職場環境をより良くしたいと考えた際に、理想の姿として掲げられるのが「風通しの良い職場」だ。だが、概念では理解できても、実際問題どのような環境や制度を構築すれば良いのかだろうか。また、そのメリットやデメリットはどこにあるのか。そこで、今回は「風通しの良い職場」の意味やそうした職場づくりに向けた具体的な施策を解説していきたい。
「風通しの良い職場」の意味やデメリットとは? 施策の具体例やコミュニケーションに関する13のアイデアなどを解説

「風通しの良い職場」とは何か

「風通しの良い職場」とは、上下関係がフラットで社員が自分の意見を率直に言いやすい職場を意味する。もちろん、自由気ままに言いたいことを言ったり、誰に対しても好きなことを発言したりして良いわけではない。組織としての一定の規律を守った上であるとか、一定の節度を保ちながらやりとりできる環境を指す。

●「風通しの良い職場」の特徴とは

「風通しの良い職場」には、いくつかの共通した特徴がある。それらを見ていこう。

・活発な社内間コミュニケーション
「風通しの良い職場」は社内のコミュニケーションが活発で、雰囲気も明るい。挨拶を交わしあえるのでお互いに気持ちが朗らかになれる、何か困ったことがあっても気軽に相談できる。自ずと社員同士の交流も深まるので、意見交換や情報共有がスムーズに行われる。総じて、社員のエンゲージメントも高いと言える。

・意見が言いやすい雰囲気
「風通しの良い職場」は、良い意味で上司と部下の関係がフラットである。心理的安全性が高い職場と言い換えても良い。お互いの意見をオープンに受け入れやすい風土であるため、役職や年齢・立場に関わらず、自分の意見やアイデアを言いやすい雰囲気がある。それだけに、主体性を持って伸び伸びと働くことができるだろう。

・良好な人間関係
「風通しの良い職場」では、人間関係も良好だ。その分、お互いの意見や想いを伝えやすく、自ら主体的に考え行動していきやすい。チームワークも醸成しやすいと言える。

・情報に透明性がある
「風通しの良い職場」は会社の方針やルールなどに関しても、透明性がある。そのため、社員は何をして良いのか、何をしてはいけないのかが、明確に判断できるので仕事がしやすい。良く聞かれる「暗黙の了解」に縛られることがなければ、「これをしたらまずいのでは」と心配することもない。当然ながら、働きやすさが高まると言って良い。

「風通しの良い職場」にはデメリットがある?

ここでは、「風通しの良い職場」のメリットとデメリットの両面を説明しよう。

【メリット】

●意見交換の活発化
「風通しの良い職場」は、コミュニケーションが活発なため、さまざまな意見やアイデアが発信されやすい。また、上司からのフィードバックも得やすいので、方向性が間違っていたとしても早めに修正指示を出せる。仕事もよりスムーズに進められるというわけだ。

●生産性の向上
「風通しの良い職場」では、社員のモチベーションが高い。また、会社のビジョンや目標が現場に共有されているので、自分たちが今何をすべきかが描きやすい。その分、仕事の齟齬が起こりにくい。もしミスやトラブルがあっても、対応が早いので業務の生産性や業績は格段にアップすると言って良いだろう。

●離職率の低下
離職の原因として多いのは、職場での人間関係だ。「言いたいことが言えない」、「働きづらい」などといった不満が募り、あるタイミングで突然離職を切り出すといったことが多くの企業で起きている。そうしたことがないようにするためにも、「風通しの良い職場」にする必要がある。自分の意見や気持ちを気軽に言える環境であれば、仕事の悩みも解決しやすい。自ずと離職率が低下するはずだ。

●迅速なトラブル対応
「風通しの良い職場」は、情報共有がスムーズである。良い情報だけではなく、仕事に対する不平や不満、または業務上のミスやトラブルも報告されやすい。そのため、対応が迅速にできる。何か問題があっても素早く解決していける体制であれば、社員も安心して働き続けていける。

【デメリット】

●性格によっては居心地が悪い
「風通しの良い職場」では、コミュニケーションが活発だ。しかし、これは全員にとって良い面ばかりではない。なかには、内気なタイプもいるはずだ。同僚があまりにも自由に発言している様子を見たら気おくれしてしまい、職場での居心地が悪くなる可能性がある。「何でもオープンに」と強制されるようなことがあれば、もっと問題だ。さまざまなタイプの社員がいることを留意しておかなければいけない。

●緊張感がなくなってしまう
「風通しの良い職場」を目指し、意見を自由に言いあえる雰囲気を過度に追求してしまうと職場の緊張感がなくなることがあり得る。気の緩みもあって、業務に関係ないことを口走ったり、勤務態度がルーズになったりする可能性が出てくる。仕事の場であることを前提に、自律した言動を促していく必要があるだろう。

●メリハリがなくなる
上司と部下がフラットな関係性にあるのは良いが、単なる仲良しの場であってはいけない。仕事に対するメリハリがなくなり、生産性が低下してしまうからだ。仕事をベースとした付き合いであることを認識した上で、どう円滑なコミュニケーションを図るかに留意していかなければいけない。

「風通しの良い職場」に向けた具体的な13の施策を一挙紹介

多くの企業が「風通しの良い職場」を目指しているだけに、成功事例が数多く散見される。どんな施策を進めたのかを学び、自社での取り組みのヒントにしてもらいたい。

(1)フリーアドレス制の導入

フリーアドレス制度とは、社員の席を固定せず、空いている席があれば自由に選んで仕事ができる仕組みを言う。毎日違う場所に座ることで、人間関係にかなりバリエーションが出てくるだろう。部署を超えた交流も珍しくなくなるので、社内での風通しも自ずと良くなっていく。

(2)社内アンケートの実施

目指している「風通しの良い職場」と現状の職場でのギャップを正しく把握するためにも、社内アンケートを実施するのも有効だ。社員が感じている不満や問題点を書いてもらうことで、何をどの順番で改善していけば良いのかが明確になる。実施する前には、アンケートの目的やその結果をどう施策に結び付けていくのかを、社員には事前に説明しておきたい。もちろん、リサーチ結果もオープンにする必要がある。納得感、信頼感がより高まるからだ。

(3)積極的な挨拶

シンプルなことに思えるかもしれないが、コミュニケーションの基本となる挨拶を積極的に行うこともお勧めしたい。挨拶には、相手に対して心を開いていること、相手の存在をしっかりと認めていることを示す意味合いがある。挨拶をされた側も嬉しくないはずがない。できれば、挨拶に何か一言を添えるようにしたい。もっと関係性が向上するだろう。

(4)社内イベントの実施

自分たちの会社や職場にどんな人が、どんな想いを持って働いているかを知ると、お互いの絆が深まる。だが、仕事を通じての接点だけだと、どうしても人間関係は広がらず、深まらない。そこで企画したいのが、社内イベントだ。必ずしも全員が一堂に会する必要はない。同じ価値観や趣味を持った者同士が集まる場でも良いので工夫してみてほしい。

(5)雑談しやすい場所をつくる

同じ場所で長時間仕事をしようとしても、緊張感が維持できるものではない。時には、ちょっとした気分転換が必要になってくる。そんな時には、自席を離れメンバーと軽く雑談できる場所があると嬉しいものだ。休憩中の会話から、思わぬアイデアが生まれることも少なくない。

(6)コミュニケーションツールの導入

新型コロナの影響もあって、まだまだリモートワークを続けている企業も多い。そのため、どうしても社員同士のコミュニケーションが減りがちになっている。特に内気なタイプの従業員は顕著だ。その解決策も兼ねて、コミュニケーションツールの導入を図る企業が増えている。チャットやアプリの活用も、一つのアイデアだと言える。

(7)音楽を流す

時にはオフィスでBGMを流すのも、有効だ。リラックスして仕事に臨め、気分転換にもなる。もちろん、音楽を流すのが難しいという職場もあるかもしれないが、職場の雰囲気を和らげるためにも、試してみる価値はあるだろう。

(8)社長室の撤廃

オープンに自分の意見を伝えることができる職場を目指して、社長室を撤廃したという企業もある。結果として、社長と社員との距離感が一気に縮まり、組織としての一体感が高まってくるからだ。また、社長に見られているかもしないという適度な緊張感を生む効果もあり、メリハリがなくなってきている職場には有効と言える。

(9)サンクスメッセージの作成

サンクスカードとは、日々仕事をする中で一緒に働く仲間に感謝したいと思えることがあったら、その気持ちを名刺サイズのカードに書き込み、送り合うというもの。少額でも良いので、インセンティブを添えるとより効果的だ。送る側の気恥ずかしさが軽減され、受け取った側もそのインセンティブを何かの賞品に替えることができれば楽しさが高まってくる。

(10)1on1ミーティングの実施

「風通しの良い職場」を形成するには、まずは上司と部下との良好な人間関係を構築する必要がある。そこで、良く活用されているのが1on1ミーティングだ。1on1ミーティングとは、上司と部下が定期的に行う30分程度のミーティングを言う。上司は部下の話に耳を傾けることで日頃気付かなかった成長ぶりや新たな一面を見出せる。一方、部下も承認実感を得やすくなるので、上司への信頼感や職場への安心感が高まるとされている。

(11)メンター制度やブラザー・シスター制度の導入

メンター制度やブラザー・シスター制度は、いずれも一般的に、先輩社員が新入社員に仕事の進め方や仕事に対する姿勢をアドバイスするというもの。入社後の不安が解消されるので、早期離職の防止にも役立っている。なかには、経営陣がメンターとなり、月に一回程度のペースで新入社員と一対一で対話するケースも見られる。

(12)社内報の制作

経営者が何を考えているか、他の部署は今何に取り組んでいるのかが理解できると、会社に対する愛着が湧きやすくなる。さらに、社員の目線に立って興味・関心の高いコンテンツを工夫できると、社内報の位置付けも大いに変わってくるのではないだろうか。

(13)ジョブローテーションや社内留学

多様な業務を経験することで、さまざまなスキルや知識を身に付け、社員の強みを伸ばしていくことも、「風通しの良い職場」づくりにつながると言われている。自分は何に向いているのか、何が得意なのかに気付くことができ、仕事に対する満足度が高まるからだ。このため、ジョブローテーションや社内留学もお勧めの施策と言える。


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まとめ

職場の風通しを良くするとは、会社の雰囲気を良くすることでもある。ただ、雰囲気といってもどう感じるかは個人差がある。また、新入社員や中堅社員・管理職など立場によってもイメージが異なってくる。どのように考えたら良いのかと、人事担当者としては悩むかもしれないが、まずは何人かの関係者から組織の現状をヒアリングすることから始めてはどうだろうか。何らかの課題が見えてくるはずだ。その上で先ほど挙げた13の施策を参考に入れながら適切なアクションを図っていくことが有効になってくる。できるものから着手し、「風通しの良い職場」をぜひ実現していただきたい。生産性の向上や働きやすさの確保など、得られるメリットはデメリットよりも大きいと言って良いだろう。
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