テレワークと非テレワークでは“パフォーマンスに有意な差はない”
新型コロナウイルス感染症の感染拡大から2年が経過し、日本のビジネスシーンにおいても、自宅やコワーキングスペースでのテレワークのように、オフィス以外で働くことが当たり前になってきた。しかしその中で、組織や個人にはなかなか気づくことのできない“変化”が起きているようだ。セミナーの前半、伊達氏の講演では、記事冒頭で示した3つのテーマから、「テレワークでパフォーマンスを発揮するためには何が必要か」について、同社が実施した「テレワークとパフォーマンスに関する調査」の結果を交えて話した。
伊達氏がまず触れたのは、海外のテレワークについて。コロナ前に実施した実証研究を基にしたメタ分析では、「テレワークはオフィスワークよりも仕事のパフォーマンス及び満足度が高い」との結果だったそうだ。その要因を「コロナ前ではテレワークに合った一部の専門人材が自発的にテレワークを選択していた」と見解を述べた。
続けて紹介したのが、“コロナ後の日本でのテレワーク”について。コロナ拡大後に同社が実施した「主観的パフォーマンス」(役割内の業務を期待以上に実行できているか)の調査結果は下の図表1の通り。
【図表1】出典:セミナー投影資料より(ビジネスリサーチラボ作成)
テレワーク・非テレワークでの「パフォーマンスを促す要因」の違い
強制的に行うテレワークと非テレワークで「パフォーマンスに差はない」ものの、パフォーマンスを左右する要因は両者で異なっているようだ。これは、テレワークへの移行によって、働き方が変わり、“パフォーマンスに影響するもの”も変化したということを示している。では、テレワーク下では、いったいどのようなことが人々のパフォーマンスに影響しているのだろうか。ここで伊達氏は調査結果をもとに、テレワークにおいて、非テレワークの場合よりもパフォーマンスへの影響が強い以下の4つを要因に挙げた。●報酬への公正感
支払われる報酬が公正かどうか
(テレワークでは成果を出すまでのプロセスが見えにくいことから、“評価結果”としての報酬の公正感が、非テレワークよりも重視される)
●テレワーク推奨
会社からテレワークを推奨されていること
●仕事の技術活用度
仕事において自分の技術をどれほど使う必要があるか
●技術活用の有効性
オンラインツールの活用により、仕事がより効率化されていること
これら要因から、テレワークにおいてパフォーマンスを上げるためには、「納得のいく評価結果の提供」、「会社がテレワークを推進」、「技術を利用する必要のある仕事をアサイン」、「技術利用で効率化する仕事をアサイン」が重要であると、伊達氏は結論付けた。
ここから、“パフォーマンスを発揮するための要因”について、テレワーク/非テレワークの違いをさらに掘り下げ、「パフォーマンスを促す要因」の「テレワーク」と「非テレワーク」間での共通点および相違点について説明。両者に共通していたのは、パフォーマンスにプラスに働く「仕事の自己効力感」と、マイナスに働く「業務情報の不足」であったという。一方で、両者で違いがあったのは、非テレワークにおける「仕事とのフィット」と、テレワークにおける「職場での受容」だ。
伊達氏は特にこの「職場での受容」に注目。テレワークにおいては、メンバーが相互に離れているために、「“職場で受け入れられている”という実感がなければ、パフォーマンスが発揮できないのではないか」とのことだ。では、社員が「職場での受容」を感じるためには、どのようなことが必要なのか。それは、「各メンバーが自分の“職場やメンバーへの貢献”を感じること」だという。つまり、互いに感謝を伝え合うなど、メンバー間で承認しあうことが大切なようだ。