ProFuture代表の寺澤です。
4月1日、多くの企業で入社式が開催されました。新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置(以下、まん防)が3月21日をもってすべての都道府県で終了したことに伴い、3年ぶりに対面形式で実施した企業も多かったようです。3月に就職情報会社の学情が実施した「2022年4月入社の入社式・新入社員研修の実施方法」に関する調査によると、規模を縮小しての実施も含めると、入社式を「リアルで実施」と回答した企業が67.2%と7割近くにも上ったということです。
第133回 2023年卒学生の就活における企業選びの“基準”や“志向”とは
東京都は、昨年と同様に代表者以外はオンライン参加での実施を継続していましたが、楽天クループでは約700人の新入社員を一堂に集めてすべてを英語で実施したほか、コニカミノルタでは自社のプラネタリウムに新入社員を集めて実施するなど、リアルならではの演出に工夫を凝らして実施した企業もありました。昨年10月の内定式はオンラインで実施した企業が多かったようですから、新入社員にとっては同期と初めて直接会うことができ、これから社会人生活が始まることを実感できる貴重な場になったはずです。

なお、学情の上記調査では、新入社員研修の実施方法についても聞いており、こちらも前回調査(2021年4月入社)では31.0%だった「例年と同規模で、リアルで実施」が53.1%と大きく増加し、「規模を縮小して、リアルで実施」の8.8%を合わせると、6割以上が「リアルで実施」を予定しているという結果が出ています。

そんな中、凸版印刷では従来からの完全オンライン研修に加えて、同社が開発したメタバース(仮想空間)上に新入社員同士、さらには先輩社員との交流を促進できる場を用意するとのこと。メタバース上では、リアルと同様に会話する相手を自由に選んでコミュニケーションが取れることから、研修としてだけでなく、新入社員の不安を払拭するサポートシステムとしても活用できるとのことです。今後も人事領域におけるIT活用の新しい試みがどんどん増えることを期待しています。

コロナ禍による採用減少の不安は解消傾向

さて、今回はHR総研が「楽天みん就」と共同で2022年3月に実施した「2023年卒学生の就職活動動向調査」の結果を紹介します。

まずは、2023年卒学生の就職意識から見ていきます。「就職活動についてどう思うか」と所感を聞いたところ、「楽観派」(「楽観している」と「やや楽観している」の合計、以下同じ)は、文系で28%と前年の同時期調査の20%から8ポイント上昇し、代わりに「不安派」(「不安である」と「やや不安である」の合計、以下同じ)は、前年の66%から57%へと9ポイントの減少となっています[図表1]
就職活動への所感
コロナ禍で採用を凍結していた企業も採用活動を復活する動きを見せ、2月21日にはまん防が終了して経済活動も徐々に回復しつつあることが背景にあるのでしょう。理系では、「楽観派」の割合は前年の32%から33%へとわずかな伸びしかないものの、「楽観している」の割合は9%から14%へと5ポイント上昇するとともに、「不安派」は前年の54%から49%へと5ポイント減少しています。「不安である」だけを見ると、31%から24%へと7ポイントもの減少となっています。文系よりも「楽観派」の割合が多く、「不安派」の割合が少ないことは、前年と同様の傾向です。

次に、「不安派」の学生に対して、その不安の内容を前年の調査結果と比較したのが[図表2]です。グラフは今回調査の結果の降順で表示しています。
就職活動に対する不安の内容
トップは前年と同様に「面接が苦手だから」で、前年とほぼ同じく58%と6割近くになっています。2位以降もほぼ前年と同じ傾向を示していますが、唯一大きな変化を見せたのは「新型コロナウイルスの影響で採用が減少しそう」で、前年の40%から15%へと25ポイントもの減少となっています。[図表1]の考察でも述べたように、コロナ禍でも根強い企業の採用意欲に加え、採用を手控えていた企業での採用復活の動きが大きく影響しているようです。

なお、今回の調査から選択肢として「新型コロナウイルスの影響で『学生時代に力を入れたこと』が少ないから」を追加してみたところ、2割以上の学生が選択しています。今年、就職活動を迎えている学生(学部生)は、大学1年時こそ普通の大学生活を送ることができたものの、2年生を迎える春期休暇以降はリモート生活を強いられ、留学やクラブ活動、ボランティアなども制限されていましたので、かつてのようなエピソードを語れるネタが少なくなっていることは紛れもない事実です。

リモート生活の中でできたことももちろんあるでしょうが、エントリーシートの設問でたまに設定されている「学生時代に力を入れたことに関連する自身の写真の貼付」には、頭を抱える学生は多いのではと思います。このあたりは、エントリーシートの内容をただ前年踏襲で続けるのではなく、企業側での配慮も必要ではないかと思います。

大手志向が減少した理系

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