株式会社ビジネスリサーチラボは、「テレワークの心理学」と題したセミナーを2022年3月11日に開催した。当日の主なテーマは「テレワークにおけるパフォーマンス発揮の要因」、「テレワークによるコミュニケーションの質の変化」、「テレワーク導入による社員のマインドセットの変化」の3つ。これに対し、同社代表取締役・伊達洋駆氏と同社テクニカルフェロー・正木郁太郎氏が講演した。その鍵を握るのが、テレワークが急速に浸透した現代において、ビジネスパーソンの「仕事」や「コミュニケーション」、「マインドセット」などがどう変化したのかということ。本セミナーでは、調査結果を交えながら、これらについて説明がなされた。本記事では、その内容をサマリー形式でお伝えする。
テレワークが「コミュニケーション」や「マインドセット」に与えた変化とは。心理的側面からパフォーマンス向上の方法を探る

テレワークと非テレワークでは“パフォーマンスに有意な差はない”

新型コロナウイルス感染症の感染拡大から2年が経過し、日本のビジネスシーンにおいても、自宅やコワーキングスペースでのテレワークのように、オフィス以外で働くことが当たり前になってきた。しかしその中で、組織や個人にはなかなか気づくことのできない“変化”が起きているようだ。

セミナーの前半、伊達氏の講演では、記事冒頭で示した3つのテーマから、「テレワークでパフォーマンスを発揮するためには何が必要か」について、同社が実施した「テレワークとパフォーマンスに関する調査」の結果を交えて話した。

伊達氏がまず触れたのは、海外のテレワークについて。コロナ前に実施した実証研究を基にしたメタ分析では、「テレワークはオフィスワークよりも仕事のパフォーマンス及び満足度が高い」との結果だったそうだ。その要因を「コロナ前ではテレワークに合った一部の専門人材が自発的にテレワークを選択していた」と見解を述べた。

続けて紹介したのが、“コロナ後の日本でのテレワーク”について。コロナ拡大後に同社が実施した「主観的パフォーマンス」(役割内の業務を期待以上に実行できているか)の調査結果は下の図表1の通り。
主観的パフォーマンス

【図表1】出典:セミナー投影資料より(ビジネスリサーチラボ作成)

テレワーク/非テレワークの人に分けて5段階で評価しており、値が高いほどパフォーマンスが高いことを示す。この結果によるとテレワークが3.403なのに対し、非テレワークは3.366とその差はわずかに0.037。「主観的なパフォーマンスに有意な差はない」といえる。その理由について、コロナ禍で急速にテレワークが普及したことにあるとし、「多様な人材が半ば強制的にテレワークになっている」と理由を指摘した。先に紹介した結果と合わせて考えると、“自発的にテレワークをしているか否か”がパフォーマンスに影響していると考えられそうだ。

テレワーク・非テレワークでの「パフォーマンスを促す要因」の違い

強制的に行うテレワークと非テレワークで「パフォーマンスに差はない」ものの、パフォーマンスを左右する要因は両者で異なっているようだ。これは、テレワークへの移行によって、働き方が変わり、“パフォーマンスに影響するもの”も変化したということを示している。では、テレワーク下では、いったいどのようなことが人々のパフォーマンスに影響しているのだろうか。ここで伊達氏は調査結果をもとに、テレワークにおいて、非テレワークの場合よりもパフォーマンスへの影響が強い以下の4つを要因に挙げた。

●報酬への公正感
支払われる報酬が公正かどうか
(テレワークでは成果を出すまでのプロセスが見えにくいことから、“評価結果”としての報酬の公正感が、非テレワークよりも重視される)

●テレワーク推奨
会社からテレワークを推奨されていること

●仕事の技術活用度
仕事において自分の技術をどれほど使う必要があるか

●技術活用の有効性
オンラインツールの活用により、仕事がより効率化されていること

これら要因から、テレワークにおいてパフォーマンスを上げるためには、「納得のいく評価結果の提供」、「会社がテレワークを推進」、「技術を利用する必要のある仕事をアサイン」、「技術利用で効率化する仕事をアサイン」が重要であると、伊達氏は結論付けた。

ここから、“パフォーマンスを発揮するための要因”について、テレワーク/非テレワークの違いをさらに掘り下げ、「パフォーマンスを促す要因」の「テレワーク」と「非テレワーク」間での共通点および相違点について説明。両者に共通していたのは、パフォーマンスにプラスに働く「仕事の自己効力感」と、マイナスに働く「業務情報の不足」であったという。一方で、両者で違いがあったのは、非テレワークにおける「仕事とのフィット」と、テレワークにおける「職場での受容」だ。

伊達氏は特にこの「職場での受容」に注目。テレワークにおいては、メンバーが相互に離れているために、「“職場で受け入れられている”という実感がなければ、パフォーマンスが発揮できないのではないか」とのことだ。では、社員が「職場での受容」を感じるためには、どのようなことが必要なのか。それは、「各メンバーが自分の“職場やメンバーへの貢献”を感じること」だという。つまり、互いに感謝を伝え合うなど、メンバー間で承認しあうことが大切なようだ。

テレワークにより同期などの「非公式・脆弱なコミュニケ...

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