日本企業のトップマネジメントの報酬レベルが欧米に比較して極端に見劣りする、という記事が日本のメディアに再三取り上げられています。では、中国における日系企業の報酬レベルの市場競争力はどうなっているのでしょうか?
今後、中国内での日系企業のビジネスモデルが、生産拠点から中国市場での競争を意識する方向へ変わる中、今までと異なるスキルを求めて現地で中途採用するケースが増えています。
この場合にも起きることは長年社内にいる現社員との給与格差、そして年齢、特に30代後半から40代に見られる、での逆転現象です。そこで中途採用を躊躇するのが日系企業。年齢にこだわらず職務での適性・実力を考慮した人事戦略が市場、すなわち人材獲得の競合相手である欧米、中国企業です。長年終身雇用を前提としてきた日本の報酬体系を踏襲している現地日系企業が外国現地でもいまだに多いのが実態です。 最近現地の優秀社員の中途採用で報酬が日本本社の部長よりも、執行役員よりも高いのでNoと言われて採用を断念した、という話を聞くようになりました。これで現場が競争に勝ち抜く戦略を採用できるのかどうか、欧米・中国現地企業とは違う方針です。
固定給と成果によって得られる変動給の体系を対欧米企業・中国民営企業の実際と日系企業の実際を比較したのが下記の『2018一斉調査・報酬体系実態』(中国報酬網社・Cochi調査)です。
この調査によると欧米系、中国民営系企業は職位が上層へ行くほど変動報酬が高くなりその総年収に占める割合も高い。それに比して日系企業では、職位での変動比率構成にあまり変化はなく、かつ変動比率が欧米・中国企業に比して低い、という結果が出ています。
これからの競争相手は欧米企業・中国民営企業であることを考えると、この日系企業の特性が現地で受け入れられるかの検証が必要です。特に成果主義を求める傾向の強い現地社員の意思を考慮すると、この変動給幅の検討は行われるべきかと思われます。
ここで分かるのは、本業(主収入)額に対して副業の収入額の占める割合が高いということです。今までは残業に収入を求めていた労働者が、就業時間の終了とともにすぐにバイクにまたがり宅配業へしていることが分かります。つまり、収入源が「主たる業務のみ(残業込み)」から「主たる業務+副業」と転換しているのが実態で見えます。
最近北京、上海地区を中心に高騰する住宅価格、賃貸家賃を受けて特に北京、上海地区以外から就労する社員の住宅環境が悪化しています。
企業側としては、賃金のみならず、住宅手当、遠距離通勤対策、など多様な福利厚生政策を含めた総合的な制度、すなわちトータルリワードが求められます。残念ながら的確にこの状況変化をとらえ対応している日系企業は少ないと言わざるを得ません。
もう一つ、評価制度においても日系企業と現地企業、欧米企業の間にはギャップが存在しています。次回はこの点について取り上げます。
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