ProFuture代表の寺澤です。
株式会社リクルートの就職みらい研究所が8月19日に発表した「就職プロセス調査(2023年卒)」によれば、8月1日時点の大学生(大学院生除く)の就職内定率は87.8%で、7月1日時点からの1カ月間で4.5ポイント伸びています。ただ、2月1日時点の調査以来、23年卒の内定率が同月比で22年卒をずっと上回っていましたが、4月1日時点での10.0ポイントの差をピークにその差は徐々に狭まっています。8月1日時点で比較すると、85.3%だった22年卒との差は2.5ポイントと、ピーク時の4分の1ほどになっています。
第138回 23卒内定保有者の“選考辞退の状況”や“就活継続意向”とは
3月卒業時点の内定率は21年卒、22年卒ともに既に96%台と高くなっており、これが大きく伸びることは考えづらく、採用活動の早期化で内定率に差がついていたものの、今後はこの差がさらに縮まっていくものと推測されます。

7割の学生が選考辞退

さて、今回からは数回に分けて、2022年6月にHR総研が2023年卒の「楽天みん就」会員を対象に実施した「2023年卒学生の就活動向調査」の結果について、学生たちはどんな思いを持ちながら、どんな就職活動をしてきたのかをさまざまな角度からお届けしていこうと思います。

第1回目の今回は、10月1日以降に内定式を計画されている企業が大半かと思いますので、「内定」「辞退」をテーマにした設問の結果について、学生の本音のフリーコメントも含めて見ていきます。順番が逆転しますが、就職ナビの活用など、それ以前の就職活動については10月以降に見ていきます。

まずは、選考に合格したものの、次の選考を自ら辞退してしまう「選考辞退」について見ていきます。選考辞退を1社もしたことのない(「0社」)学生は、文系で28%、理系で32%と3割前後にとどまります[図表1]
応募後に選考辞退した社数
逆に言えば、7割前後の学生は、「選考辞退」をしたことがあるということになります。理系のほうが「0社」の割合が多い理由は、推薦制度を利用しての受験が含まれるためと推測されます。選考辞退した社数を見てみると、文系・理系ともに「1社」、「2社」、「3社」、「4~6社」が14~17%で拮抗しています。中には、「10社以上」という人事泣かせの学生も文系で4%、理系で2%ほどいるようです。

文系と理系を比較してみると、全体的な傾向は似ているものの、先に見た「0社」をはじめ、「3社」までは理系のほうが文系を上回り、4社以上は文系が理系を上回っていることが分かります。文系のほうが理系よりも応募した企業が多い(活動量が多い)ことが背景にあるのでしょう。

では、どんな理由で選考を辞退することが多いのでしょうか。[図表2]は、「選考辞退した理由」について、文理別の結果を文系の数値で降順に並べたものです。最も多い理由は、文系・理系ともに「より志望度の高い企業での選考が通過した」で、文系で60%、理系では71%と7割を超えます。
選考辞退した理由(複数回答)
2位以下の理由を見ると、すべて理系が文系を下回っており、唯一、この理由だけが理系のほうが多くなっています。2位は、「応募後に再考し、自分に合わないと判断した」で、文系では47%と半数近いのに対して、理系では32%と3割程度にとどまります。

3~5位は、「ネット上で、あるいは知り合いから良くない口コミを聞いた」「面接官の印象が良くなかった」「面接日程の都合がつかなかった」の3項目が、文系・理系ともにそれぞれの中で12~14%、9~11%と拮抗しています。このうち、「ネット上で、あるいは知り合いから良くない口コミを聞いた」は、他の項目と比べて文系と理系のポイント差が大きくなっています。理系のほうがネットの口コミには惑わされないようです。ただ、「面接官の印象」や「口コミ」が選考辞退の理由の上位となっていることには、採用担当者としては十分留意しておく必要があるでしょう。

複数内定保有者が5割を超える

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