デジタル競争の敗者とならないために重要なのは、レガシーシステムからの脱却とデータの標準化
開会の挨拶に立ったのは、CESS理事長、慶應義塾大学SFC研究所上席所員の間中健介氏。「デジタル化を通してより良い働き方を実現していくことは、個々人が成長できる働き方を実現するというだけでなく、企業にとっても効率性や創造力の向上につながる」と、本セミナーに込めた意図を述べた。続いて行われたのは、経済産業省CIO(最高情報責任者)補佐官の平本健二氏による「デジタル技術による社会変革の可能性」と題する講演だ。内閣官房 政府CIO上席補佐官も務め、データ連携基盤の整備を推進している平本氏は、冒頭、経済産業省が発表したいわゆる「2025年の崖問題」を紹介し、DXの本格的な展開に向けて克服することが迫られている問題について、次のように注意を喚起した。
「複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムを使い続ける企業は、爆発的に増加するデータを活用しきれず、デジタル競争の敗者になりかねません。そうした企業においてシステム刷新が行われなければ、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があります。また、データ活用のために、同じく重要なのがデータの標準化です。内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が運営する『政府CIOポータルサイト』では国際標準で決められた性別コードなどを公開しています。こうしたものを参考に、自社のデータを標準的な形で管理していただきたいと思います。」
次に、デジタル化による社会変革には「技術がジャンプアップすることにより、アナログ時代のやり方を方法論から全く変えてしまうインパクトがある」と述べたうえで、平本氏は、デジタル技術の最も注目すべき点は、「人の可能性を最大化できること」だと語る。チャットボットやAIで欲しい情報やアドバイスをもらえる、MOOC(ムーク)と呼ばれるインターネットを介した公開オンライン講座で世界の名門大学の講座を受講できるなど、デジタル技術とは人の成長をサポートしてくれるものであり、「人の仕事を奪うものではない」と平本氏は力を込める。