そもそも「障害者手帳」とはどのようなものか
障害者手帳とは、障がいのある人に交付される手帳のことで、「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3つの種類があります。交付される手帳には、生活における支障の程度や症状などに応じた障がい等級と呼ばれる区分によって決まります。しかし、それぞれの手帳の制度ができた時期や経緯、制度を定めている法律などが異なるため、手帳ごとに申請手続きや、障がい等級の区分の方法は異なります。身体障害者手帳
■身体障害者手帳等級の判定基準身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づき、障がい程度に該当すると認定された方に対して交付されるものです。手帳を取得するためには、区市町村の障害福祉担当窓口で申し込みが必要になります。一般的には、申請から約1ヵ月程度で発行されますが、医師への確認や等級認定に審査が必要な場合は、さらに時間がかかることもあります。
手帳の交付対象となる障がいは、身体障害者福祉法別表によって定められており、以下のようなものがあります。
・視覚障がい
・聴覚障がい
・平衡機能障がい
・音声・言語機能障がい
・そしゃく機能障がい
・肢体不自由
・心臓機能障がい
・じん臓機能障がい
・呼吸器機能障がい
・ぼうこう又は直腸機能障がい
・小腸機能障がい
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障がい
・肝臓機能障がい
■身体障害者手帳の等級※
身体障害者の等級は、症状の種類や日常生活で支障をきたす程度により1級から7級に分類されます。等級は1級に近づくほど障がいの程度が重く、7級に近づくほど障がいの程度が軽くなっていきます。身体障害者手帳は、6級以上の障がいに対して交付されます。7級の障がいが一つのみでは手帳の対象にはなりません。ただし7級の障がいが2つ以上ある場合や、7級の障がいと6級以上の障がいが重複して存在する場合は交付対象となります。
療育手帳
■療育手帳等級の判定基準療育手帳は、知的障がいのある人が取得できる障害者手帳です。障害者手帳のうち、身体障害者手帳は身体障害者福祉法によって、また、精神障害者福祉保健手帳は精神保健福祉法によって定められていますが、療育手帳の制度は法律ではなく、都道府県・政令指定都市がそれぞれ要綱などを制定して行っており、全国で統一された判断基準をもっていません。
そのため、療育手帳の名称も、愛の手帳(東京都)、みどりの手帳(所沢市)など、地域によって異なります。また、名称だけでなく、自治体によって制度名や支援内容、取得の基準なども若干異なることがあります。
・療育手帳の等級※2
療育手帳の等級は、認定区分や基準は自治体により若干異なりますが、知能や生活習慣、問題行動などを総合的に判断して、3~4つに区分されます。例えば、東京都の場合は1度(最重度)2度(重度)3度(中度)4度(軽度)と表記し、次のような区分に分類されています。(地域によっては、A、B、Cなどで区分されることもあります。)
1度(最重度)・・・最重度とは知能指数(IQ)がおおむね19以下で、生活全般にわたり常時個別的な援助が必要となります。日常生活に関しては、言葉でのやり取りやごく身近なことについての理解も難しく、意思表示はごく簡単なものに限られます。
2度(重度)・・・重度とは知能指数(IQ)がおおむね20から34で、社会生活をするには、個別的な援助が必要となります。日常生活に関しては、読み書きや計算は不得手ですが、単純な会話はできます。生活習慣になっていることであれば、言葉での指示を理解し、ごく身近なことについては、身振りや2語文程度の短い言葉で自ら表現することができます。個別的援助を必要とすることが多くなります。
3度(中度)・・・中度とは知能指数(IQ)がおおむね35から49で、何らかの援助のもとに社会生活が可能です。日常生活では、ごく簡単な読み書き計算ができますが、それを生活場面で実際に使うのは困難です。具体的な事柄についての理解や簡単な日常会話はできますが、日常生活では声かけなどの配慮が必要です。
4度(軽度)・・・軽度とは知能指数(IQ)がおおむね50から75で、簡単な社会生活の決まりに従って行動することが可能です。日常生活に差し支えない程度に身辺の事柄を理解できますが、新しい事態や時や場所に応じた対応は不十分です。また、日常会話はできますが、抽象的な思考が不得手で、こみいった話は難しいことがあります。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳の判定基準精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患(てんかん、発達障がいを含む)により、日常生活または社会生活への制約がある方が申請することができ、精神保健福祉法にもとづき交付されます。
精神障害者手帳の対象となる疾患には、次のようなものがあります。
・統合失調症
・うつ病、躁鬱病等の気分障がい
・てんかん
・薬物やアルコール等の中毒依存症
・精神遅滞を除く、器質精神病
・非定型精神病
・その他の精神疾患(睡眠障がいや行動障がい、異常食障がいなど)
このような疾患であることが診断された日から一定期間経過し、病状が固定している場合に精神障害者手帳の申請を行うことができます。精神障害者手帳の申請には、精神疾患の診察をしている主治医・専門医の診断書が必要となります。しかし、診断書は初診日から6ヵ月を経過した日以後に作成されることになっています。そのため、早くても診断されてから6ヵ月経過しないと精神障害者手帳を申請できません。
■精神障害者保健福祉手帳の等級※3
精神疾患の状態と能力障がいの状態の両面から総合的に判断し、次の3つの等級に区別されます。
1級・・・精神障がいであって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級・・・精神障がいであって、日常生活が著しく制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級・・・精神障がいであって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は 日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
障害区分と障害者雇用率のカウント
障がい者雇用のカウントは、30時間以上の労働者1人に対して1カウントとなりますが、重度身体障がい者、重度知的障がい者の場合は、1人を2人としてカウントします。また、短時間労働の20時間以上30時間未満の場合には、労働者1人に対して0.5カウントですが、短時間重度身体障がい者、短時間重度知的障がい者は1人としてカウントします。
重度と認定されるためには、以下に該当する必要があります。
【身体障がいの重度】
・障害者手帳の等級が1級か2級
・障害者手帳の等級が3級で重複している
【知的障がいの重度】
・療育手帳の等級が重度
・児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医から療育手帳の重度に相当する判定書がある
・障害者職業センターで重度知的障がいと判定されている
精神障害者保健福祉手帳では、重度の判定はありません。また、注意する必要があるのは、精神障害者手帳には、2年間の有効期限があることです。精神障がい者を雇用しても更新を行っていないと、手帳を所持していないことになり、障がい者としてカウントできなります。
他の手帳では、有効期限はありません。ただし、障がいの状態が変わったり、障がいがなくなったりした場合には、本人が等級変更や返還の手続きをする必要があります。再認定制度の対象になっている場合には、指定された期日までに改めて診査を受けることが求められる場合もあります。
障がい者雇用のカウントは、障害区分によって決まります。カウントの方法については、以下の表を参照してください。
・新規雇入れから3年以内の方 又は 精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方
・令和5年3月31日までに、雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方
詳細については、こちらの記事(※4)を参考にしてください。
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