「コミュニケーション能力(スキル)」とは
「コミュニケーション能力(スキル)」とは、相手との情報共有や意思疎通をスムーズに行うための能力や技術を意味する。相手に、自分の想いや持っている情報を上手く伝えることに重点を置きがちだが、それだけではない。相手からしっかりと情報を受け取ることもポイントになる。また、性格的に内向的な人よりも外交的な人の方が「コミュニケーション能力(スキル)」が高いと思われがちだが、これも一概には言えない。相手の話を聞かずに、自分だけが一方的に話しているようでは、そもそもコミュニケーションが成り立っていない。むしろ、口数が少なくても、相手の気持ちを察しようとする姿勢があれば、会話のキャッチボールはできる。
「コミュニケーション」の手段
「コミュニケーション」の手段は、言語(バーバル)と非言語(ノンバーバル)に大別される。言語は、まさに言葉そのもの。言語を用いて会話をしたり、文章を読み書きしたりすることで、お互いの考えや価値観、知識を共有しあうことができる。一方、非言語(ノンバーバル)とは目の動きや表情、身振り、手振り、声のトーンや抑揚などを言う。それらには、言葉には表されてない本人の真意が込められている。言葉以上に相手の本音が見えてきたりするものである。また、非言語は第一印象の形成にも大きな影響を与えるのだ。
このように、「コミュニケーション」の手段には二種類あるので、そのスキルを高めるには、言語領域のスキルを磨くだけでは十分ではない。非言語領域も重要になってくるだろう。
「コミュニケーション能力(スキル)」が高い人の特徴
「コミュニケーション能力(スキル)」が高い人には、いくつかの共通した特徴がある。(1)相手の話を聞くのが上手い
話し上手である前に、聞き上手である。話をどんどん引き出し、その想いをしっかりと受け止めてくれるので相手も心を開いてくれる。相手が自分の意見を尊重されていると感じることで、深いコミュニケーションが可能になり、信頼関係の構築につながる。(2)相手の気持ちを読み取れる
「コミュニケーション能力(スキル)」が高い人は、相手の言葉だけでなく、非言語な領域の情報からも相手の気持ちを素早く察していける。そのため誤解を避け、相手に応じた適切な対応を取れる。結果として、ストレスやトラブルを減らし、円滑なコミュニケーションを図ることができる。(3)前向きな発言が多い
前向きな発言が多いのも、「コミュニケーション能力(スキル)」が高い人の特徴だ。当然ながら、周囲の人にも良い影響を与えてくれるので、信頼関係を築きやすい。前向きな姿勢は、組織の士気を高めるだけでなく、課題に対して建設的な解決策を見出す原動力にもなる。(4)自ら積極的に行動していける
「コミュニケーション能力(スキル)」が高い人は、人とどんどん関わっていくので、良いアイデアを取り入れ行動に移していく傾向が強い。積極的な行動は、他者との連携強化を図れるだけでなく、イノベーションを促進し、組織全体の成果を引き上げることにもつながる。(5)わかりやすい話し方をする
「コミュニケーション能力(スキル)」が高い人は、話し方にも気を配っている。何を、どんな言葉で伝えるか。どんな表情、身振りをすれば良いかを常に工夫しているのだ。明確でわかりやすく話せれば、誤解を防ぎ、スムーズに情報伝達ができる。(6)相手を楽しませようとする
人を楽しませる意識を持っていると、「もっとこの人と話をしたい」、「この人に私の話を聞いてもらいたい」と思うようになる。そうすると、コミュニケーションが自然でリラックスしたものになり、相手との関係を深めることができる。(7)いつも気持ちに余裕がある
穏やかな性格の人と一緒にいる場合、思っていた以上に色々と話し込んでしまう。「コミュニケーション能力(スキル)」が高い人は、気持ちにゆとりを持って話す傾向にあり、相手に安心を与えていることにつながる。心の余裕は冷静な判断を可能にし、対人関係での摩擦を減少させ、信頼を集めやすくもなる。(8)結論から先に話す
「コミュニケーション能力(スキル)」が高い人は、結論から先に話す傾向が高い。端的に物事を伝えることで相手と共通認識を持ちやすくなる。結果的に、物事の意思決定が早まり、業務の進行もスピーディーになる。「コミュニケーション能力(スキル)」が低い人の特徴
「コミュニケーション能力(スキル)」が低い人にも共通した特徴が見られるので、紹介しよう。(1)相手が何を求めているのかを読み取れない
「コミュニケーション能力(スキル)」が低い人は、相手が何を伝えようとしているのかを受け取るのが苦手だ。わからなければ質問をすれば良いのだが、それもできないことがある。そうなると相手は自分の意図や気持ちが理解してもらえないと感じ、フラストレーションが溜まりやすくなる。結果的に信頼関係の構築が難しくなり、意思疎通に時間がかかることが多い。(2)自分だけで一方的に話しがちである
片方が話してばかりでは、相互理解につながらず、信頼関係も築くことはできない。それを理解しているつもりであっても、一方的に相手に話す傾向が見られる。相手は会話の意欲を削いでしまったり、対話の機会を失ったりすることで、重要な情報や意見が共有されないリスクも高まる。(3)自分のことをあまり話さない
「コミュニケーション能力(スキル)」が低い人のなかには、相手のことはあれこれ聞いても、自分自身のことはほとんど開示しないという人も多い。オープンなマインドがないと相手は本音を言いにくいものだ。そういう場合、相手は一方的に情報を提供していると感じ、不公平感や不信感を抱く可能性がある。また、相手との距離感が縮まらず、表面的な関係に留まってしまうことも少なくない。(4)自分の気持ちや感情を上手く表現できない
「コミュニケーション能力(スキル)」が低い人は、感情を言葉や表情で表現するのが苦手である。その結果、相手に「この人は何を考えているのかわからない」といったマイナスな印象を抱かせてしまう。結果的にコミュニケーションを避けられるようになり、誤解が生じやすく、関係が悪化するリスクが高まる。(5)相手の話を否定する
「コミュニケーション能力(スキル)」が低い人は、相手の意見や感情を否定的に受け取ることが多い。相手の話を遮ったり、「それは違う」と否定したりすることで、相手との関係が悪化しやすい。相手は意見を共有することに対して不安を感じるようになり、コミュニケーションがスムーズに進まなくなる可能性がある。結果として、対話が建設的でなくなり、相手のモチベーションや自信を損なう恐れもある。「コミュニケーション能力(スキル)」の種類(要素)
次に、「コミュニケーション能力(スキル)」の種類(要素)について見ていこう。●伝える力
「書く」、「話す」などによって、自分が思っていること、言いたいことを相手に正確に、かつわかりやすく伝える力である。物事をスムーズに進めるためには、相手が理解しやすい形で情報を伝えることが必要不可欠だ。伝える力があれば、誤解を避け、効率的にコミュニケーションを進めることができる。●論理的な表現力
ビジネスは自分一人ではできない。同僚や上司、顧客など、自分以外の人たちと一緒に進めていくことになる。それだけに、わかりやすく整理して相手に伝える論理的な表現力が求められる。複雑な情報や意見を論理的に伝えることで、相手の理解を深め、効果的な意思疎通が可能となるため、このスキルは欠かせない。●感じの良さを表現できる力
感じの良さを表現できる力は、「好感表現力」と言い換えても良い。誰かから何かを依頼された時に、感じの良い人だと思わず協力したくなるだろう。相手に好感を持ってもらえるような態度・姿勢を表現できる力も重要になる。これも、信頼関係の構築や円滑な人間関係を築くために、大切な「コミュニケーション能力(スキル)」の一つなのだ。●聴く力
これは、相手が伝えたい言葉を最後までしっかりと聴き、理解する力である。聞くではなく「聴く」という文字を用いていることがポイント。単に話を聞くのではなく、真摯に耳を傾けるという姿勢を意味する。相手の意図を正確に理解するためには、表面的な言葉だけでなく、背景や感情を汲み取ることが求められる。●非言語を伝える力
相手の言うことにしっかりと耳を傾けているという態度を非言語で伝える力を意味する。これには、“相手の目を見て聞く”、“相槌を打つ”などと言った対応も含まれる。非言語のコミュニケーションは、言葉以上に強力なメッセージを伝えることがあり、相手との信頼を深める上で非常に重要である。●非言語を読み解く力
相手の表情や言葉だけでは全ては見えない。むしろその裏に隠された真意をくみ取るために欠かせないのが、非言語を読み解く力だ。本心がどこにあるのかを推測できる。このスキルがあることで、表面的な言葉に惑わされず、真の意図を理解することができ、より効果的なコミュニケーションが可能になる。どのような場面で「コミュニケーション能力(スキル)」は活きるか
ここでは、「コミュニケーション能力(スキル)」がどんな場面で役立つのかを紹介したい。●人間関係の構築
仕事を円滑に進めるには、どうしても他者との良い人間関係の構築・維持が不可欠となる。そのためにも重要になるのが、「コミュニケーション能力(スキル)」だ。“相手の話をしっかりと聞く”、“相手が何を伝えたいかを理解する”、“自分の想いや気持ちも話す”。こうしたことが、お互いの信頼を築いていくベースとなってくる。●説得力のある説明
ビジネスにおいては、説明や説得の比重が比較的大きい。それによって、相手の気持ちを動かし、何らかのアクションにつなげていかなければいけないからだ。同じ社内で働いていたとしても、考え方は違うことがあるだけに、説得力のある説明が必要となる。相手の様子をうかがったり、時にはこちらから質問をしたりして相手の理解度を確認することも重要だ。●クライアントとの折衝や交渉
クライアントとの折衝や交渉の場でも、「コミュニケーション能力(スキル)」は大きな役割を果たす。クライアントの意図を理解するために、話をよく聞くだけでなく、疑問や不明な点があれば、質問して理解を深めていかなければいけないからだ。また、相手の意向も踏まえながら、自分が伝えたいことを正しく認識し、共有してもらえるような話し方、雰囲気づくりも大切になってくる。●効率の良い会議
会議を効率良く進めるためにも「コミュニケーション能力(スキル)」が重要になる。相手の意見や発言を聞いて意図を正しく理解するとともに、自分の意見を分かりやすく伝えることで、参加者の納得感や合意を得られやすくなるからだ。●情報の交換、共有
相手と情報を交換、共有する場面でも「コミュニケーション能力(スキル)」が活きてくる。ビジネスにおけるコミュニケーションは、相手と仲良くおしゃべりをすることではない。顧客から有益な情報を入手して新たな提案につなげたり、上司に報告・連絡・相談したり、部下に対して仕事の進め方をアドバイスして人材育成を進めていったりなど、何らかの成果を得るための手段である。その流れを円滑にさせるのが、「コミュニケーション能力(スキル)」と言える。「コミュニケーション能力(スキル)」を向上させるうえで大事な要素とは
「コミュニケーション能力(スキル)」を向上させるためには、どのような要素が重要になってくるのか。いくつかポイントを取り上げてみたい。●意思疎通
自分の意思や感情、情報を相手に伝え、相手からのリアクションも受け取り、お互いに理解を深める「意思疎通」は、「コミュニケーション能力(スキル)」を向上させるスキルとして、とても重要である。相手との意思疎通を心がけて接していくことで、良好な人間関係が構築していけると言って良い。具体的なポイントとしては、“自分だけが一方的に話すのではなく相手の話もしっかりと受け取る”、“お互いがリラックスした雰囲気のなか話し合えるようにする”、“それぞれが言いたいことを言うのではなく、最後に方向性を集約する”といったことが挙げられる。
●協調性
良好なコミュニケーションを行うには、協調性も不可欠となる。意見や利害が異なった相手であっても尊重する気持ちを持って、お互いに譲り合い、歩み寄りながら会話を進めていく必要がある。それだけに、相手を見下したり軽んじたりする態度は控えなければいけない。また、商談先や社内でのミーティング、同僚との何気ない会話でも配慮は欠かせない。ふとした発言で組織やチームメンバーとの信頼関係が一瞬のうちに壊れてしまうことがあるからだ。●自己表現力
「コミュニケーション能力(スキル)」を高めるためにも、自分をどう表現すれば良いかを考えることが重要と言える。自分自身では短所だと思っていることも、伝え方によっては相手の印象や評価が変わるからだ。ビジネスシーンでまず心がけたいのは、わかりやすさや明確さである。“相手に応じて言い回しや使う言葉を変えてみる”、“言葉で上手く伝えきれない部分は図形やイラストを用いて説明してみる”といった工夫をしてみてはいかがだろうか。「コミュニケーション能力(スキル)」を高める方法
●報連相を徹底する
報告・連絡・相談、いわゆる「報連相」を徹底することは、コミュニケーション能力を高める基本だ。日常的に実践することで、情報の共有がスムーズになり、誤解やトラブルを未然に防ぐことができる。特に職場では、上司や同僚との信頼関係を築くために、タイムリーかつ正確な報連相が欠かせない。適切なタイミングで、相手に必要な情報を提供することで、円滑な業務遂行が可能となる。●数分で話をまとめる練習をする
短時間で話をまとめるスキルは、効率的なコミュニケーションに不可欠と言える。特にビジネスの場では、限られた時間の中で要点を的確に伝えることが求められる。日常的に自分の意見や考えを数分で要約する練習をすると良いだろう。次第に相手に伝えたい情報を簡潔に届けられ、相互理解が深まり、会話がスムーズに進むようになる。●言葉の真意を探る
相手の言葉の背後にある真意を探ることは、深いコミュニケーションを実現するために重要だ。言葉通りに受け取るのではなく、相手が何を本当に伝えたいのかを理解しようとする姿勢が必要となる。相手の表情や声のトーン、文脈を読み解く力を磨くことで、相手のニーズや感情をより的確に把握し、より信頼性の高い関係を築くことができる。●声のトーンやスピードに配慮する
声のトーンや話すスピードは、相手に与える印象を大きく左右する。適切なトーンとスピードで話すことで、相手に安心感や信頼感を与えることができる。急ぎすぎず、相手が理解しやすいペースで話し、また感情を伝えるために、声のトーンを意識的に使い分けることが効果的だ。そうすることで伝えたいメッセージがより明確になり、相手にしっかりと伝わるようになる。●番外編:オンラインコミュニケーションのコツ
コロナ禍により、リモートワークが広がったことで増えてきているのが、オンラインによるコミュニケーションだ。「表情が伝わりにくい」、「対面では気にならなかったところに目が行きやすい」、「相手から何度も聞き返されてしまう」などの難しさを感じている人も多いのではないだろうか。“対面の時よりも大きめに口を動かしてみて無表情に捉えられないように意識する”、“普段以上にゆっくりしたペースで話し単語や語尾をクリアに発音する”といったことも心がけてみたい。まとめ
「コミュニケーション能力(スキル)」はビジネスシーンで必要不可欠だ。“相手との信頼関係を作る”、“相手から情報や考えを聴く”、“自分の想いを相手に伝える”、“顧客と交渉する“など、どの場面でも役立つ。「コミュニケーション能力(スキル)」は意識することで高めることができる。もちろん、本人の人間性や考え方、習慣などにも関わってくるので、取り組んだからといってすぐに効果が出てくるものでない。常日頃から心がけ、長期的に着手していくことが大切になってくるだろう。- 1