採用試験の面接では「転勤」、「残業や休日出勤」についての質問が多数
採用選考は原則として、応募者の人権を尊重することや、応募者の適性や能力に基づいて行うことが基本とされている。適性や能力と関係がない問いは、就職差別につながる場合もあるだろう。一方で、採用の応募用紙が国で定められたものでないケースや、採用選考時に戸籍謄(抄)本・健康診断書の提出が求められるケースなどもあるようだ。職業安定法では、「社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集」が原則として禁止とされているが、直近3年以内の採用試験面接において、求職者はどのような回答を求められたのだろうか。はじめに総連合会は、「採用試験の面接で質問されたことがあるもの」を尋ねた。その結果、「転勤できるか」(43.3%)と、「残業や休日出勤ができるか」(42.8%)が特に高かった。以降、「家族に関すること(職業、続柄、健康等)」(37.7%)、「性別」(28.6%)、「本籍地や出生地に関すること」(28.3%)、「生活環境・家庭環境等に関すること」(28.1%)と続いた。回答の中には個人の思想を推し量りうるものも多く、適性や能力に直接関係はないと思われる質問が行われている実状が明らかとなった。
面接官が聞いてはいけないと思う内容は「宗教」、「支持政党」が特に高い傾向に
続いて同連合会は、「面接官が面接で聞いてはいけない質問だと思うもの」を尋ねた。すると、「宗教に関すること」(56.7%)と「支持政党に関すること」(50.1%)が半数にのぼった。以降は、「思想に関すること」(41.4%)、「家族に関すること」(41.2%)、「住宅状況に関すること(間取り、部屋数など)」(34.4%)と続いた。他方で、最も低かったのは「尊敬する人物に関すること」(11%)で、約1割にとどまった。“面接官が聞いてはいけない質問”を知ったのはHPやSNSが最多
次に同連合会は、「面接官が面接で聞いてはいけない質問のことを知っているか」と尋ねたところ、「1つでも知っている」は1,000人中821人と8割を超えたという。そこで、「1つでも知っている」とした人に「どのようにして知ったか」を尋ねた。その結果、「HPやSNSで見た」(27.5%)が最も多く、以下は、「テレビで観た」(23%)、「学校で教えてもらった」(21.7%)、「友人・知人に教えてもらった」(19.7%)、「家庭で教えてもらった」(14.6%)と続いた。
不適切な質問は「性別」や「恋愛・結婚」関連など個人情報に踏み込んだ内容が多数に
次に同連合会が、「採用試験の面接で、不適切だと思う質問や発言をされたことはあるか」を尋ねたところ、「ある」は19.5%、「ない」は80.5%だった。約2割が、不適切な質問を受けた経験があることがわかった。あわせて、男女別に「不適切だと思う質問や発言の内容」について質問した。すると、女性の自由回答には、「女性だからどうせ辞めると言われた」や「結婚や子どもの予定について聞かれた」、「男性社員から『メガネを取ったほうがかわいいよ』と言われた」などさまざまな声が寄せられた。
また、男性の自由回答を見ると、「女性のほうが仕事が丁寧だからと言われた」や「恋人の有無を聞かれた」、「家族の職業について聞かれた」などの声があがった。性別を理由にした決めつけや、恋愛・結婚などに踏み込んだ質問、外見に関する発言が多いようだ。