「インターンシップ」は、プログラムの内容も企業側で設計し、実施も企業側が中心に行うのに対し、「エクスターンシップ」は、大学のキャリア教育の一環として、プログラムの内容も大学が設計します。とは言え、就業体験は必要ですので、受け入れ企業は必要ですし、運用の協力もしていただく必要があります。
金沢大学では実は以前に、このエクスターンシップを実施していました。当時はまだエクスターンシップという呼び方をしていなかったのですが、PBL(課題解決型)のインターンシップとしてプログラムを設計し、その内容で受け入れていただける企業を開拓し、インターンシップ期間中も企業に私たちが出向き、一緒に学生のファシリテーションを行っておりました。
この単位は「キャリアデベロップメント実践」という科目でした。その名の通り、別に「キャリアデベロップメント入門」という科目もあり、先にキャリアデベロップメント入門を受講しないと、実践は受講できないという仕組みになっていました。
キャリアデベロップメント入門は、PDCAサイクルを自主的に学ぶスキルについて学ぶ科目で、そこで学んだスキルを実践する場としてインターンシップを実施しておりました。(ちなみに、これら一連の取り組みは経済産業省の「社会人基礎力を育成する授業30選」に選出されておりました。)
これらは金沢大学がクォーター制に移行する際に廃止されてしまったのですが、(キャリアデベロップメント入門に関しては、アクティブラーニング科目としてリニューアルし存続)、最近のインターンシップの乱立を見るにつれ、実は、もう一度こうしたエクスターンシップを復活できないかという意見が学内で出てきております。もう一度というより、もっと本気で考えてみようじゃないか?といった感じの、踏み込んだ議論と言っても良いかも知れません。
なぜこんな議論を学内でこの時期に行っているかというと、理由の一つは、最近、インターンシップというイベントがどんどん独り歩きしており、何がなんだかわからないような状況になってきているからです。
これまでは金沢大学では、インターンシップの定義を広めに設定するとともに、内容は説明会と変わらないようなものでも、聞かないよりは聞いたほうが良いだろうということで、参加することを推奨してきました。しかしさすがに、ここまで玉石混交の状態になると、もう少し大学としてのインターンシップに対する姿勢を明らかにすべきではないかという視点が生まれ、金沢大学独自の“インターンシップの定義”を再設定しているところです。
二つ目の理由として、大学の視点からすると、インターンシップにおける教育的な効果をどのようにとらえるのかという問題があります。正直なところ、今までの大学のインターンシップ科目については、受け入れ企業を探すのが精いっぱいで、内容のほうまで大学から口出しすると、受け入れそのものを断られてしまうのでないか、といった遠慮がありました。
しかし今は企業側も、インターンシップに慣れてきており、企業へ相談しながら教育的効果の見込めるプログラム設計ができるような環境が整ってきていると感じます。(もちろん、そうした視点のインターンシップを実施している企業が対象になりますが。)
逆説的に言えば、企業の実施するインターンシップの内容にいろいろ文句を言うなら、自分たちで教育的効果の高いエクスターンシップを作ってしまうべきではないかと、考えています。そもそも大学はれっきとした教育機関なのですから。
さらには三つ目の理由として、今後、新卒一括採用の流動化が進むことが予想される中、社会にどんな人材を送り出すべきかという、大学の役割について再考すべきではないかという議論が始まっていることがあります。そうした人材育成に関わるツールとの一つとして、エクスターンシップという場をどのように活用すべきかという視点ですね。
これについてはエクスターンシップのプログラム以前の問題として、大学教育を通してどのようなスキルを養うべきか、という部分を固めないといけないのですが、今回は、ここも併せて議論しております。
そういうわけで、できれば2021卒向けくらいから、金沢大学オリジナルのエクスターンシッププログラムを実施できるとよいなあと考えて、今、いろいろ仕込み中です。もし実施するとなると、かなり手のかかることになるとは思いますが、興味のある方はぜひご連絡をいただければと考えおります。
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