グローバルなバイオ医薬品企業として、「今後10年間で25億の人々の健康に貢献する」を目標として掲げているグラクソ・スミスクライン株式会社(以下GSK)。次世代を担うリーダーの早期育成に注力する同社は、Basic Leadership Training(以下BLT)というトレーニングプログラムを実施しています。

GSKは、どのような戦略や育成方針を示し、若手人財育成に取り組んでいるのでしょうか。今回、同社の人財担当取締役 隈部めぐみ氏に、GSKの戦略に沿った人財戦略、BLTの特長や成果などについて、実施を支援する株式会社マネジメントセンター(以下MSC)の常務取締役 脇田幸子氏が、お話を伺いました。(以下敬称略)

【プロフィール】


  • 隈部 めぐみ 氏

    ■隈部 めぐみ 氏
    グラクソ・スミスクライン株式会社
    人財担当取締役
    米・ヒューストン大学大学院でホスピタリティ・マネジメントを学ぶ。帰国後、インターコンチネンタルホテルを含む全セゾングループのホテルの統括会社の人材開発メンバーとなる。モトローラ、ユナイテッド・シネマ・インターナショナル、ウインドリバー、ネットアップで人事部をリードした後、2011年からマイラン製薬でバイスプレジデントを務める。2019年から現職。


  • 脇田 幸子 氏

    ■脇田 幸子 氏
    株式会社マネジメントサービスセンター
    常務取締役
    広告代理店に勤務後現職。HRコンサルタントとして、ビジネス戦略を実現するための人材像の特定、採用、アセスメント、能力開発まで、一貫したコンサルテーションを提供。DDIラーニング・システム認定マスタートレーナーとしてファシリテータの養成も行っている。コンサルタント、プロダクツ・サービス、LDX(Learning Design &DX)部門の総責任者として、リーダーシップ開発のサービス提供を総合的にマネジメントしている。


隈部氏・脇田氏

「サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つ」―事業変革による存在意義の刷新

脇田:今回は、GSKの人財育成についてじっくりとお話を伺いたいと思います。人財戦略の前に、その前提となる貴社の戦略や組織づくりについて伺えますか。

隈部:2022年、当社ではグローバルで大きな組織変更がありました。もともとはバイオ医薬品とコンシューマーヘルスケアという2つの事業の柱を持っていたのですが、コンシューマー部門を事業分離し、バイオ医薬品に専念することにしました。事業の再編に伴い、GSKの存在意義も「サイエンス、テクノロジー、人財を結集し、力を合わせて病に先手を打つ」に刷新されました。この大きな存在意義を全員で共有しながら、社員一人ひとりがオーナーシップを持ち、互いに協力し合い、前進していくこと「Ahead Together」で、より多くの人々の生活に変化を起こし、よりよい未来を創ることができます。

多様な意見や考えがこの戦略を達成するための重要な原動力の一つになると認識しています。相手を尊重しながらオープンに意見を伝え合う「ストレートトーク」のカルチャー醸成に積極的に取り組み、心理的安全性が担保される組織作りを目指しています。
隈部氏
脇田:多くの方が、そのように組織づくりをされているGSKのような会社で 働きたいと考えていると思います。一方で、そうした組織を実現するのは容易ではありませんよね。組織変革を進めるためには、どんなことが必要だとお考えですか?

隈部:最も重要なのは、「Change from the Top」変化はトップからということです。リーダーたちが変化を受け入れて、それをチームのメンバーに分かりやすく落とし込んでいくことが大事だと思います。それがない限り、新しい取り組みの実現や会社の変革を達成することはできません。だからこそ、リーダー育成は私たちにとって大切な取り組みです。

バイオ医薬品のグローバルリーダーとして、未来を担う若手人財の育成に注力

脇田:GSKでは、人財育成に関してどのようなことを重視していらっしゃいますか?

隈部:当社が今後バイオ医薬品のグローバルリーダーとなるには、新しい能力も必要となります。長く貢献している社員の活躍があるからこそ、今のGSKの姿があることも確かです。しかし、能力を高めるには、異なったバックグラウンドを持つ人財を外部からも採用し、新しい能力を強化することで、革新的で新しい進化を続けていきます。

脇田:その中でも、貴社では若手人財の育成に力を入れていらっしゃいます。その背景を伺えますか。
脇田氏
隈部:4つあります。1つ目は、「持続可能な組織のための基盤づくり」です。将来を担う若手人財をしっかりと育成しながら、当社の戦略を体現し、一貫した形で実行できる体制を作りたいと考えています。2つ目は、「イノベーションの推進」です。新しい視点やアイデアを持つ人財が育つことで、競争力の維持や今後の医薬品開発にもつながります。それにより、業界の中でも先駆的なリーダーシップを発揮していきます。

3つ目は、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの強化」です。多様なバックグラウンドやスキルを持つ人財が育てば、企業文化がより豊かになっていきます。先行き不透明なVUCAの時代にあって、多様性の幅が広いほど素早い変化への原動力になります。そして最後に、「エンゲージメントとモチベーションの向上」です。色々な機会を自分でつくることはもちろん、会社からも提供することによって、モチベーションやエンゲージメントは向上します。それが最終的には企業のパフォーマンス向上につながると考えています。

協力:株式会社マネジメントサービスセンター


この後、下記のトピックが続きます。
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●若手人財の育成を浸透させるGSKの取り組み・推進体制
●若手人財の育成プログラム導入時に生じた課題と困難
●応募が殺到する人気の育成プログラムに変わったきっかけとは?
●リーダーにステップアップするために、「自分自身を知る」アセスメントが必要
●お互いに本音で話し、切磋琢磨できる環境が成長を後押しする
●【特別録】隈部氏が国際人道活動家と取り組むリーダーシップトレーニングプログラム

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