オンライン面接のコツは、質問を簡単明瞭にしてリアクションは大きめに
日本の採用現場では、担当者の大半がオンライン面接に慣れていないだろう。面接の進行や人材の見極めに不安は尽きないが、まずは必要なツールや機器を一通り使いこなせなくては、選考どころではなくなってしまう。オンライン面接では、「画質・音質が悪く、対話しにくい」、「通信が途切れる」といったトラブルが生じやすい。不具合を防ぐために、導入したツールの操作方法や通信・音響環境を事前によく確認しておこう。社内でリハーサルを重ねると同時に、候補者にもツール利用時のマニュアルや準備すべき環境を案内しておくことが、オンラインで失敗しないための第一歩となる。その上で、面接中に画面越しの相手とスムーズにやりとりするために、最低限、次のようなポイントを押さえておきたい。
●オンライン面接でやりとりをスムーズにする5つのポイント
・話し方
話すときは論旨や表現をシンプルにし、意識的にはっきり、ゆっくり発話する
・視線
画面に映る相手の顔を見ても、目線は合わないため、意識的にパソコンのカメラに視線を向ける
・リアクション
相手の話を聴くときは対面時より相手に反応が伝わりにくいので、ジェスチャーを交えてリアクションを大きめにする
・相づち
言葉での相づちをなるべく控えるようにする。音声に遅延が生じるので、タイミングがずれて相手の話を遮ってしまうこともあり、いつもより多めに、はっきり頷くようにする
・確認
「音声がクリアに聞こえているか」、「説明にわかりにくい点はないか」など候補者に
確認する回数を増やし、コミュニケーションの齟齬や不足を防ぐ
また、オンライン面接では、部屋に入る前や別れ際のエレベーター前での候補者とのちょっとした雑談もできなくなる。緊張を和らげたり、好印象を抱いてもらうためにも、意図的なアイスブレイクを行ったり、面接の最後に手を振るといったカジュアルな挨拶が有効だ。オンライン面接は、表情が読み取れなかったり、会話にズレがあったりする分、コミュニケーションの取り方がカギを握る。オンラインを意識し、行動を少し変えるだけで、ぐっと面接のクオリティを上げることができるだろう。
オンライン面接ならではの落とし穴
今後、コロナウイルスと共に生きていく「Withコロナ」において、WEBでの商談や交渉事が増えることを考えれば、オンライン面接で好印象を与えられる人材を選ぶことは、企業にとって得策になる。つまり、上に列挙したような面接中の対応やマナーは、面接官に求められるだけでなく、候補者のコミュニケーションスキルを測る上でも重要なポイントとなるだろう。ただし、オンラインでの“好印象”には落とし穴もある。候補者が面接に参加するのはたいてい自室からだが、そうした安全・安心な場所にいるからこそ、リラックスして自信ありげに見えるだけかもしれない。対面型のコミュニケーションの場ではむしろ自己開示が進まず、案外、力を発揮できないタイプかもしれないという懸念がある。
若い世代からはよく、オンラインの会議についても「その場の空気や上司の顔色を読む必要がないから発言しやすい」と歓迎する声が聞かれる。これは裏を返せば、リアルな対人関係に対する不安や苦手意識の表れともとれる。ビジネスの現場では、相手の顔色や場の空気を読んで動かなければならないこともある。それが苦手となると、人によっては他者への関心そのものが希薄で、礼節や協調性に欠ける可能性も疑われる。組織で働く上では致命的なマイナスであり、採用NGの人材といわざるを得ないだろう。
「実はコミュニケーションが苦手だった」、「実は自己中心的だった」など、オンライン特有の落とし穴にはまらないためにも、人材を見極める面接での質問がカギを握りそうだ。
オンライン面接でNG人材を見抜く2つのポイント
オンライン面接は対面に比べて、見えない部分があるため、収拾できる情報量が少なく、どこに注視して面接をするかが重要となる。特に採用の評価軸のなかでも、コミット力、人柄、企業文化へのフィット感といったマインドセットをオンラインで見抜くのは困難を極める。ただ、ポイントを押さえることで、オンラインならではの落とし穴も回避することが可能だ。そこで、候補者のマインドセットを把握するうえで、特に気をつけなければならないNG人材のタイプを2つ紹介したい。(1)自己評価が高い人材
「ベストは尽くした」、「自分なりにやっていますが?」など他者評価を意に介さない人材は、組織が求める成果を意識せず、常に自己評価の中に居続ける。組織貢献度の低い人材と言え、採用してはいけないタイプだ。
面接では、候補者の「事実」と「見解」を分けて捉えるといいだろう。自己評価の高い人材は、見解を多く述べる傾向にある。「ベストは尽くした」、「自分なりにやっている」という発言は、事実ではなく見解にすぎない。自己評価が高そうな候補者には、「全力で取り組んだ仕事(学生時代の取り組み)とその達成度を教えてください」と質問することが大切。客観的事実、達成率などの定量的実績をしっかり回答するかを見極めないといけない。
(2)組織内位置認識の低い人材
「自分は賢いと勘違いし、自社の批判や評論にまわる」、「上司を上司と認識していないため、指示を聞かない」、「指示に対して納得、腹落ちを求めてくる」といったタイプは、自分の能力を見誤っているばかりか、組織内の同僚に悪影響も及ぼす。
このタイプについては、中途なら過去の職場や上司と部下、新卒の場合は部活やアルバイト先など、候補者が実際に所属した集団や環境についての質問がカギとなる。「そこであなたはどんな役割を果たしたのか」、「仲間のために全力で取り組んだことは何か」などを問いながら、自組織に対する過度な批判や傍観者的発言、自己の努力ばかりを強調して周囲への感謝や共感に欠ける発言がないか見極めるといいだろう。
「Withコロナ」を見据え、リアルからオンラインへのシフトが加速する中、オンライン抜きの面接はもはや困難になってきたと言って言える。オンライン面接は、コロナウイルスの感染リスクを抑えるだけでなく、場所や時間に縛られないメリットがあり、地方や海外にいる優秀な人材へのアプローチも可能になった。今回紹介したような人材を見抜くポイントを面接で設定することで、対面の面接では採用できなかった人材を獲得することにもつながる。自社の組織強化にもつながるため、オンライン面接の現場で、ぜひ実践していただきたい。
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