最終面接では大企業も対面型へ
「一次面接」の面接形態は、応募企業の企業規模による差異が大きく見られましたが、「最終面接」ではどうでしょうか。「最終面接」の面接形態について、オンライン面接と対面型面接の割合を聞いた結果が「図表12」(文系)と「図表13」(理系)です。「一次面接」と比較するために、こちらも応募企業層の違いによる差異を確認できるように、大学クラス別のデータを用意しました。理系を見てみると、「オンライン面接のみ」の割合は、「旧帝大クラス」で46%、「早慶クラス」では56%と、文系と比べて高止まりしていることが分かります。「その他私立大学」でも33%と文系よりも19ポイントも高くなっています。「対面型面接のみ」と「対面型面接のほうが多い」の合計を見てみると、「旧帝大クラス」は17%、「早慶クラス」は19%で、文系と比較するとそれぞれ22ポイント、12ポイント低くなっています。「その他私立大学」では42%あるものの、それでも文系の55%からは13ポイント低くなっています。理系の場合には、研究の妨げにならないよう、移動時間を節約できる「オンライン面接」を採用している企業も少なくないと思われます。
大企業を含めて、「一次面接」と比べて「最終面接」を「対面型面接」で実施する企業が多くなっている理由の一つに、「オンライン面接」での“グリップ力”の弱さが挙げられます。企業から学生へ、あるいは学生から企業へ、面接での言語情報以外のもの(熱意・温度感や雰囲気・社風・空気感など)をお互いに伝えきれず、内定辞退やミスマッチにつながりかねないとの懸念です。それを払拭(ふっしょく)すべく、「最終面接」を対面型で実施しようとするわけですから、「対面型面接」導入企業においても、その懸念が少ないと思われる応募者の場合には、「最終面接」もオンラインで実施することもあるということでしょう。例えば、推薦応募の理系の場合には、原則的には「内定=内定承諾」となりますから、“グリップ力”にこだわる必要はありません。また、「最終面接」までの過程で十分なコミュニケーションが取れており、内定辞退の懸念がないのであれば、オンラインでも問題ないことになります。理系と比べて活動量(応募社数)が多い文系に対しては、最後の“グリップ力”を働かせるべく、「対面型面接」を導入せざるを得ないというのが企業の実情なのでしょう。
序盤はオンライン、最終面接は対面型を希望する学生
「オンライン面接」と「対面型面接」の両方を体験した学生に、どちらの面接形態が望ましいかを聞いてみたところ、文系・理系ともに「どちらともいえない」とする学生が3分の1程度いるものの、大差で「オンライン面接」のほうが望ましいという結果になりました[図表14]。ただし、すべてがオンラインで完結することへの不安の声も聞かれます。最後に、それぞれの理由を紹介します。・自宅から参加でき、負担が少ないと思ったから(文系・早慶大クラス)
・交通費がかからず、開始直前まで準備ができるので精神面肉体面での疲労が少ない(文系・上位私立大)
・時間とお金の問題でオンラインを選んだが、会社の雰囲気を見るためにも最終面接は対面がいいと思った(文系・その他私立大)
・一日に3社くらい面接を入れられるから(文系・上位私立大)
・面接以外の些細なことに気を遣わなくていいため(理系・上位国公立大)
・対面だと圧迫されるイメージがあるため(理系・上位国公立大)
・面接はオンラインのほうが遠方からでも参加できとてもよい(人生の選択肢が豊富)。ただ、面接の後に、内々定承諾前に企業を訪問できる機会が欲しい(理系・その他私立大)
・研究と両立しやすいため(理系・上位国公立大)
・コロナによる移動の心配をする必要がないから(理系・その他国公立大)
・30分程度の面接のために企業まで行く効率が悪いと感じる(理系・上位国公立大)
【対面型面接】
・相手のリアクションが分かりやすいし、会話している感じがいいから(文系・中堅私立大)
・オフィスの雰囲気を見られる、面接官とコミュニケーションを取りやすい(文系・上位国公立大)
・オンラインだとコミュニケーションも取りづらいし、映ってしまうものを排除しなくてはならないなど、煩わしい部分が大きいから(文系・上位私立大)
・対面型のほうが他人との対話という雰囲気が非常にあり、機械に話しかけているよりは話しやすいと感じた(文系・上位私立大)
・ライブ感が伝わり、表面的な部分だけでなく、より人間性が伝わるのが対面だと感じたから(文系・旧帝大クラス)
・対面のほうが面接官の呼吸などが分かる気がするから(理系・旧帝大クラス)
・オンラインは気が緩む(理系・その他国公立大)
・対面型のほうが意思疎通を取りやすく、こちらの雰囲気も知っていただけると思うから(理系・その他国公立大)
【どちらともいえない】
・オンライン面接では時間・場所の拘束力が少なく、1日に何社もの面接を受けられるというメリットがある一方、対面面接では全身で自分の思いや印象を伝えられるというメリットがあると感じるから(文系・その他国公立大)
・序盤の面接はオンラインで十分だが、就活生としても実際の雰囲気は知りたいので後半からは対面でいいと思う(文系・その他私立大)
・オンラインだと金銭的なメリットと感染予防できるというメリットが、対面だと実際の職場を感じられるなどのメリットがあり、どちらとも言い切れない(理系・旧帝大クラス)
・オンライン面接だと長距離を移動する必要がないので、体力を温存でき、準備に多くの時間をかけられるのはメリットだと思う。ただ、最終面接まですべてオンラインだと、自分が実際に入社して働くイメージがつかみづらく、それはそれで不安になった(理系・上位国公立大)
・志望度が高い企業などは熱意なり人となりを伝えやすそうな対面が望ましい。一方で、志望度が低く対策が不十分になりがちな企業のときは、カンペを見ながら受けられるオンライン面接に助けられた(理系・旧帝大クラス)
・本社が自宅から遠かったり、感染者が多く出ていたりする場合はオンライン面接がいいが、そうでない場合や実際に会社の中を見て雰囲気を知りたい場合は対面型面接がよい。そのときの状況に応じて、就活生側にもオンラインと対面を選択できるようにしてほしかった(理系・その他国公立大)
次回は、「内定」に関連したトピックスを見ていきたいと思います。