早期化に焦る学生たち
以降では【佳作】の中から6作品を抜粋して紹介します。【優秀賞】を受賞した作者が別の作品で【佳作】にも入選。「就活川柳・短歌」で同一の作者が複数の入選をするのは、今回が初めてのことです。
就職活動なんて「早めにやらんで大丈夫」と言っていた友人が、実は早くから就活を始めていて、なおかつ早期内定を得ていたという驚きと焦りが伝わる作品です。友人の言葉に安心し切っていた自分への反省と、友人の意外な行動への驚きが表現されています。
この作品を読んで、学生時代の定期テスト前になると「全く勉強していない」と言いながら、後日、返却された答案用紙ではかなりの高得点をマークしている友人がいたことを思い出しました。実は、勉強していないどころか、何日も前から睡眠時間を惜しんで勉強していたようです。この手の話を信じると、ばかを見るのは自分だということかもしれません。友人の言葉を真に受けた自分への戒めとも取れる、就活の計画性の大切さを感じさせます。
グループ面接で頻繁に見掛けるのが、「サークル長」や「バイトリーダー」をアピールする就活生です。まるで「サークル長の大安売り」のような状況に、本来は一つの企業の応募者にこんなにサークル長がいるはずはなく、何割かの学生は就活用に“話を盛っている”はずだといぶかる作者の心情が、「どんだけおんねん」というワードでユーモラスに表現されています。「どんだけおんねん」というフレーズから関西の学生の作品かと思いきや、愛知県の学生なんですね。なおのこと、ワードの選択が秀逸だと思います。
グループ面接の同じ組に何人もサークル長がいて、華々しい実績をアピールし始められると気後れしてしまうかもしれませんが、そんなことは気にする必要はありません。数多くの学生を面接してきた採用担当者であれば、“話を盛っている”人はすぐに見分けられるものです。
近年の就職活動は、大学3年時のインターンシップから始まることが多いですが、その開催時期が早まっていることもあり、早い学生であれば3年の6月以前から企業との接触が始まっています。一方、政府主導の就活ルールでは大学4年の6月から面接選考が解禁となっており、大半の企業はルールなど無視してそれ以前から選考を開始しているものの、一部の大手企業は就活ルールどおり6月から面接選考を開始しています。つまり、4年生がまだ面接選考を受けている時期に、既に次の3年生の就職活動は始まっているわけです。思うように就職活動が進まない場合には、後輩である3年生のほうが先に内定を獲得することだってあり得ます。
就活の早期化に伴い、自分の就活が終わる前に後輩たちも動き出すことで焦りを感じた作者の心情が、「迫りくる」という言葉からひしひしと伝わってくる作品です。早期化の影響が学生間の競争をさらに激化させる様子と、先輩としてのプライドと焦燥感が交錯する心情が巧みに表現されています。