厚生労働省は、2024年10月20日、2020年3月に卒業した新規学卒就職者(20卒)の入社後3年以内の離職状況を取りまとめたデータを公表した。これにより、大学・高校・短大等の学歴別、および従業員規模別の離職率の推移や、離職率の高い業界が明らかとなった。
コロナ禍新入社員【20卒】の“3年以内離職率”を厚生労働省が公表。大卒「3割強」、高卒「4割弱」の実態とは

20卒新入社員の“就職後3年以内の離職率”は大卒が32.2%、高卒が37%

新卒入社後3年目となる20卒全体の3年目時点の離職率について、厚生労働省が公表した最新データによると、新規高卒就職者は37%(前年度と比較して1.1ポイント上昇)、高卒就職者が37%(前年度比1.1ポイント上昇)、大学卒就職者は32.3%(同0.8ポイント上昇)であることが判明した。

今回発表された2020年(令和2年)新入社員(20卒)の公表データを見ると、大学卒では1年目の離職率が10.6%、2年目が11.3%、3年目が10.4%とほぼ同割合で、1年で1割程度の新入社員が離職しているとわかる。次に、高校卒では1年目の離職率が15.1%、2年目が11.7%、3年目が10.2%で、こちらは1年目の離職者が他と比べてやや多いことが見て取れる。

また、過去3年間のデータを比較すると、離職率は緩やかな低下傾向にあるものの、依然として3割を超える高い水準を維持していた。

【大卒就職者の離職率推移】
平成29年3月卒(17卒):32%
平成30年3月卒(18卒:32.8%
令和元年3月卒(19卒):32.8%
令和2年3月卒(20卒):32.3%

【高卒就職者の離職率推移】
平成29年3月卒(17卒):39.3%
平成30年3月卒(18卒):39.2%
令和元年3月卒(19卒):37.8%
令和2年3月卒(20卒):37%
大学卒就職後3年以内離職率の推移

※厚生労働省資料より抜粋・編集(別紙1 学歴別就職後3年以内離職率の推移)

従業員規模別の離職率の違いは?

次に、従業員数による事業所規模で比較した新卒入社後3年以内の離職率を見ると、離職率が最も低いのは「事業所規模1000名以上」で、大卒は26.1%、高卒は26.6%と全体平均より低い割合となっていた。「同500~999名」では、大卒30.7%/高卒31.8%、「同100~499名」では、大卒32.9%/高卒36.7%となるなど、企業規模が大きくなるほど離職率が低くなる事が明らかとなった。
高卒就職後3年以内離職率(従業員規模別)

※厚生労働省資料より抜粋

大卒新入社員の離職率は「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「教育、学習支援業」が上位に

さらに、同省は新卒入社後3年以内の離職率が高い産業(業種別)についてもデータを公表している。大卒で離職率が最も高いのは、「宿泊業、飲食サービス業」で51.4%。以下、2位が「生活関連サービス業、娯楽業」の48%、3位が「教育、学習支援業」の46%だった。なお、高卒の1、2位は大卒と同様に「宿泊業、飲食サービス業」(62.6%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(57%)の順で、3位は「小売業」(48.3%)、4位は「医療、福祉」(38.8%)、「小売業」(38.5%)となった。

全体を見ると、上位5つの業種は順位が異なるものの、大卒・高卒で共通しており、これらの業界では若手の人材定着に苦戦していると考えられる。
高卒就職後3年以内離職率(従業員規模別)

※厚生労働省資料より抜粋

データを総括して見ると、新卒離職率の推移は近年で大きくは変わっていないものの、若年層の離職率は3割以上と一定の高水準が続いているとわかった。離職に至る理由については、「職場環境とのミスマッチ」だけでなく、「従業員のキャリア志向の変化」も含めて様々な要因があると考えられる。他方で、企業側が入社後も従業員に働きかけることで、離職を防止できる可能性も少なからずあるのではないだろうか。新入社員や若手社員の離職は、採用・育成コスト増大や組織生産性低下の点でも深刻な経営課題となる。若手社員の入社年次ごとの離職率をいま一度確認し、講じられる対策がないか検討したい。

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