デジタルHRの最先端を走るそのセプテーニグループが、自社のデジタルHRに関する取り組みをこの度事業化し、株式会社人的資産研究所としてサービス提供を行うことになった。そこで、今回は人的資産研究所の代表に就任した進藤竜也氏と、HR総研(ProFuture株式会社)代表の寺澤が対談を行い、セプテーニグループのデジタルHRの取り組み開始から事業化にいたる経緯や、テクノロジーと共存する人事の新たなカタチについて語り合った。
プロフィール
進藤 竜也 氏
株式会社人的資産研究所 代表取締役
2011年に早稲田大学創造理工学部を卒業後、株式会社セプテーニ・ホールディングスに新卒入社し、採用・育成・配置の分野にアナリティクスの技術支援を担当。現在はグループ内のHR研究機関であった人的資産研究所の取り組みを事業化・法人化して設立された、株式会社人的資産研究所の代表取締役を務める。
HRテクノロジー大賞の受賞が、事業化の追い風に
寺澤:セプテーニさんは世の中に先駆けてデジタルHRの取り組みを始め、持続的にデジタルHRを進化させてきた、日本では稀有な存在だと思います。この度、株式会社人的資産研究所としてデジタルHRを事業化するにあたり、そこに至った経緯、コアとなる技術やサービスについて、進藤さんにお話を伺いたいと思います。まずは、デジタルHRへの取り組みのきっかけを教えてもらえますか。進藤氏:発端は今から15年程前、セプテーニが数百名規模だった時代です。当時ベンチャー企業として急速に事業が成長する反面、組織の成長が追い付かない時代が続いていました。その頃、現代表取締役、グループ社長執行役員の佐藤 光紀が、当時話題だった書籍『マネー・ボール』を読み、「これを人事にも取り入れられないか?」といったアイディアから始まりました。
進藤氏:そこで、人事を統括していた上野(現代表取締役)の旗振りのもと、最初は新人の早期立ち上げ、昨今ではオンボーディングと言われる領域でデータ活用のプロジェクトをスタートしました。若い組織だったセプテーニにとって、新人のスムーズな戦力化は業績に直結する重要な課題だったのです。当時新卒採用を担当していた私も、プロジェクトメンバーにアサインされました。
プロジェクトを推進するうちに、オンボーディングだけではなく、採用や配属などにプロジェクトが展開していきました。そこで、セプテーニグループのHR研究機関という形で社内に「人的資産研究所」を立ち上げることになり、私がこの専門組織の一人目として異動になりました。さらに、そこからHRテクノロジー大賞の5年連続受賞が追い風となり、2021年に法人化して株式会社人的資産研究所が発足。私がそのまま代表を務めることになりました。
寺澤:HRテクノロジー大賞が、デジタルHRの事業化に貢献できたというお話を伺い、心から嬉しいです。人的資産研究所では、「デジタルHRプロジェクト」として、社内外にデータに基づいた検証結果を公開していらっしゃいます。これがHRテクノロジー大賞受賞の背景にもあるのですが、このプロジェクトを社内から社外に広げる中で、様々な協働が生まれたと伺っています。
進藤氏:HRテクノロジー大賞受賞後、企業の人事担当者や大学の研究者から連絡をいただくことが増え、セプテーニにはなかった知識やネットワークが広がりました。現在も共同研究が複数走っています。そこから得られた情報や技術を社内に還元することで、さらに新たな課題解決ができる、成長のサイクルを回してきました。
人的資産研究所が目指す方向と、「人材育成の方程式」
寺澤:人的資産研究所としての価値提供のコアについて聞かせていただけますか。寺澤:プロジェクトは新入社員の早期戦力化からスタートしたというお話しですが、具体的にどのようなデータを活用したのですか。
進藤氏:まずプロジェクトの旗振りをしていた人事責任者の上野が、人材育成の考え方を示す「人材育成方程式:G=P×E(T+W)」を設定しました。「G」は成長(Growth)、「P」は個性(Personality)、「E」は環境(Environment)を示し、さらに「E」は、「T」チーム(Team)と「W」仕事(Work)で構成されます。個々の成長は、その人の個性と環境、またその相性によって定義されるということです。
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