障がい者雇用を進めていくときに活用したいのが、障がい者雇用に関わる支援機関です。しかし、障がい者雇用に関わるサポート機関は複数あるため、それぞれの機関の違いや、どのように活用できるのかわかりにくいという声をよく聞きます。前回から5回にわけて、障がい者雇用で活用できるサポート機関の種類や役割、サービス内容についてお伝えしています。2回目の今回は、「ハローワークの活用方法」についてお伝えしていきます。
企業が障がい者雇用で活用できるサポート機関とは【2】ハローワークを活用する

ハローワークが行なっている障がい者雇用への「企業サポート」

「ハローワーク」は、障がい者雇用を進めるための中心的な役割を担っている機関です。企業に対しては、障がい者雇用を進めることができるように、職域開拓・雇用管理・職場環境整備・特例子会社設立などについて、相談を受けつけています。また、障がい者当事者には、求人の受付や、職業訓練の相談、アドバイスをしています。
平成28年度 障害者雇用促進ハンドブック(東京都産業労働局)より
【出典】平成28年度 障害者雇用促進ハンドブック(東京都産業労働局)

それでは、ハローワークが障がい者雇用に対して担っている役割や、窓口・専門家と携わっている業務などを、具体的に挙げていきましょう。

●専門所部門と雇用指導官

ハローワークでは、障がい者雇用を推進するために、障がい者専門のサポートが設けられています。それは、障がい者の職業相談窓口となる「専門援助部門」と、企業の障がい者雇用の窓口となる「雇用指導官」です(地域によっては、専門援助部門がない場合もあります。その場合には、一般の窓口に問合せてみてください)。

「専門援助部門」では、障がいを持っている求職者と面談し、個々のニーズや障がいの状況、技能や適性を把握した上で、適切な職業選択ができるように職業相談・紹介を行っています。また、企業訪問によって採用後の職場定着支援を実施したり、雇用保険や公共職業訓練などの各種相談を受け付けたりすることもあります。

企業では、障がい者雇用の法定雇用率が定められていますが、これが未達成の場合に行政から指導が入ります。法定雇用率未達成の障がい者数の特に多い事業主に対しては、ハローワークから「障害者雇入れ計画の作成命令」、同計画の「適正実施勧告」などが出されます。この際、企業を訪問するのが、ハローワークにいる「雇用指導官」です。

雇用指導官は、雇用率の未達成に対して指導をするだけでなく、企業が障がい者雇用に対して抱えている課題を明確に把握し、企業の状況に応じた具体的な提案・指導を行なうことになっています。

●各種助成金の窓口機能

ハローワークは、障がい者雇用に関する助成金についての窓口にもなっています。障がい者雇用に関する助成金は、大きく分けると「障がい者雇用納付金制度に基づく助成金(管轄は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)の助成金」と「ハローワークが管轄する助成金」の2つの種類があります。ハローワークが管轄し窓口となっている、障がい者雇用の主な助成金には下記のものがあります。

・特定求職者雇用開発助成金
・トライアル雇用
・職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援の助成金


助成金の受給に関しては、要件がありますので、活用を検討している場合には、早めに問い合わせをすることをおすすめします。

●特例子会社設立の相談

企業が、特例子会社の設立を考えているときに、相談窓口としてもハローワークを活用できます。特例子会社設立を検討する多くの場合、雇用率の件で指導を受けていると思いますので、雇用率達成までのスケジュールや、実際の設立に向けた必要事項についてアドバイスを受けることができるでしょう。

また、他の特例子会社を紹介して見学させてもらえるよう段取りしてもらうと、具体的なイメージを持つために役に立つでしょう。

●関係機関との連携

「障がい者雇用に関する中心的な役割を果たす」という性格上、ハローワークは、関係機関との連携も行っています。職業を紹介する際、より専門的な支援が必要な場合に、地域障害者職業センターでの専門的な職業リハビリテーションや、障害者就業・生活支援センターにおける生活面を含めた支援を紹介するなど、関係機関と連携した就職支援につなげることもしています。

ハローワークで障がい者を採用するには

ハローワークでは、障がい者向けの職業相談・職業紹介を行っています。具体的には、就職を希望する障がい者の求職登録を行い、専門の職員・職業相談員が、障がいの特性や適性、希望職種などに応じて、職業相談・職業紹介・職場適応指導を行っています。ですから、障がい者雇用の求人を出すことを考えたときには、まずハローワークを活用するとよいでしょう。

●ハローワークで求人を出す際の注意点

実際に求人を出すときには、ハローワークに求人受付の用紙(求人票)がありますので、そこに仕事内容、勤務条件、待遇、休日など、求人に必要な内容を記載します。

・求人票に、助成金を受けるかどうかを必ず記載する
もし、障がい者雇用に際して助成金を受ける予定があれば、求人票を提出するときに、あわせて窓口に伝えておくとよいでしょう。トライアル雇用では、事前に求人票に記載する必要がありますので、後からトライアル雇用の助成金を受けたいと思っても、求人票に記載がないとできません。受けたい助成金がある場合には、忘れずに窓口で確認してください。

・「合同面接会」への参加申し込み
多くの地域では、年に1~2回程度、求人者・求職者が一堂に会する「障がい者の合同面接会」を開催しています。合同面接会には、求職中の障がい者本人が来場します。開催場所や求人票(仕事内容)にもよりますが、企業はそこで、直接、多くの求職者と面接することができます。なお、合同面接会に参加するには、事前にハローワークに申し込む必要があります。応募企業が多い場合には、どのような対応をとるかを決めておくと、スムーズに進められるでしょう。

また、面接希望者(求職中の障がい者)が多い場合には、1人当たりの面接時間が短くなってしまうことがあります。企業は面接担当者を2名配置したり、事前に1人に対して必要な対応時間を計算しておき、時間内に終わるようにしたり、といった準備が必要です。

なお、現在は直接の対面や大人数の集合が難しいので、他の方法をとっている可能性があります。事前にハローワークに開催状況を確認することをおすすめします。

・「主治医の意見書」の確認
最近では、精神障がい者の方の応募が多くなっています。そのため、精神障がいのある人が就労を考えるときに、症状が安定していて働くことが可能な状況にあることの証明として「主治医の意見書」を確認するケースも増えています。ハローワークで、精神障がいの方が求職者登録や就職活動を行なうときには、この「主治医の意見書」が必要です。

この「意見書」は、主治医が「症状が安定し、就労が可能な状況」と診断し、障がい者本人が実際に働く見込みがあると判断していることを証明するものです。この書類は主治医が書くものなので、企業側としては「これがあれば安心」と思ってしまいますが、実はそうでないこともあります。「就労の可能性」とは、障がい者の個人条件だけでなく、労働条件や職場環境、就労支援の実施状況などさまざまな環境状況によって大きく変化するものだからです。

また、診察といった限られた時間や場所で判断されていることや、主治医の意見書に記載される内容の多くは、本人からの申告内容や希望を反映して作成されているという背景もあります。ですから、意見書で確認を求めている内容は、病状や本人の心境を鑑みて、現時点で、ハローワークでの求職活動を行える状況にあるのか、それとも求職活動よりも治療を優先して考えることが適当な状況にあるのか、という「医療的な視点から就労可能と判断している」ということを意味しているものです。このことを、よく理解しておくことが必要です。


障がい者雇用を進めるにあたり、ハローワークをどのように活用できるのかを見てきました。企業にとっては、採用や助成金、特例子会社の設立、雇用率達成指導、関係機関との連携など、さまざまなところで支援やアドバイスをしてもらえる機関となるますので、上手に活用してください。
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