中に就業も可能(但し、労使協定を締結している場合に限られ、合意した範囲内であること)」という内容を踏まえ、例えば「1回目の産後パパ育休を5日取得。2回目の産後パパ育休を10日取得」という運用も可能です。
柔軟に取得することが可能な産後パパ育休。これからの「育児と仕事の両立」の一助として、より良い形で導入して頂きたいと思います。
産後パパ育休では「社会保険料の免除」と「賞与に関する社会保険料」に注意
法改正となる10月1日以降、従業員が分割して育児休業を取得する場合には、「社会保険料の免除」に関して注意が必要です。新たに施行される「産後パパ育休」では、原則の「月末に育休を取得している場合は、その月の保険料が免除」となることに加えて、「同月内で14日以上の育児休業を取得した場合」にも保険料が免除となります。ただし、「育児休業の開始日と終了日が同じ月であること」が保険料免除の要件となっているため、実務の際は必ず注意して下さい。また、同月内に2回の育児休業を取得した場合には、各々の休業日数を合算することができますので、「合算した合計日数が14日以上であれば社会保険料は免除」となります。
次に、「賞与に関連する社会保険料」について解説します。現在、「賞与支給月の末日」に育児休業を取得していれば、賞与にかかる社会保険料が免除の対象となっています。しかし10月からは、「連続して1ヵ月を超える育児休業取得者に限り、賞与保険料が免除」となります。また、「1ヵ月は暦日計算」となる部分は、「暦によって計算する」とされています。例えば、「11月16日から12月15日まで育児休業等を取得」した場合、育児休業等期間はちょうど1ヵ月(30日)であるため、賞与保険料免除の対象外となります。
そして、この賞与の免除については、「育児休業等期間に【月末】が含まれる月に支給される賞与」が対象となります。例えば、「11月10日から12月20日に産後パパ育休を取得」した例であれば、「1ヵ月を超える育児休業期間において、【月末が含まれる月】に支給された賞与」が免除の対象となりますので、「11月に支給される賞与の保険料が免除」になります。この事例では、「月末が含まれる月」(末日の11月30日が含まれる11月)に賞与が支給されることが要件となる為、賞与が12月に支給される場合は、賞与の保険料が免除にならないことに気を付ける必要があります。一般的に、賞与の支給月は12月である企業が多いため、その周辺の時期に育児休業を取得予定の対象者に説明を行う際は、注意が必要です。
今回の法改正は大きな変更が多岐に渡るため、担当者は取得対象者からの相談が増えることが想定されます。認識の違いや誤解を防ぐ為に、制度の内容を正確に理解しておく必要があります。事例が複雑なケースや、対応に不安がある場合には、専門家や最寄りの年金事務所に確認を行うことをおすすめします。最新の法改正に対応した就業規則や育児休業規程等の整備が完了していない場合は、早急に対応した上で、周知の徹底を行っていきましょう。
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